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by nicoxz

りそな・JCBがステーブルコイン決済を開始へ、個人の買い物に対応

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はじめに

デジタル決済の新時代が到来しようとしています。りそなホールディングスとJCB、デジタルガレージ(DG)の3社は、ステーブルコインで個人が買い物できる仕組みを構築し、2027年度の実用化を目指すと発表しました。

ステーブルコインは、円やドルなどの法定通貨に価値が連動するデジタル通貨です。これまでは主に企業間送金での利用が想定されていましたが、今回の取り組みにより、個人消費にも次世代デジタル決済が広がることになります。

この記事では、新サービスの仕組み、日本のステーブルコイン規制、そして消費者と店舗双方へのメリットについて解説します。

新サービスの概要

2025年度から実証実験を開始

りそな、JCB、デジタルガレージの3社は2025年度中に、一部のJCB加盟店で実証実験を開始します。取り扱うステーブルコインは、円建ての「JPYC」と、ドル建ての「USDC」などが予定されています。

利用者はスマートフォンやタブレットを使って、店舗での支払いをステーブルコインで行えるようになります。現金やクレジットカード、電子マネーに続く、新たな決済手段の選択肢が加わることになります。

店舗側のメリット:手数料の軽減

店舗にとっての大きなメリットは、決済手数料の軽減です。クレジットカード決済では通常2〜5%程度の手数料が発生しますが、ステーブルコイン決済ではブロックチェーン技術により、より低コストでの取引が可能になります。

特に中小規模の店舗にとって、決済手数料は収益を圧迫する要因の一つです。手数料負担が軽減されれば、キャッシュレス決済の導入ハードルが下がり、消費者の利便性向上にもつながります。

ステーブルコインとは何か

価格が「安定した」デジタル通貨

ステーブルコインは、英語で「安定した」を意味する「ステーブル」から名付けられたデジタル通貨です。円やドルなどの法定通貨を担保にすることで、ビットコインのような価格変動の激しい暗号資産とは異なり、価値が安定するよう設計されています。

紙幣や貨幣の形では存在せず、インターネット上でのみ使用するデジタル決済手段です。ブロックチェーン技術を活用することで、低コストで即時の送金・決済が可能になります。

日本独自の法規制

日本では2023年6月、改正資金決済法が施行され、ステーブルコインは暗号資産とは区別された「電子決済手段」として法的に定義されました。これは世界に先駆けた規制整備として注目されています。

同法では、ステーブルコインの発行・償還は銀行、資金移動業者、信託会社のみに認められています。また、利用者保護の観点から、額面での償還保証、円建て預金・国債による裏付け資産の保有、分別管理が義務付けられています。

裏付け資産のないアルゴリズム型ステーブルコインの発行は認められず、2022年の「テラ・ショック」のような暴落リスクを排除しています。

JPYCの登場と日本市場の変化

国内初の円建てステーブルコイン

2025年10月、JPYC株式会社が国内初の円建てステーブルコイン「JPYC」を正式発行しました。従来のプリペイド型から、資金移動業者による電子決済手段へと制度区分が変更され、1JPYC=1円での償還が可能となった点が最大の特徴です。

金融庁の承認を受けたこの発行は、日本のステーブルコイン市場が「計画」から「実用化・普及」のフェーズへ移行したことを象徴する出来事でした。

国際送金への期待

JPYCが発行されたことで、特に期待が高まっているのが個人の国際送金です。海外にいる留学生への仕送りや、外国人労働者による母国の家族への送金において、従来の銀行送金よりも低コスト・高速での送金が可能になります。

JPYC社によると「1円から、世界中に最短数秒で送金が完了する。ブロックチェーンの送金コストも安ければ1円以下になる」とのことです。

メガバンクも参入へ

金融庁は「決済高度化プロジェクト」を通じて、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3メガバンクによる共同ステーブルコイン発行の実証実験を承認しました。複数の銀行グループが単一ブランドで電子決済手段を共同発行する日本初の試みとなります。

りそな・JCBの取り組みと合わせ、日本のステーブルコイン市場は急速に拡大しつつあります。

りそなとJCBの強み

既存の業務提携を発展

りそなとJCBは2024年9月に法人決済分野で業務提携を締結しており、今回のステーブルコイン決済はその発展形と位置付けられます。

りそなグループの金融データ・顧客基盤・チャネルと、JCBのキャッシュレス決済ノウハウ・技術・決済ネットワークを組み合わせることで、従来の枠組みを超えた新たな価値創造を目指しています。

JCB加盟店ネットワークの活用

JCBは日本唯一の国際カードブランド会社であり、国内外に広大な加盟店ネットワークを持っています。このネットワークを活用することで、ステーブルコイン決済を短期間で多くの店舗に展開できる可能性があります。

また、デジタルガレージは決済プラットフォーム事業を展開しており、技術面でのサポートを担うと見られます。

注意点と今後の展望

送金上限の制約

現状、JPYCが登録されている第二種資金移動業では、一回あたりの送金上限が100万円までに制限されています。個人の日常的な買い物には十分ですが、企業間の大口決済には制約が生じます。

今後、法規制の見直しや上位区分への登録により、利用範囲が拡大する可能性があります。

普及に向けた課題

ステーブルコインによる決済が普及するためには、消費者への認知度向上と、店舗側の導入コスト・運用負担の軽減が課題となります。2027年度の実用化に向けて、実証実験での知見を踏まえた改善が進められるでしょう。

また、米国ではトランプ政権がUSDCなどドル建てステーブルコインの推進に力を入れており、国際的な決済インフラとしての位置付けも注目されています。

まとめ

りそな、JCB、デジタルガレージによるステーブルコイン決済サービスは、日本のデジタル決済に新たな選択肢をもたらします。企業間送金から個人消費へと利用範囲が広がることで、ステーブルコインの社会実装が加速することが期待されます。

店舗にとっては手数料軽減、消費者にとっては新たな決済手段の選択肢という、双方にメリットのある仕組みです。JPYCの発行やメガバンクの参入と合わせ、日本のステーブルコイン市場は2027年度に向けて大きく動き出しています。

ブロックチェーン技術を活用した低コスト・即時決済が日常の買い物で利用できる日も、そう遠くないかもしれません。

参考資料:

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