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by nicoxz

日本人初の米ユニコーン、アルパカ横川毅CEOの軌跡

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はじめに

米フィンテック企業のアルパカ(Alpaca)が2026年1月、シリーズDラウンドで1億5,000万ドル(約230億円)を調達し、企業価値が11.5億ドル(約1,800億円)に到達しました。これにより、日本人だけで創業した米国企業として初めてユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

CEOの横川毅氏は、かつてリーマン・ブラザーズに勤務し、2008年の同社破綻を経験した人物です。その後デイトレーダーを経て起業に転じ、証券取引のインフラを根本から変える事業を築き上げました。本記事では、アルパカの事業内容とユニコーン到達の背景、そして横川氏の異色の経歴を詳しく解説します。

アルパカとはどんな企業か

証券取引のインフラをAPIで提供

アルパカは、証券会社やフィンテック企業向けに、株式・ETF・オプション・暗号資産・債券などの取引システムをAPI形式で提供する企業です。金融機関は自社でゼロから取引システムを構築する必要がなく、アルパカのAPIを利用することで、迅速かつ低コストで証券サービスを展開できます。

この「BaaS(Brokerage as a Service)」と呼ばれるモデルにより、従来は大手金融機関しか提供できなかった証券取引サービスを、スタートアップやフィンテック企業でも手軽に構築できるようになりました。現在、世界40カ国・300社以上の金融機関にサービスを提供し、証券口座数は900万口座を突破しています。

トークン化市場で圧倒的シェア

アルパカの強みの一つが、証券のトークン化(ブロックチェーン上でのデジタル証券化)分野です。米国株やETFのトークン化において、アルパカは世界市場の94%のシェアを占めています。トークン化されたカストディ資産は48億ドルを超えており、伝統的金融とデジタル資産の橋渡しを担う存在です。

この分野の成長性が評価され、シリーズDではDrive Capitalがリード投資家を務め、Ribbit Capital、Tribe Capital、Citadel Securities、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、BNPパリバ傘下のOpera Tech Venturesなど、錚々たる投資家が参加しました。サッカー元日本代表の本田圭佑氏が設立したX&KSKファンドも出資しています。

横川毅CEOの異色のキャリア

リーマン破綻から始まった転機

横川毅氏は慶應義塾大学SFC卒業後、2005年にリーマン・ブラザーズに入社しました。証券化商品事業を中心に、アジア・ニューヨーク・ロンドンにまたがる国際的なプロジェクトでリーダーシップを発揮しました。しかし2008年、世界金融危機の震源地となったリーマン・ブラザーズが破綻します。

この経験は横川氏のキャリアを大きく変えました。兵庫県の実家に戻った横川氏は、デイトレーダーとして再出発します。自室に2枚のモニターを設置し、株価や為替チャートと向き合う日々が数年続きました。生活費は十分に稼げたものの、それだけでは物足りなさを感じていたといいます。

AIスタートアップから証券会社創業へ

デイトレーダー生活を経た横川氏は、友人たちとソフトウェア開発会社を起業します。画像認識AIや市場予測AIの事業を手がけ、これらの事業を売却した後、2015年に共同創業者の原田均氏とともに米カリフォルニアでアルパカを設立しました。

横川氏が目指したのは、証券取引のインフラを民主化することでした。金融業界で働いた経験から、既存の証券取引システムの非効率さを痛感しており、テクノロジーの力でこの構造を変えたいという強い思いがありました。米国でゼロから証券会社を立ち上げた日本人は、横川氏が初めてとされています。

ユニコーン到達の背景

急成長を支えたビジネスモデル

アルパカが急成長を遂げた背景には、証券業界のデジタル化の波があります。コロナ禍以降、個人投資家の株式取引が急増し、ロビンフッドに代表されるフィンテック企業が次々と登場しました。これらの企業が取引システムを内製する代わりにアルパカのAPIを利用することで、アルパカの顧客基盤は拡大を続けました。

2025年9月にはSBI証券向けに米国株取引サービスの提供を開始するなど、日本市場でも事業を拡大しています。自己清算(セルフクリアリング)機能を持つことで、取引の執行から決済、カストディまでを一気通貫で提供できる点も競合優位性となっています。

日本人創業ユニコーンの意義

日本人が米国でユニコーン企業を築いたことの意義は大きいです。日本のスタートアップエコシステムでは、国内市場に閉じた事業展開が多く、グローバル市場で評価額10億ドルを超える企業はほとんどありませんでした。

アルパカの成功は、日本人起業家がシリコンバレーで世界クラスのフィンテック企業を創れることを証明しました。横川氏はEndeavor起業家にも認定されており、日本の起業家コミュニティにとってのロールモデルとなっています。文部科学省のアントレプレナーシップ推進大使にも就任し、次世代の起業家育成にも貢献しています。

注意点・展望

アルパカの今後の課題は、ユニコーンからさらなる成長への道筋です。証券インフラのAPI提供というビジネスモデルは参入障壁が高い一方、規制対応のコストも大きいです。米国をはじめ各国の金融規制への対応を続けながら、グローバル展開をどこまで加速できるかが問われます。

トークン化市場は今後も拡大が見込まれますが、既存の大手金融機関も同分野への参入を進めています。先行者としてのシェアをどう維持・拡大するかが戦略上の焦点です。

IPO(新規株式公開)の可能性についても市場の関心は高いです。ユニコーン達成を機に、今後の資本戦略や上場の判断にも注目が集まるでしょう。

まとめ

アルパカの横川毅CEOは、リーマン・ブラザーズの破綻、デイトレーダー生活、AI事業の売却という異色の経歴を経て、日本人として初めて米国でユニコーン企業を築き上げました。証券取引インフラのAPI提供という独自のポジションで、世界40カ国以上の金融機関にサービスを提供し、トークン化市場で94%のシェアを握っています。

企業価値11.5億ドルへの到達は、日本人起業家がグローバル市場で大きな成功を収められることを示す象徴的な出来事です。金融インフラのデジタル化が加速する中、アルパカの成長から今後も目が離せません。

参考資料:

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