「タイパ疲れ」から「ムダパ」へ、効率追求の限界と新トレンド

by nicoxz

はじめに

「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が定着して数年。動画の倍速視聴、ながら作業、要約サービスの活用など、時間効率を追求するライフスタイルが広がりました。しかし今、その反動として「タイパ疲れ」を訴える人が増えています。

日本経済新聞の調査によると、約4割の人がタイパ疲れを感じているという結果が出ています。効率を追い求めるあまり、かえって心が疲弊する—そんな矛盾した状況が生まれています。

2026年、新たに注目されているのが「ムダパ(ムダパフォーマンス)」という価値観です。あえて無駄な時間を楽しみ、非効率の中に豊かさを見出す生き方が、新しいトレンドとして浮上しています。

タイパとは何だったのか

Z世代から広がった時間効率の追求

タイムパフォーマンス(タイパ)とは、費やした時間に対して得られる効果や満足度を重視する考え方です。特に1990年代中盤から2010年代序盤に生まれたZ世代の間で広がり、2022年には新語・流行語大賞のトップ10に選出されました。

具体的な行動としては、YouTube動画の倍速視聴、映画やドラマのあらすじを確認してから視聴、ファスト映画や要約コンテンツの利用などが挙げられます。限られた時間の中で、より多くの情報やコンテンツを消費しようとする傾向です。

タイパ重視の背景

Z世代がタイパを重視する背景には、情報過多の時代に生まれ育ったことがあります。SNS、動画配信、ゲームなど、消費したいコンテンツが無限にある一方で、時間は有限です。

また、学業、アルバイト、就職活動と忙しい日々の中で、自分の好きなことに時間を使いたいという切実な願いがあります。調査によると、効率的な時間の過ごし方を意識する理由として「自分の好きなことをする時間を捻出するため」が51.6%で最多でした。

タイパ疲れの実態

最適化への強迫観念

「この時間で本当にベストを尽くせているか」「もっと良い方法があったのでは」—常に効率を追い求める姿勢が、いつしか強迫観念に変わることがあります。

タイパ疲れとは、時間効率を追求しすぎた結果、かえってストレスや空虚感を感じてしまう状態です。倍速視聴や要約サービスで「情報は得たけれど、心に残る体験はなかった」という虚しさを感じる人が増えています。

満足感の喪失

映画を2倍速で見終わっても、感動が薄い。本の要約を読んでも、深い理解には至らない。効率を優先した結果、本来得られるはずだった満足感や感動が失われてしまうというジレンマが生じています。

「時間を節約したのに、なぜか充実感がない」—この矛盾がタイパ疲れの本質です。

4割がタイパ疲れを実感

日本経済新聞の調査では、約4割の人がタイパ疲れを感じていることが明らかになりました。特に、情報感度が高くタイパを積極的に実践してきた層ほど、疲れを感じやすい傾向があります。

「ムダパ」という新しい価値観

あえて無駄を楽しむ

ムダパ(ムダパフォーマンス)とは、タイパの対極にある概念です。効率を求めず、あえて「無駄」に見える時間や体験に価値を見出す考え方です。

目的のない散歩、ぼんやりと空を眺める時間、最後まで見る映画、ゆっくり味わう食事—こうした一見非効率な活動の中にこそ、心の豊かさがあるという発想です。

効率化したくないこと

興味深いことに、Z世代への調査で「時間をかけても惜しくないこと」を聞くと、1位は「睡眠」(47.1%)、2位は「趣味・習い事」(34.7%)、3位は「推し活」(33.6%)という結果でした。

一方、「効率化・短縮したいこと」は、1位「移動時間」(46.9%)、2位「勉強・課題」(39.3%)、3位「食事(1人)」(24.3%)でした。つまり、Z世代も「好きなこと」には時間をかけたいと考えており、すべてを効率化したいわけではないのです。

タイパは手段、目的ではない

実は「タイパ」という言葉を日常的によく使う人は3割弱に過ぎないという調査結果もあります。Z世代にとってタイパは、自分の大切な時間を確保するための手段であって、効率化そのものが目的ではありません。

この点を見落とすと、タイパの本質を誤解してしまいます。「ムダパ」の時間を確保するために、それ以外の時間を効率化する—これが本来のバランスなのかもしれません。

2026年のムダパ実践法

スローコンテンツの復権

倍速視聴の反動として、あえて等速で映画を観る、紙の本をゆっくり読む、レコードで音楽を聴くといった「スローコンテンツ」への回帰が見られます。時間をかけて味わうことで、より深い体験と感動が得られます。

デジタルデトックス

スマートフォンやSNSから離れる時間を意識的に作る「デジタルデトックス」も、ムダパの一形態です。常に情報を追いかける生活から離れ、自分自身と向き合う時間を持つことで、心の余裕が生まれます。

「何もしない」時間の価値

Z世代への調査で「何もしない時間を確保したいから」効率化を意識すると答えた人が24.7%いました。ぼんやりする時間、予定のない休日、目的のない時間—こうした「何もしない」時間こそが、創造性や心の回復には必要なのです。

働き方にも広がる「ムダパ」志向

生産性一辺倒からの脱却

職場でも、過度な生産性追求への反省が始まっています。常に効率を求められる環境は、燃え尽き症候群やメンタルヘルスの問題を引き起こすことがあります。

雑談や息抜きの時間、チームでの何気ない会話—こうした一見「ムダ」な時間が、実はチームの結束や創造的なアイデアの源泉になることも少なくありません。

余白のある働き方

スケジュールを詰め込みすぎず、余白を持つことの重要性も再認識されています。次から次へとタスクをこなす働き方は、短期的には成果が出ても、長期的には持続可能ではありません。

まとめ

「タイパ」から「ムダパ」へ—2026年は、効率追求の限界を認識し、非効率の中にある豊かさを再発見する年になりそうです。

約4割がタイパ疲れを感じている今、あえて無駄な時間を楽しむ「ムダパ」という新しい価値観が注目されています。重要なのは、タイパとムダパのバランスです。効率化は、自分にとって大切な時間を確保するための手段であり、効率化そのものが目的ではありません。

時間に追われる生活から、時間を味わう生活へ。2026年、あなたも「ムダパ」の旅に出てみてはいかがでしょうか。

参考資料:

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