高市政権が進める外国人在留資格改革:永住権厳格化の背景と影響
はじめに
高市早苗政権は2026年1月、外国人の在留資格制度の大規模な見直しに着手します。最も注目されるのは、永住資格の取得要件に「日本語能力」と「一定の収入基準」を新たに加える方針です。現在、日本には約396万人の在留外国人がおり、そのうち永住者は90万人を超えています。この改革は、在留外国人全体の約2割を占める永住者だけでなく、今後永住を目指す外国人にも大きな影響を与えることになります。本記事では、この政策転換の背景、具体的な変更内容、そして日本社会への影響について詳しく解説します。
外国人在留資格制度の現状と課題
在留外国人の急増と永住者の実態
2025年6月末時点で、日本の在留外国人数は395万6,619人に達し、前年末から18万7,642人(5.0%)増加しました。在留資格別では「永住者」が最も多く90万人を超え、次いで「技術・人文知識・国際業務」が70万人超、「技能実習」が約47万人と続いています。国籍別では中国が約87万人で最多、ベトナムが約63万人、韓国が約40万人となっています。
この急速な増加の背景には、少子高齢化による労働力不足があります。日本政府はこれまで外国人労働者の受け入れを段階的に拡大してきましたが、同時に永住資格の管理体制に課題が生じていました。
永住資格をめぐる問題点
現行制度では、永住資格の取得要件として「素行善良」「独立生計維持能力」「国益適合性」の3つが求められますが、日本語能力は明示的な要件とされていませんでした。また、審査では直近2年間の税金・社会保険料の納付状況が重視されますが、「永住許可を受けるために一時的に公租公課を支払い、許可後は納付しない」という制度の趣旨に反する事例が発生していました。
2024年6月に改正された出入国管理法では、「故意に納税を怠った場合」に永住資格を取り消せる規定が導入されましたが、その実効性には疑問が残っていました。厚生労働省は2024年5月、外国人の年金・社会保険の納付状況を把握するため初めて実態調査を実施することを決定しています。
在留期間要件の運用上の課題
現行運用では、永住申請に必要な在留期間について、本来は「最長」の在留期間(5年)を持つことが求められますが、経過措置として3年の在留期間でも「最長扱い」として認めてきました。しかし、この柔軟な運用が制度の趣旨を曖昧にし、永住資格の価値を低下させているとの指摘がありました。
高市政権による改革の具体的内容
永住資格要件の厳格化
高市政権が2026年1月にまとめる外国人政策の基本方針では、以下の要件が新たに追加される見込みです。
まず、「日本語能力」が明示的な要件として加わります。具体的なレベルはまだ決定されていませんが、「日常生活と行政手続きが一人でできる程度」が最低ラインとして想定されています。参考として、在留資格「特定技能」では日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上が必須とされていますが、永住資格ではより高いN3レベル程度が求められる可能性があります。
次に、「一定の収入基準」が設定されます。これは独立して生計を維持できる経済力を客観的に判断するためのもので、世帯構成や地域の生活水準を考慮した基準が設けられる見通しです。
さらに、在留期間要件についても、これまでの「3年を最長扱い」とする経過措置を見直し、原則として5年の在留期間を持つことが求められるようになります。これにより、技術・人文知識・国際業務や家族滞在などで「3年止まり」の在留資格を持つ人は、申請のハードルが大幅に上がることになります。
帰化要件の延長
日本国籍の取得(帰化)についても要件が厳格化されます。現行の「5年以上の居住」という要件が、永住資格と同じ「原則10年以上の居住」へと延長される予定です。この改正は2026年春までに実施される見込みで、日本国籍の取得を目指す外国人にとっては大きな変更となります。
社会保険料・税金納付の監視強化
永住資格取得後の監視体制も強化されます。2024年の入管法改正により導入された永住資格取消制度は、遅くとも2027年6月頃から本格運用される予定です。故意の税金滞納や社会保険料未納が確認された場合、永住資格が取り消される可能性があります。ただし、病気や失業など本人に帰責性がない場合は対象外とされています。
共生策の充実
一方で、高市政権は「排外主義」との批判を避けるため、外国人との共生策も同時に強化する方針です。具体的には、日本語教育の機会拡充、生活相談窓口の多言語化、子どもの教育支援などが検討されています。厳格化と共生策を両輪とすることで、「質の高い外国人受け入れ」を目指す姿勢を示しています。
政策転換の背景と社会的影響
保守層への配慮と政治的背景
高市首相は保守派の支持基盤を持ち、従来から外国人政策については慎重な姿勢を示してきました。今回の厳格化は、治安維持や社会保障制度の持続可能性を重視する保守層の期待に応えるものです。自民党の外国人政策本部(本部長:新藤義孝氏)が中心となって政策を取りまとめ、2026年1月に首相に提言を提出する予定です。
在留外国人コミュニティへの影響
既に永住資格を持つ約90万人にとっては、新要件は適用されませんが、税金・社会保険料の納付状況はより厳しく監視されることになります。また、これから永住を目指す外国人にとっては、日本語学習や収入確保が新たな課題となります。
特に、技能実習生や特定技能で働く外国人労働者の中には、日本語能力が限定的な人も多く、永住への道が事実上閉ざされる可能性があります。これは、長期的な人材確保という観点からは、企業や地域社会にとってマイナスとなる可能性もあります。
国際的な人材獲得競争への影響
世界的に高度人材の獲得競争が激化する中、日本の永住要件厳格化は、優秀な外国人人材の日本離れを加速させる懸念があります。カナダ、オーストラリア、ドイツなどの移民受け入れ国では、日本よりも柔軟な永住制度を設けており、日本の国際競争力低下につながる可能性があります。
一方で、支持者は「質の高い外国人を選別的に受け入れる」ことで、長期的には社会統合がスムーズに進み、外国人政策への国民の理解も得やすくなると主張しています。
今後の展望と注意点
施行までのスケジュール
2026年1月に基本方針が示された後、具体的な要件の詳細(日本語能力のレベル、収入基準の金額など)は、2027年4月の永住許可取消制度の本格施行までに決定される予定です。この間、パブリックコメントや有識者会議での議論が行われる見込みです。
関係者は、施行前の「駆け込み申請」が増加する可能性を指摘しています。現行要件で永住資格を取得しようとする外国人が、2026年から2027年にかけて急増することが予想されます。
よくある誤解と注意点
まず、既に永住資格を持つ人については、新要件が遡及的に適用されることはありません。ただし、税金・社会保険料の納付義務は引き続き厳格に求められます。
次に、日本語能力要件については、帰化ほど高いレベル(N2程度)は求められない見通しですが、最低でもN4からN3程度の能力証明が必要になる可能性が高いとされています。
また、「一定の収入基準」については、世帯全体の収入が考慮されるため、配偶者が日本人や永住者の場合は、世帯収入で判断される可能性があります。
今後の政策課題
この改革が成功するかどうかは、厳格化と共生策のバランスにかかっています。日本語教育の機会が十分に提供されなければ、外国人は永住要件を満たすことができず、制度は「絵に描いた餅」となってしまいます。
また、企業や地方自治体にとっては、外国人労働者の定着支援がより重要になります。日本語研修の提供、生活支援、家族の受け入れ環境整備などが、人材確保の鍵となるでしょう。
国際的には、日本の移民政策が「開放から規制へ」転換したと受け止められる可能性があり、政府は国際社会への丁寧な説明が求められます。
まとめ
高市政権による外国人在留資格制度の改革は、日本の移民政策における大きな転換点となります。永住資格への日本語能力・収入要件の追加、帰化要件の10年居住への延長、そして税金・社会保険料納付の監視強化は、「量から質へ」の政策転換を象徴しています。
約396万人の在留外国人、特にこれから永住を目指す人々にとっては、日本語学習と安定した収入の確保が新たな課題となります。一方で、既存の永住者にとっては、納税義務の履行がこれまで以上に重要になります。
この改革が日本社会にもたらす影響は、今後数年かけて明らかになるでしょう。外国人の社会統合が進み、共生社会が実現するのか、それとも優秀な人材の流出と労働力不足の深刻化を招くのか。政策の成否は、厳格化と支援策のバランス、そして社会全体の受け入れ姿勢にかかっています。
今後永住を目指す外国人は、早めに日本語能力試験の受験を検討し、税金・社会保険料の納付記録をしっかり管理することが重要です。また、企業や自治体は、外国人労働者への支援体制を見直し、長期的な人材確保戦略を再構築する必要があるでしょう。
参考資料:
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