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by nicoxz

防衛費GDP2%達成も年1兆円が未使用、かけ声先行の実態

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はじめに

高市早苗政権は、防衛費のGDP比2%目標を当初の2027年度から2年前倒しし、2025年度に達成しました。トランプ米政権が同盟国に防衛費の積み増しを求める中、日本としては大きな政治的成果です。

しかし、数字の裏側には深刻な問題が潜んでいます。予算を計上しながら使い切れない「不用額」と「繰越額」が毎年1兆円規模で発生しているのです。さらに円安によって装備品の購買力が目減りする問題もあります。本記事では、防衛力強化の実態と課題を解説します。

GDP比2%達成の経緯

岸田政権からの方針転換

日本の防衛費は長年、おおむねGDP比1%以内に抑えられてきました。転機となったのは2022年末です。岸田文雄政権は安全保障関連3文書を改定し、2027年度にGDP比2%を達成する目標を打ち出しました。

ロシアのウクライナ侵攻や台湾海峡の緊張など、安全保障環境の変化を受けた決断でした。5年間で総額43兆円の防衛力整備計画が策定され、大幅な防衛費増額がスタートしました。

高市政権の2年前倒し

高市早苗首相は所信表明演説で、防衛費を2025年度中に関連経費と合わせてGDP比2%水準に増額すると表明しました。2025年度の補正予算案で防衛費を8,472億円積み増し、関連費を含めた総額は約1兆1,000億円に達しました。

当初予算と補正予算を合わせると、2025年度の防衛費と関連経費の総額は約11兆円になります。従来のGDP比1%時代の防衛費は約5兆円でしたから、ほぼ倍増した計算です。

使われない予算の実態

不用額と繰越額が年1兆円規模

防衛費が急増する一方で、予算計上しながら実際に使われなかった「不用額」と、翌年度に持ち越された「繰越額」が毎年1兆円規模で発生しています。

不用額とは、予算として認められたものの、年度末までに執行されなかった額です。繰越額は、年度内に事業が完了せず、翌年度に予算を持ち越した額です。いずれも、予算の「使い残し」を示す指標です。

なぜ使い切れないのか

防衛予算が使い切れない原因はいくつかあります。第一に、装備品の調達に時間がかかることです。戦闘機やミサイル防衛システムなどの高度な装備品は、発注から納品まで数年を要します。予算だけ先行して確保しても、調達プロセスが追いつかないのが現実です。

第二に、防衛産業の生産能力の制約があります。急激な予算増に対して、防衛関連企業の製造ラインや人材の確保が間に合っていません。特に弾薬やミサイルの増産は、生産設備の新設が必要であり、短期間での対応は困難です。

第三に、補正予算による積み増しの問題があります。当初予算に加えて補正予算で防衛費を上乗せする手法は、GDP比2%の数字を達成するには有効ですが、年度途中からの予算執行は実務的に難しく、繰越が増える一因となっています。

円安による購買力の目減り

輸入装備品の価格上昇

円安は防衛予算の実質的な購買力を大幅に低下させています。日本の防衛装備品は米国からの輸入に依存する部分が大きく、為替の変動が調達コストに直結します。

たとえば、F-35Aステルス戦闘機の1機あたりの調達費は、円安が続く中で187億円にまで達しています。予算額が増えても、為替の影響でその購買力が目減りしているのです。

予算増の一部が円安に吸収される構造

防衛費をGDP比1%から2%に倍増させても、円安で装備品の輸入価格が上昇すれば、実質的な防衛力の向上は予算の伸び率ほどにはなりません。名目上は11兆円でも、実質的な購買力は円高時代の予算と比較して必ずしも倍増しているわけではない点に注意が必要です。

防衛力整備計画の進捗

一部装備品で進捗率が低い

防衛力整備計画に基づく装備品の調達では、計画通りに進んでいない品目があることが国会でも指摘されています。進捗率が60%以下の装備品もあり、残された期間で計画どおりに整備できるかが問われています。

特に、無人アセット(無人機など)の調達は新規分野であり、技術開発と並行して進める必要があるため、計画通りの導入が難しい側面があります。

まとめ買いによるコスト削減の取り組み

2025年度予算では、装備品のまとめ買いによるコスト削減の取り組みが進められています。大量発注によって企業の予見可能性を向上させ、効率的な生産を促すことで、単価の低減を図る方針です。

しかし、まとめ買いの効果が出るまでには時間がかかり、短期的なコスト削減効果は限定的です。

トランプ政権のさらなる要求

GDP比2%では不十分との圧力

トランプ米政権はNATO加盟国にGDP比5%の防衛費を求めるなど、同盟国に対する負担増の圧力を強めています。日本も例外ではなく、GDP比2%を達成した後も、さらなる増額が求められる可能性があります。

野村證券の分析では、次期目標としてGDP比3%が視野に入るとの指摘もあります。防衛費のさらなる拡大は、財源の確保や国民負担の増加という問題に直結します。

注意点・展望

「規模ありき」からの脱却が必要

防衛費の問題は、金額の大きさだけでは語れません。重要なのは予算を効果的に使い、実際に防衛力を向上させることです。使い切れない予算を積み上げても、安全保障上の意味は限定的です。

調達プロセスの効率化、防衛産業の生産能力の強化、為替リスクの管理など、予算の中身に関する議論がより重要になっています。

国会でのチェック機能

防衛費が急増する中、国会による予算執行のチェック機能が一層重要になっています。繰越額や不用額の推移を注視し、予算の使い方が適切かどうかを検証する必要があります。

まとめ

高市政権は防衛費GDP比2%を2年前倒しで達成しましたが、毎年1兆円規模の不用額・繰越額が発生しており、「かけ声先行」の側面は否めません。円安による購買力の目減りも加わり、予算の額面ほど防衛力が向上しているとは言い切れない状況です。

今後はGDP比の数字を追うだけでなく、予算執行の効率化と実効性のある防衛力の構築が求められます。トランプ政権からのさらなる増額要求も見据え、防衛費の「質」に関する議論を深めていくべきです。

参考資料:

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