米中AI半導体規制2026年、エヌビディア収益15%納付で合意
はじめに
米中間のAI半導体をめぐる規制と対抗措置が激化しています。2025年8月、米半導体大手のエヌビディアとAMDは、中国市場向けAI半導体の販売再開に向け、輸出ライセンス取得条件として販売収益の15%を米政府に納付することでトランプ政権と合意しました。
一方、中国は米国のマイクロン・テクノロジー製品の調達禁止を継続。米中双方が半導体を「戦略的武器」として位置づける中、2026年の半導体市場は規制と対抗措置の影響を強く受ける見通しです。
本記事では、米国の対中半導体規制の現状、エヌビディアの合意内容、マイクロンへの影響、そして2026年の半導体市場見通しについて解説します。
米国の対中半導体規制
投資規制の発効
米政府は2024年10月28日、半導体・人工知能(AI)・量子分野で、米国企業や米国人が中国に投資することを制限する規制を発表しました。この規制は2025年1月から発効し、軍事転用の恐れがある先端技術が民間投資を通じて中国に流出することを防ぐことを目的としています。
高帯域幅メモリへの新規制
2024年12月、米バイデン政権は人工知能(AI)向け高帯域幅メモリー(HBM)および半導体製造装置の中国向け販売に新たな制限を加えると発表しました。
米商務省は、米国および外国企業が製造するHBMの販売に新たな制限を課し、AI向けメモリ市場で存在感を持つマイクロン・テクノロジーなどに影響を与える可能性が高いとされています。
2025年1月の輸出管理強化
米国産業安全保障局(BIS)は2025年1月13日、AI向け半導体などへの輸出管理を強化する暫定最終規則(IFR)を発表しました。これは2022年10月から続く先端半導体向け輸出管理規制の一連の強化措置の最新版です。
エヌビディアとAMDの合意
収益15%納付で販売再開
2025年8月、エヌビディアとAMDは中国市場向けAI半導体の販売再開に向け、トランプ政権と合意に達しました。輸出ライセンス取得の条件として、販売収益の15%を米政府に納付することになります。
対象製品は、エヌビディアの「H20」とAMDの「MI308」です。これらは過去に対中販売が禁止されていた製品で、一定の条件下での販売再開となります。
規制と収益のバランス
この合意は、完全な輸出禁止と自由な販売の間の妥協点と言えます。米政府は安全保障上の懸念に対処しつつ、米国企業の競争力維持と収益確保を図る狙いがあります。
エヌビディアにとって中国市場は重要な収益源であり、完全な販売禁止は大きな損失となるため、収益の一部を納付してでも市場へのアクセスを維持する選択をしたと見られています。
マイクロンへの影響
中国による調達禁止
2023年5月、中国当局は米半導体大手マイクロン・テクノロジーの製品が国家安全に大きなリスクを与えるとして、重要な情報インフラでの調達を停止すると発表しました。
これは米国が中国を対象とする半導体規制を日本や欧州などと足並みをそろえて強化していることに対する報復措置と見られています。
CHIPS Act資金の獲得
マイクロンは米国内での半導体製造強化に向け、CHIPS Act資金として61.4億ドルを獲得しました。ニューヨーク州とアイダホ州に半導体工場を建設する計画を進めています。
中国市場でのリスクを軽減しつつ、米国内での生産能力を強化する戦略です。
AIメモリ市場の成長
マイクロン・テクノロジーは、AIメモリの需要が供給を上回っていることを受け、高帯域幅メモリ(HBM)の市場規模が2028年までに1,000億ドルに達すると予想しています。年平均成長率は40%と見込まれています。
中国規制の影響を受けつつも、AI需要の拡大がマイクロンの成長を支える構図です。
2026年の半導体市場見通し
中国市場の動向
2026年の中国半導体市場は、米中対立による輸出規制の影響を受けながらも、国内自給率向上とAI分野への巨額投資を背景に成長が見込まれています。
中国はAI半導体の供給確保を最重要課題と位置づけており、一部の半導体工場では生産能力を大幅に増強する計画が進行中です。
アジア太平洋地域の成長
WSTS(世界半導体市場統計)の2025年秋季予測によれば、アジア太平洋地域全体の半導体市場は2025年に4,213億ドル、2026年に5,262億ドルへ拡大すると予測されています。
その中で中国は最大市場として中心的な役割を担うと見られており、規制下でも成長を続ける可能性があります。
規制と技術開発の競争
米中間の規制強化は、両国の半導体技術開発競争を加速させています。米国は先端半導体の中国流出を防ぐ一方、中国は国産化を推進。この競争は2026年以降も続く見通しです。
まとめ
米中間のAI半導体規制が激化する中、2025年8月にエヌビディアとAMDが収益15%納付で中国向け販売再開に合意しました。一方、マイクロンは中国での調達禁止が継続し、米国内での生産強化に舵を切っています。
2026年の半導体市場は、規制と対抗措置の影響を受けつつも、AI需要の拡大に支えられて成長が見込まれます。特にアジア太平洋地域は5,262億ドル規模に拡大する予測です。
半導体が「戦略的武器」となった現在、規制動向と技術開発競争から目が離せません。
参考資料:
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