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by nicoxz

米中AI覇権争い激化 H200に25%関税、中国は輸入制限で対抗

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はじめに

米中間のAI(人工知能)覇権争いが新たな局面を迎えています。トランプ米政権は2026年1月15日、エヌビディアの「H200」など先端AI半導体に25%の追加関税を発動しました。対中輸出を条件付きで認める代わりに「上納金」を徴収する形です。

一方、中国側も即座に対抗措置を講じました。税関当局がH200の輸入を認めないと通達したとの報道があり、米中半導体戦争は「封じ込め対迂回」から「完全なデカップリング」への新段階に移行しつつあります。

本記事では、米中AI半導体を巡る最新の動き、フィジカルAIを含む次世代技術競争、そして日本への影響について詳しく解説します。

トランプ政権の半導体関税政策

先端AI半導体に25%の「上納金」

トランプ大統領は1月14日、エヌビディアの「H200」やAMDの「MI325X」など一部の先端半導体に25%の追加関税を課すと発表しました。国家安全保障上の脅威を理由に挙げています。

ただし、この関税は全ての輸出に適用されるわけではありません。米国内で使用する目的であれば課税は免除され、中国などに再輸出する分から徴収する仕組みです。トランプ大統領は「中国も他国もこれを欲しがっており、我々は基本的にこれらのチップの販売で25%を得ることになる」と述べました。

NVIDIAは関税を歓迎

興味深いことに、NVIDIAはこの関税発動を公式に歓迎しています。「トランプ大統領がアメリカのチップ産業が競争し、高賃金の雇用とアメリカでの製造業を支援できるようにする決定を称賛する」と同社広報担当者は述べました。

背景には、従来の全面禁輸よりも、関税付きで輸出できる方がビジネス上有利という判断があるとみられます。中国市場へのアクセスを完全に失うよりも、25%のコストを上乗せしても販売できる方が望ましいという現実的な計算です。

対中輸出規制の方針転換

この関税発動に先立ち、米商務省は1月13日、H200などの対中輸出申請について、原則不許可から案件ごとの審査に方針を変更していました。米国内で供給不足がないことなどを条件に、条件付きで輸出を認める形です。

これは、AI半導体の需要が爆発的に増加する中、完全な禁輸措置が米企業の競争力を損なうとの懸念を反映しています。関税という形で国益を確保しながら、輸出の道を開くという折衷案といえます。

中国の対抗措置と国産化加速

H200輸入制限で即座に対抗

中国側も黙ってはいませんでした。ロイター通信によると、中国の税関当局は1月14日、職員に対してH200の輸入を許可しないと通達しました。米国が条件付きで輸出を認めても、中国側が輸入を拒否するという構図です。

この動きは、中国政府が自国のAI産業を米国製半導体への依存から脱却させようとする強い意志を示しています。短期的には中国のAI開発に影響が出る可能性がありますが、長期的には国産化の加速につながるとの見方もあります。

国産製造装置50%義務化

2026年に入り、中国政府が半導体メーカーに対して「新たな生産能力構築時に少なくとも50%の製造装置を国産で賄うこと」を事実上義務付けていることが明らかになりました。

この「50%ルール」は、米中半導体戦争が新たな段階に入ったことを象徴しています。米国の輸出規制強化が、皮肉にも中国国内の装置メーカーにとって追い風となり、国内サプライヤーの技術力を急速に引き上げる結果を生んでいます。

自給率目標と現実の乖離

中国政府は「中国製造2025」で半導体の自給率を2020年に49%、2030年に75%に引き上げる計画を掲げていました。しかし、2021年時点での自給率は16.7%にとどまり、中国メーカーのみでは6.6%と目標から大きく乖離しています。

それでも、「国家集積回路産業投資基金」を通じた大規模投資は継続しており、2014年の第一弾(1,387億元)、2019年の第二弾(2,000億元超)に続き、今後も巨額の資金が投じられる見通しです。

AI覇権争いの次なる戦場

フィジカルAIの台頭

2026年のAI覇権争いは、従来の生成AI(大規模言語モデル)から、「フィジカルAI」へと戦場が広がっています。フィジカルAIとは、AIがロボットや機械を自律的に制御する技術で、製造業や物流、医療など実世界での応用が期待されています。

特に注目されるのがヒューマノイド(ヒト型ロボット)です。米モルガン・スタンレーは2050年に10億台以上のヒト型ロボットが使われると予測しており、フィジカルAI市場は2030年までに1,660億ドル規模への成長が見込まれています。

米中それぞれの強み

米国はAI半導体の設計(デザイン)分野で圧倒的な優位性を持ち、この強みをさらに強化する方針です。エヌビディアやAMD、さらにアマゾンやアップルも独自AI半導体の開発を加速させています。

一方、中国はヒト型ロボットの開発・製造で先を行くとされ、中国企業による日本市場への進出も始まっています。AI技術と製造業の融合という点では、中国が一定の競争力を持っています。

日本のフィジカルAI戦略

高市首相は2026年1月の年頭会見で「フィジカルAI」構想に言及し、日本の製造業やロボティクス技術とAIを融合させる戦略を示しました。大規模言語モデルで米中と正面から戦うのではなく、日本が得意とする現場技術との組み合わせで独自の地位を確立しようという狙いです。

今後の見通しと日本への影響

米中関係の小康状態は一時的

米中関係は2025年を通じて関税や輸出規制を巡って緊張が続きましたが、足元では小康状態にあります。トランプ大統領は2026年4月の訪中に前向きな姿勢を示しており、同年後半には習近平国家主席を米国に招く意向も示しています。

しかし、ハイテク分野での技術覇権と安全保障が密接に連動する以上、両国の戦略的競争は長期化が避けられません。AI半導体を巡る駆け引きは、今後も続くと予想されます。

日本企業への影響

世界最大の半導体市場である中国は、日本にとって最大の半導体製造装置輸出国でもあります。中国の「50%国産化ルール」が本格化すれば、日本の装置メーカーにとって大きな打撃となる可能性があります。

米中対立の構造に日本も深く関わっている以上、中国での事業展開にはカントリーリスクを考慮した慎重な判断が求められます。

まとめ

トランプ政権によるAI半導体への25%関税発動と、中国の輸入制限は、米中AI覇権争いが新たな段階に入ったことを示しています。「封じ込め対迂回」から「完全なデカップリング」へ、両国の対立は深まる一方です。

フィジカルAIという新たな戦場も浮上し、2026年はAI覇権争いの勝敗を分ける重要な年となりそうです。半導体供給網の再編が進む中、日本もフィジカルAI戦略で独自のポジションを確立できるかが問われています。

参考資料:

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