米軍イラン作戦の全容 サイバー攻撃と大規模空爆の実態
はじめに
ヘグセス米国防長官と米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長は3月2日、イラン攻撃開始後初となる記者会見を国防総省で開き、軍事作戦「オペレーション・エピック・フューリー」の詳細を明らかにしました。
作戦は2月28日に開始され、サイバー空間と宇宙空間からイランの防空網を無力化した上で、空・海・陸からの大規模空爆を組み合わせるという前例のない複合的な軍事行動です。数千人の米軍兵士、数百機の戦闘機、2つの空母打撃群が参加し、さらなる規模拡大が表明されました。この作戦の全容と今後の見通しを詳しく解説します。
オペレーション・エピック・フューリーの概要
作戦開始の経緯
2月28日午前7時(現地時間)頃、米国とイスラエルはイランに対する協調攻撃を開始しました。トランプ大統領は「エピック・フューリーを承認する。中止なし。幸運を」と指示を出したとされています。イスラエル側では「オペレーション・ローリング・ライオン」というコードネームが使用されています。
作戦の主目的は、イランの核兵器開発能力の無力化と軍事インフラの破壊です。トランプ大統領は「イランの核兵器取得を阻止する」と宣言しており、一部報道では体制転換も視野に入れた作戦だとされています。
攻撃の規模
米中央軍(CENTCOM)によると、開始から最初の24時間でイラン国内の1,000カ所以上の目標が攻撃されました。空・海・陸に加え、ミサイル防衛を含む20種類以上の兵器システムが使用されています。
参加兵力は、数千人の米軍兵士、数百機の高性能戦闘機、数十機の空中給油機という大規模なものです。空母ジェラルド・R・フォードと空母エイブラハム・リンカーンが率いる2つの空母打撃群が、海上からの圧倒的な打撃力を提供しています。
サイバー・宇宙空間での先制攻撃
「ファースト・ムーバー」としてのサイバー戦
今回の作戦で注目すべきは、物理的な空爆に先立ってサイバー空間と宇宙空間からの攻撃が「ファースト・ムーバー(先行部隊)」として実施されたことです。ケイン統合参謀本部議長は、米サイバー軍と米宇宙軍が「非動的効果を重層的に展開」したと説明しました。
具体的には、イランのレーダーシステムや通信ネットワークに対するサイバー攻撃が行われ、「敵が見ることも、調整することも、効果的に対応することもできない状態」に追い込んだとされています。
イラン国内のインターネット遮断
作戦開始後、イラン国内のインターネット通信量は通常の約4%にまで急減しました。これが国家による意図的な遮断なのか、大規模なサイバー攻撃によるものなのかは明確ではありませんが、西側の情報筋は、革命防衛隊の指揮統制システムを混乱させ、反撃の調整能力を制限する目的だったと指摘しています。
防空網の無力化
サイバー軍の役割は、敵のネットワークに侵入してマッピングし、指揮統制の要となるノードを特定し、通信や防空能力を選択的に低下させることだとされています。航空機やミサイルが到達する前に意思決定を遅延させ、情報の流れを分断するという戦略です。この先制的なサイバー攻撃により、後続の物理的攻撃の効果が大幅に高められたと見られています。
攻撃目標と被害状況
核関連施設への攻撃
今回の攻撃では、イランの核関連施設が重要な標的となりました。イラン原子力庁のテヘラン本部やパルチン爆発実験施設、イスファハンの核施設への攻撃が報告されています。民間利用を装った二重用途の科学研究施設や行政拠点も標的に含まれているとされます。
軍事施設と指導部
軍事施設や軍の指導者も攻撃対象となりました。CBS報道によれば、初日の攻撃でイランの政府・軍関係者40人が死亡したとされています。赤新月社の発表では、民間人201人が死亡し747人が負傷しており、民間への被害も深刻です。
米軍側の損失
国防総省は、作戦開始以来4人の米軍兵士が死亡したと発表しています。イランの報復攻撃により、クウェートの米軍施設では兵士6人が死亡する被害も出ています。
米軍指導部の見解と今後の方針
「終わりなき戦争ではない」
ヘグセス国防長官は、この作戦は「レーザーフォーカスされた」ものであり、「終わりなき戦争にはならない」「イラクとは違う」と強調しました。ただし、作戦がいつ終了するかについては明言を避けています。
一方、ケイン統合参謀本部議長は「これは一晩で終わる作戦ではない」と述べ、「CENTCOMと統合軍が課せられた軍事目標の達成には時間がかかり、場合によっては困難で泥臭い作業になる」と率直に認めました。
作戦規模のさらなる拡大
米軍は追加部隊の派遣を表明しており、作戦規模をさらに拡大する方針です。トランプ大統領は攻撃が4〜5週間続くとの見通しを示しており、短期的な解決は見込めない状況です。
今後の課題と展望
エスカレーションの懸念
イランは湾岸諸国の米軍基地やエネルギー施設への報復攻撃を続けており、紛争は当初の想定を超えて拡大しています。ヒズボラの参戦もあり、中東全域が不安定化するリスクが高まっています。
国際社会の反応
日本政府は林官房長官が「イランの核兵器開発は許されない」としつつも、米国の攻撃を明確に支持するかどうかは明言を避けています。国際社会では、民間人への被害や作戦の出口戦略が不明確であることへの懸念が広がっています。
サイバー戦の新たな段階
今回の作戦は、サイバー攻撃が大規模な軍事作戦において果たす役割が新たな段階に入ったことを示しています。従来は補助的な手段とされてきたサイバー攻撃が、物理的攻撃に先行する「ファースト・ムーバー」として組み込まれたことは、今後の軍事ドクトリンにも影響を与えるでしょう。
まとめ
オペレーション・エピック・フューリーは、サイバー・宇宙空間での先制攻撃と大規模な物理的攻撃を組み合わせた、前例のない複合的軍事作戦です。1,000カ所以上の目標を攻撃し、イランの防空網や核関連施設に大きな打撃を与えています。
しかし作戦の終了時期は不透明であり、イランの報復や戦線拡大のリスクも高まっています。中東の安定やエネルギー供給、さらには国際秩序への影響も含め、今後の展開を注視する必要があります。
参考資料:
- Top U.S. general says it will take time to achieve Iran war goals
- Pete Hegseth says Iran military mission is “laser-focused”
- Cyber, Space Commands were a ‘first mover’ in strikes on Iran
- ‘Just Beginning’: Pentagon Officials Provide Latest Update on Iran Mission
- Operation Epic Fury and the Remnants of Iran’s Nuclear Program
- How Cyber Command contributed to Operation Epic Fury against Iran
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