Research

Research

by nicoxz

ウォーシュFRB議長の異例の選考過程、ベッセント財務長官の舞台回し

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年1月30日、トランプ大統領はFRB次期議長にケビン・ウォーシュ元FRB理事を指名しました。「大統領に次ぐ権力」を持つとされるFRBトップの選考は、数カ月に及ぶ異例の展開をたどりました。

当初11人もの候補が名を連ねた選考レースは、最終的に4人に絞り込まれ、ウォーシュ氏が選ばれるという結末を迎えました。市場が警戒した「言いなり議長」の誕生を回避した背景には、ベッセント米財務長官の周到な舞台回しがあったとされています。

本記事では、FRB議長選考の内幕、パウエル現議長への捜査との関係、そして今後の金融政策への影響を解説します。

異例の選考プロセス

11人から4人への絞り込み

今回のFRB議長選考は、過去に例を見ない大規模なものでした。当初の候補者リストには11人が名を連ね、現職・元職のFRB当局者から著名エコノミスト、ウォール街の実務家まで幅広い顔ぶれが揃いました。

選考プロセスはベッセント財務長官が主導しました。候補者は5人、そして最終的に4人に絞り込まれました。最終候補に残ったのは、ウォーシュ氏のほか、現FRB理事のクリストファー・ウォラー氏、ブラックロックの債券部門責任者リック・リーダー氏、そして国家経済会議(NEC)委員長のケビン・ハセット氏でした。

ベッセント財務長官の役割

選考の結果について、金融関係者の間では「トランプ氏が自分の候補を得た。だが、ベッセント氏もまた自分の候補を得た」という評価が広がっています。

ベッセント氏とウォーシュ氏は、FRBの非伝統的な政策手段(量的緩和など)の使用を制限すべきだという点で完全に一致しています。両者は著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏とも近い関係にあり、フィナンシャル・タイムズは「2人はドラッケンミラー氏の市場・経済政策の解釈を体現している」と報じました。

ドラッケンミラー氏自身も「ウォーシュ氏とベッセント氏のパートナーシップにとても興奮している」とコメントしています。

2017年の雪辱

ウォーシュ氏は2017年のFRB議長選考でも最有力候補の1人でした。しかし、最終的にトランプ大統領(第1期)はジェローム・パウエル氏を選びました。2024年の大統領選後には財務長官候補としても名前が挙がりましたが、この時もベッセント氏が選ばれています。

3度目となる今回、ウォーシュ氏はようやくFRB議長の座を射止めることになりました。

パウエル議長への捜査という異例の背景

「解任・後任」構想の浮上

今回の人事選考は、トランプ大統領によるFRBへの激しい攻撃と並行して進みました。トランプ氏はFRBの利下げペースが遅すぎると繰り返し批判し、パウエル議長に対する圧力を強めていました。

2025年12月29日には、トランプ氏がFRB本部ビルの改修工事を巡り「パウエルを無能で訴えることを考えている」と発言。改修費用が「世界史上最も高い1平方フィートあたりの建設費」になるとし、40億ドルを超える可能性があると主張しました。

司法省によるパウエル氏への捜査

2026年1月、パウエル議長は自身が司法省の刑事捜査を受けていることを公に認めました。表向きの理由はFRB本部の数十億ドル規模の改修工事と、それに関する議会証言です。

しかし、パウエル氏は「捜査の真の理由は、自分やFRB理事会メンバーがトランプ大統領の要求するペースで利下げに応じなかったことだ」と述べています。この捜査は、大統領によるFRBへの圧力キャンペーンの一環と広く見なされています。

パウエル氏の去就

パウエル氏のFRB議長としての任期は2026年5月に満了しますが、理事としての任期は2028年1月まで残っています。パウエル氏はFRBに残るかどうかについて明言を避けており、トランプ氏に理事会の後任ポストを渡すかどうかが焦点となっています。

上院承認の壁

パウエル捜査が皮肉な障壁に

ウォーシュ氏の承認プロセスには、予想外の障壁が立ちはだかっています。共和党のトム・ティリス上院議員(ノースカロライナ州)とリサ・マーカウスキー上院議員(アラスカ州)が、司法省によるパウエル氏への捜査が解決するまで、FRBの人事承認に反対する姿勢を示しているのです。

ティリス氏がウォーシュ氏の指名に対してホールド(保留)をかけたことで、上院銀行委員会から指名を承認に回すことが困難になっています。委員会を迂回するには上院本会議での排出投票が必要ですが、これには60票が必要であり、現在の上院の構成では実現が難しい状況です。

ホワイトハウスの見解

ホワイトハウスのハセットNEC委員長はCNBCに対し、「司法省の問題は迅速に解決できるだろう」と述べ、「ホワイトハウスはウォーシュ氏が素晴らしい候補者であり、できるだけ早く承認されるべきだと非常に高い確信を持っている」と語りました。

注意点・今後の展望

市場の反応

ウォーシュ氏の指名に対する市場の反応は、安堵と警戒の入り混じったものでした。ウォーシュ氏はFRB理事の経験がある比較的穏当な人選と見なされ、「常にトランプ氏の言いなりになるわけではない」との評価からドルが上昇し、国債利回りも上昇しました。一方で、金利の高止まりへの懸念から株式市場は下落しました。

金融政策の方向性

ベッセント財務長官とウォーシュ氏が共有するビジョンは、FRBの政策手段の縮小です。量的緩和のような非伝統的な手段に頼らず、金利政策を中心としたシンプルな金融政策運営が目指される可能性があります。

ドラッケンミラー氏はウォーシュ氏について「必ずしもタカ派ではない」と述べており、状況に応じて柔軟な政策運営を行う可能性も示唆されています。

まとめ

ウォーシュ氏のFRB議長指名は、ベッセント財務長官が主導した異例の選考プロセスの結果です。11人の候補から絞り込まれた選考は、パウエル議長への司法省捜査という前例のない事態と並行して進みました。

上院承認ではティリス、マーカウスキー両議員の反対というハードルが残されています。パウエル氏への捜査が解決されない限り承認は難航する見通しであり、5月の議長交代に間に合うかどうかが焦点です。ベッセント氏とウォーシュ氏の連携が今後の米国の経済政策をどう形作るか、注目が集まります。

参考資料:

関連記事

次期FRB議長ウォーシュ氏、55歳の量的緩和批判者とウォール街人脈

トランプ大統領が次期FRB議長に指名したケビン・ウォーシュ氏は、35歳で史上最年少のFRB理事となり、量的緩和を批判してFRBを辞任した異色の経歴を持ちます。モルガン・スタンレー出身のウォール街人脈とコミュニケーション能力が武器です。

最新ニュース