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by nicoxz

中国海警局の尖閣周辺活動が過去最多に、日中の緊張続く

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はじめに

中国海警局に所属する船舶による尖閣諸島周辺海域での活動が、2025年に過去最多を記録しました。接続水域への出没日数は357日に達し、4年連続で記録を更新しています。この状況は、東アジアの安全保障環境における深刻な懸念材料となっています。

日本と中国の間では、領土問題をめぐる対立が続いており、偶発的な衝突のリスクが高まっています。本記事では、最新の統計データをもとに、中国海警局の活動実態、日本側の対応策、そして両国間の対話メカニズムの現状と課題について解説します。

2025年の中国海警局活動:記録更新の実態

接続水域への出没357日、過去最多を更新

海上保安庁の発表によると、2025年1月1日から12月31日までの1年間で、中国海警局に所属する船舶が尖閣諸島周辺の接続水域(領海の外側12〜24海里の範囲)に入域した日数は357日でした。これは2008年に統計を開始して以来、最多の記録です。

接続水域に入域した船舶の合計は1,380隻に上り、これも3年連続で記録を更新しました。特筆すべきは、2024年11月19日から2025年10月19日までの335日間、中国公船が途切れることなく接続水域に滞在し続けたことです。荒天時を除き、ほぼ毎日のように中国船が確認される状況が常態化しています。

領海侵入は32日、過去最長の滞在時間も

2025年の領海侵入(領海の内側12海里以内への進入)は32日間にわたって確認されました。特に2025年3月には、2隻の中国海警局の船舶が92時間8分にわたって連続で領海内に留まり、2023年の約81時間を上回る過去最長記録を更新しました。

こうした長時間の領海滞在は、単なる偶発的な進入ではなく、意図的な活動であることを示しています。日本側は海上保安庁の巡視船を通じて退去要求を行っていますが、中国側は応じない姿勢を続けています。

装備の大型化・武装化が進行

近年の顕著な変化として、中国海警局の船舶の大型化と武装化が挙げられます。海上保安庁の報告によると、2024年6月頃から、尖閣諸島周辺に展開する中国海警局の4隻すべてに76mm砲などの甲板搭載型自動砲が装備されるようになりました。

海上保安庁は2025年の報告書で「中国海警局の船舶は大型化、武装化、増強が確認されており、尖閣諸島周辺の状況はますます深刻化している」と警告しています。こうした装備の強化は、偶発的な衝突が発生した場合のリスクを高める要因となっています。

2025年の主要な事案と領空侵犯

初めての領空侵犯事案

2025年5月には、尖閣諸島周辺の日本領海内にいた中国海警局の船舶からヘリコプターが飛び立ち、日本の領空を侵犯するという事態が発生しました。これは、中国機による領空侵犯としては4回目となりますが、海警局の船舶から発進したヘリコプターによるものは初めてのケースでした。

この事案は、中国側の活動が海上だけでなく空域にも拡大していることを示しており、日本の安全保障上の懸念を一層深める結果となりました。

高市首相発言後の緊張激化

2025年11月、高市早苗首相が「台湾有事は存立危機事態に該当しうる」と発言したことを受け、中国は強く反発しました。発言からわずか10日後の11月16日、中国海警局の4隻が尖閣諸島東方の12海里内に進入しました。

さらに12月10日には再び4隻が領海侵入を行い、日中関係の緊張が安全保障面にも波及していることが明らかになりました。外交的な対立が実際の海上活動にも影響を与える構図が鮮明になっています。

日本側の対応:海上保安庁の体制強化

過去最大規模の予算要求

こうした状況に対応するため、海上保安庁は2026年度予算として3,177億円を要求しました。これは前年度比14%増で、過去最大の規模となります。2027年度にはさらに3,200億円が配分される予定で、体制強化が急ピッチで進められています。

予算の主な使途としては、無人航空機「シーガーディアン」(MQ-9B)4機の追加調達と、大型巡視船2隻の建造が含まれています。日本はすでに3機のシーガーディアンを運用しており、2026年3月までにさらに2機が配備される予定です。これにより、24時間体制での監視能力が強化されます。

大型多目的巡視船の建造計画

海上保安庁は、全長約200メートル、総トン数約3万トンの多目的巡視船の建造を計画しています。この規模は、海上自衛隊最大級のいずも型護衛艦(全長248メートル、総トン数約2万トン)を凌駕するもので、実現すれば中国の大型巡視船をも上回ることになります。

この巡視船は、大規模災害時の物資輸送や被災者支援、有事における国民保護活動などを想定していますが、尖閣諸島周辺での警備活動にも活用される見込みです。

偶発的衝突を防ぐ対話の枠組み

日中海空連絡メカニズムの現状

日本と中国は2018年6月に「海空連絡メカニズム」を運用開始しました。これは、両国の防衛当局間で直接通信を行い、海上・空域での偶発的な衝突を防止することを目的としています。

このメカニズムには、防衛当局間の直接通信手続き、ホットライン、年次会合の3つの要素が含まれています。2023年5月には、両国の防衛大臣が新設されたホットラインを通じて初めて電話会談を行いました。

課題と限界

しかし、このメカニズムには重大な限界があります。まず、対象が防衛当局に限定されており、海警局(中国では人民武装警察の一部)は直接的なカバー範囲に含まれていません。尖閣諸島周辺での緊張の大部分が海警局によるものであることを考えると、この点は大きな課題です。

また、領土問題という根本的な対立が存在する限り、海上での緊張は続く可能性が高いです。ホットラインも、一方が電話に出ることを拒否すれば機能しません。対話の枠組みは整備されつつありますが、実効性については疑問が残ります。

今後の展望と注意点

関係悪化の長期化リスク

日中関係は、高市首相の台湾関連発言以降、悪化の一途をたどっています。中国は発言の撤回を求めていますが、日本側は応じておらず、膠着状態が続いています。

日本政府内では、関係改善に向けた複数のシナリオが検討されているとされます。一つは双方が受け入れ可能な形で発言を事実上撤回する案、もう一つは冷却期間を置いて落としどころを探る案です。しかし、具体的な進展は見られず、問題の長期化は避けられないとの見方も多くなっています。

経済的影響への懸念

関係悪化が続けば、経済面への影響も避けられません。中国に進出している日本企業の活動に支障が生じる可能性や、サプライチェーンへの影響が懸念されています。経済界からは、冷静な対話を通じた関係改善を求める声が上がっています。

一方で、中国側も経済的な困難を抱えており、日本企業の撤退を招くような過度な対立は避けたいとの分析もあります。両国とも、経済的な相互依存関係を考慮した対応が求められています。

まとめ

2025年、中国海警局の尖閣諸島周辺での活動は過去最多を記録し、日中間の緊張は高まり続けています。日本は海上保安庁の予算増額や装備強化で対応を進めていますが、根本的な解決には至っていません。

偶発的な衝突を防ぐためには、対話メカニズムの実効性向上が不可欠です。しかし、領土問題という根本的な対立が存在する中で、両国が冷静に対話を続けることは容易ではありません。東アジアの平和と安定のために、日中両国には粘り強い外交努力が求められています。

参考資料:

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