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by nicoxz

円安30年に幕引く「地動説」、サナエノミクスと市場激変

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はじめに

「株式市場は期待であふれ、債券市場は総悲観。いまこそ中庸な議論が必要なのだが」—ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏は、高市政権の経済政策「サナエノミクス」をめぐる評価の分断に苦言を呈しています。

高市早苗首相が掲げる積極財政と金融緩和継続の「高圧経済論」は、株式市場からは歓迎される一方、債券・為替市場では財政悪化と円安進行への懸念が強まっています。一部では「1ドル=170円でも構わない」との発言も取り沙汰され、市場は浮足立っています。

本記事では、サナエノミクスの実態、2026年の為替見通し、そして長期円安トレンドに「幕引き」をもたらす可能性のある「地動説」について解説します。

サナエノミクスとは何か

積極財政と金融緩和の両立

サナエノミクスとは、高市早苗政権が掲げる経済政策の総称です。その柱は「積極財政」と「金融緩和の継続」の両立にあります。官民連携による成長投資で内需を刺激し、国内に資金需要を生み出すという構想です。

自民党内からは、秋の経済対策の規模を17〜25兆円に膨らませようとする意見も出ており、アベノミクスを上回る財政出動が視野に入っています。

株式市場の期待

2026年の日本株について、市場関係者はサナエノミクスを上昇の原動力の一つとして期待しています。「サナエノミクス」「企業のガバナンス改革」「AIブーム」「円安」の4つがテーマとして挙げられており、積極財政による景気刺激効果への期待が株価を押し上げています。

債券市場の懸念

一方、債券市場では財政悪化への懸念が強まっています。財政拡大が続けば国債増発につながり、長期金利の上昇圧力となります。すでに長期金利の指標となる10年国債利回りは2%を超える水準まで上昇しており、「悪い金利上昇」のリスクが意識されています。

円安進行の背景と懸念

高市政権発足後の円安

自民党総裁選で高市氏が勝利したことを受け、外国為替市場では円安・ドル高が進行しました。財政・金融政策がより拡張的になるとの見方から、円売り圧力が強まったためです。

野村證券は2025年末のドル円見通しを150円(従来140円)、2026年末を140円(従来135円)に引き上げるなど、各社が円安方向に見通しを修正しています。

財政悪化懸念が円安を招く構図

円安進行の大きな要因は、財政悪化への懸念です。経済対策の規模拡大による需要超過はインフレ予想を高め、それが円売りを招くという構図が生まれています。

第一生命経済研究所の熊野英生氏は「高市政策による円安・債券安」を指摘し、「行き過ぎている財政拡張」に警鐘を鳴らしています。多くの国民が円安と物価高に苦しむ中、政策の情報発信の「ワンボイス化」の必要性が指摘されています。

170円シナリオの可能性

マネックス証券は、「資金運用部ショック」のような債券暴落が起こる場合、日本国債利回りが急上昇し、ドル円も170円を目指す円の急落が起こりかねないとの見通しを示しています。これはメインシナリオではありませんが、財政リスクが顕在化した場合のテールリスクとして意識されています。

2026年の為替見通し

年前半は円安継続の見込み

複数の金融機関は、2026年年前半は円安圧力が続くと予想しています。IG証券は、年前半は米ドル安・円安トレンドが予想されるとし、ドル円は160円や2024年高値の161.95円レベルを上限に高値圏での推移を見込んでいます。

野村證券も、年前半は円安圧力が持続するとの見方を示しています。

年後半は円高への転換か

一方、年後半については円高方向への転換を予想する声が多くなっています。三井住友DSアセットマネジメントは、時間の経過とともに徐々にドル安・円高方向へ転じ、2026年年末は150円を予想しています。

野村證券は、2026年後半にドル円が150円を再び割り込み、140円台前半に向けて調整すると予想。マネックス証券は2026年のドル円を145〜160円の15円レンジと見込んでいます。

円高に転じる条件

円安が収束するためには、以下の条件が必要とされています。

  1. 米国の景気が落ち着き、金利が順調に下がり続けること
  2. 日銀による継続的な利上げ
  3. 日本政府の財政運営への不安が和らぐこと

日銀は2025年12月に0.75%への利上げを実施しており、2026年中のさらなる利上げが織り込まれています。日銀利上げとFRBの利下げの組み合わせにより、日米金利差の縮小が円高圧力となる可能性があります。

「地動説」への転換とは

円安30年に幕引きの可能性

市場関係者の一部は、約30年続いた円安トレンドに「幕引き」をもたらす可能性のある構造変化を「地動説」と表現しています。従来の「円は安くなり続ける」という前提が、いずれ覆る可能性があるという見方です。

構造変化の兆候

貿易赤字は着実に縮小しており、円安圧力はピークアウトしているとの見方があります。日銀の利上げ継続、海外との金利差縮小、そして日本企業の国内回帰の動きなどが、構造的な円安からの転換を示唆しています。

市場激変への備え

仮に「地動説」が現実となれば、これまで円安を前提に構築されてきた投資戦略や事業計画の見直しが必要になります。輸出企業の為替差益が縮小し、海外投資の収益性も変化します。市場関係者は、円高転換シナリオへの備えを促しています。

高市政権の課題

積極財政と円安の板挟み

高市政権は、積極財政による景気刺激と、円安・物価高への対応という板挟みの状況にあります。積極財政を進めれば円安が進行し、物価高が家計を圧迫する。一方で財政を引き締めれば、景気への悪影響が懸念されます。

2026年度予算案では財政懸念を払拭できておらず、日銀の利上げによる金利差縮小でも円安は止まらない状況です。高市政権が自らのイニシアティブで円安を止めるのは難しくなっているとの分析もあります。

求められる中庸な議論

冒頭の矢嶋氏の指摘にあるように、「株式市場は期待であふれ、債券市場は総悲観」という評価の分断は健全とはいえません。積極財政の効果とリスクを冷静に評価し、中庸な議論を行うことが求められています。

まとめ

高市政権の「サナエノミクス」は、株式市場からは期待を集める一方、債券・為替市場では財政悪化と円安進行への懸念を招いています。2026年の為替見通しは、年前半は円安継続、年後半は円高への転換が予想されていますが、不確実性は高い状況です。

約30年続いた円安トレンドに「幕引き」をもたらす「地動説」への転換も視野に入れ、市場激変への備えが求められています。積極財政と円安・物価高対策の両立という難題に、高市政権がどう取り組むかが、2026年の日本経済を左右する鍵となります。

参考資料:

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