都心家賃高騰で注目「ずらし駅」の賢い住まい選び
はじめに
2026年の春、新生活に向けた賃貸物件探しが本格化しています。しかし、東京23区の家賃相場は上昇が止まらず、シングル向き物件で月額約11万9,000円、ファミリー向きで約24万5,000円と、いずれも過去最高を更新しました。こうした家賃高騰のなかで注目を集めているのが、「ずらし駅」と呼ばれる住まい選びの戦略です。
ずらし駅とは、池袋や新宿といったターミナル駅から1〜3駅離れた駅のことです。交通や生活の利便性を大きく損なわずに、家賃を数万円単位で抑えられる点が最大の魅力です。本記事では、ずらし駅が注目される背景と具体的な駅の家賃比較、そして選び方のポイントを詳しく解説します。
東京の家賃はどこまで上がったのか
過去最高を更新し続ける賃料
東京23区の賃貸市場は、歴史的な高水準にあります。LIFULL HOME’Sの調査によると、2025年時点でシングル向きの掲載賃料は前年同月比16.1%アップの11万9,139円、ファミリー向きは前年同月比14.5%アップの24万4,579円を記録しました。カップル向き(30〜50平方メートル)のカテゴリでは、27カ月連続で最高値を更新しています。
NHKの報道によれば、東京23区の単身向けマンションの平均家賃は2025年に9万6,700円となり、前年比6%の上昇です。2025年12月時点では月額10万円を超える水準に達しています。
上昇の要因
家賃高騰の背景には、複数の構造的な要因があります。まず、都市圏への人口流入が続いていることです。コロナ禍で一時的に地方移住の動きがありましたが、オフィス回帰の流れとともに都心の住宅需要が再び拡大しました。
加えて、建設コストの上昇も大きな要因です。資材価格と人件費の高騰により、新築賃貸物件の供給コストが上がり、それが賃料に転嫁されています。消費者物価指数の上昇も、大家が賃料を引き上げる根拠となっています。
「ずらし駅」とは何か
コスパ最大化の住まい戦略
「ずらし駅」は、不動産ポータルサイトのLIFULL HOME’Sが命名した概念です。ターミナル駅や人気駅から1〜3駅離れた駅を選ぶことで、交通利便性をほぼ維持しながら家賃を大幅に削減する住まい選びの戦略を指します。
特徴的なのは、急行や特急が停まらない「各駅停車の駅」が多い点です。各停しか停まらないため知名度は低いものの、ターミナル駅まで5〜10分程度でアクセスできるため、実際の利便性はそれほど変わりません。にもかかわらず、家賃は5万〜6万円も安くなるケースがあります。
池袋周辺のずらし駅比較
ずらし駅の代表例として、池袋周辺を見てみましょう。1LDKの家賃相場(LIFULL HOME’S調べ)で比較すると、その差は歴然です。
池袋駅の家賃相場は21.1万円ですが、東武東上線で2駅の大山駅では14.9万円と、6.2万円も安くなります。JR埼京線の十条駅は15.8万円で5.3万円の差、東京メトロ副都心線の千川駅は14.8万円で6.3万円の差、西武池袋線の東長崎駅にいたっては14.3万円で6.8万円の差です。
年間で換算すると、大山駅を選ぶだけで約74万円、東長崎駅なら約82万円もの節約になります。いずれの駅も池袋まで約5分でアクセスできるため、通勤や買い物への影響はほとんどありません。
赤羽・大宮周辺のずらし駅
池袋以外のエリアでも、ずらし駅の効果は確認できます。
赤羽駅(1LDK:14.1万円)の場合、隣駅の北赤羽駅では11.1万円と3万円安くなります。また、埼京線で県境を越えた川口駅では11.8万円と、2.3万円の差があります。
大宮駅(1LDK:14.0万円)周辺では、川越線の指扇駅が9.4万円で4.6万円の差、西大宮駅が9.2万円で4.8万円の差です。埼玉県内でも、主要駅から数駅ずらすことで大きな節約効果が得られます。
注目のずらし駅を深掘り
大山駅(東武東上線)
大山駅は、池袋から東武東上線でわずか3駅・約5分の場所にあります。駅前には「ハッピーロード大山商店街」をはじめとする活気ある商店街が広がり、日常の買い物に困ることはありません。スーパーやドラッグストアも充実しており、生活利便性は非常に高い地域です。
ワンルームの家賃相場は約6万円台からで、池袋と比べて圧倒的にリーズナブルです。日中はファミリー層が多く歩いており、治安面でも安心感があります。池袋まで出れば新宿や渋谷へのアクセスも容易で、まさに「コスパ最強」のずらし駅といえます。
さいたま新都心駅(JR高崎線・京浜東北線)
さいたま新都心駅は、大宮駅から1駅の場所に位置しています。京浜東北線と上野東京ラインが乗り入れており、上野駅や東京駅へダイレクトにアクセスできます。
駅周辺は埼玉県内でもトップクラスに治安が良く、街の整備も行き届いています。大型商業施設「コクーンシティ」が駅前にあり、ショッピングや外食に便利です。ワンルーム・1DKの家賃相場は5〜8万円台と、都心と比べて大幅に安い水準です。
2026年の急上昇駅
LIFULL HOME’Sの2026年版ランキングでは、「借りて住みたい街」の急上昇1位に方南町駅(東京メトロ丸ノ内線)がランクインしました。新宿や霞ヶ関、大手町などの主要ビジネスエリアへダイレクトアクセスが可能でありながら、1LDKの賃料相場は約14万円と、山手線内側エリア(約20万円)と比べて6万円ほど安くなっています。
2位の不動前駅、3位の新中野駅もずらし駅としての特徴を備えた駅です。利便性と家賃のバランスを重視する消費者の動きが、ランキングにはっきりと表れています。
ずらし駅を選ぶ際の注意点と今後の展望
選び方のポイント
ずらし駅を選ぶ際には、いくつかの注意点があります。まず、通勤時間の実測値を確認することです。路線図上では1〜2駅の差でも、乗り換えの有無や混雑状況によって体感時間は大きく変わります。
次に、駅周辺の生活インフラを事前にチェックすることも重要です。スーパーや病院、保育園などの施設が徒歩圏内にあるかどうかは、実際に住んでみないとわかりにくい部分です。物件見学の際に周辺を歩いてみることをおすすめします。
また、ずらし駅の人気が高まることで、今後は家賃が上昇するリスクもあります。現在の家賃差がいつまで続くかは不透明なため、引っ越しを検討している場合は早めの行動が有利です。
今後の見通し
不動産調査会社の見立てでは、2026年も都心部の家賃上昇傾向は続くと予想されています。消費者物価指数の上昇や都市圏への人口流入には大きな変化が見られないためです。
こうした状況のなかで、交通・生活利便性を大きく落とさずに賃料を抑えられる「ずらし駅」は、今後も効果的な生活防衛手段として広がっていくと考えられます。特に、リモートワークの定着により通勤頻度が減った層にとっては、ずらし駅の選択肢はさらに魅力的なものになるでしょう。
まとめ
東京23区の家賃が過去最高水準を更新し続けるなか、「ずらし駅」はコストパフォーマンスの高い住まい選びとして定着しつつあります。池袋から5分の大山駅で年間約74万円の節約、東長崎駅なら約82万円の節約と、その効果は無視できない規模です。
新生活を控えたこの時期、家賃の高さに悩んでいる方は、まず普段使うターミナル駅の1〜3駅先を検索してみてください。知名度は低くても、生活利便性が高く家賃が大幅に安い「穴場」が見つかるかもしれません。物件探しの際は、実際に駅周辺を歩いて生活環境を確認することが、後悔しない住まい選びにつながります。
参考資料:
関連記事
東京の家賃高騰が止まらない、割安物件を見つける戦略
東京23区の家賃上昇率が30年ぶりの水準に。急騰する都心家賃の実態と、「不便な駅」の活用や築年数の工夫など割安物件を探す具体的な方法を解説します。
東京23区で定期借家が1割に—家賃インフレの新たな火種
東京23区で定期借家物件の割合が初めて1割に到達。貸し手優位の市場環境を背景に、家賃上昇を加速させる要因として注目されています。
東京23区の家賃が所得4割超え、マンション高騰で家計を圧迫
東京23区のファミリー向けマンション家賃が可処分所得の4割を超え、過去最高水準に。分譲マンション価格の高騰が賃貸市場に波及し、働く世代の住宅選びに深刻な影響を与えている現状と対策を解説。
東京オフィス需要が過去最高、供給不足で争奪戦が激化
東京23区のオフィス需要が過去最高を記録する一方、供給は需要の約半分にとどまり深刻な不足状態に。建築費高騰や人手不足が新規供給を阻み、企業間のオフィス争奪戦が激化する背景と今後の展望を解説します。
東京オフィス市場が逼迫、需要が供給の倍に
東京23区のオフィス需要が過去最高を記録する一方、供給は半分以下にとどまり、空室率は歴史的低水準に。建築費高騰と人手不足が供給遅延を招き、オフィス争奪戦が激化する背景と今後の見通しを解説します。
最新ニュース
アクティビストの標的が変化、還元から再編へ
割安株の減少でPBR1倍超え企業も標的に。アクティビストの投資戦略が株主還元から事業再編へとシフトする背景と今後の展望を解説します。
アームが初の自社製チップ発表、AI半導体市場に本格参入
ソフトバンクグループ傘下の英アームが35年の歴史で初めて自社製チップ「AGI CPU」を発表。メタやOpenAIを顧客に迎え、5年で年間150億ドルの売上を目指す戦略転換の全容を解説します。
Armが半導体自前開発に参入、AI向けCPUで事業転換
ソフトバンク傘下の英Armが35年間のIPライセンスモデルを転換し、自社開発チップ「AGI CPU」でメタやオープンAIにAI半導体を直接供給する戦略の背景と影響を解説します。
イビデン大幅続伸の背景と半導体銘柄上昇の全貌
2026年3月25日、イビデンが特別利益491億円の計上発表で大幅続伸。半導体関連銘柄が軒並み上昇した背景には、米イラン停戦期待による原油下落と投資家心理の改善がありました。
イラン強硬派「3人組」の実権と米15項目和平案の行方
ハメネイ師亡き後のイランで実権を握る革命防衛隊出身の強硬派3人組と、トランプ政権が提示した15項目の和平案の内容・交渉の行方を詳しく解説します。