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by nicoxz

東京23区の家賃が所得4割超え、マンション高騰で家計を圧迫

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はじめに

東京23区で住宅費の負担が深刻な水準に達しています。ファミリー層向けマンションの募集家賃が可処分所得の4割を超え、都心で手ごろな賃貸物件を探すことがますます難しくなっています。

この背景には、新築分譲マンション価格が1億円を大きく超える水準まで高騰し、購入を諦めた世帯が賃貸市場に流入していることがあります。本記事では、東京の家賃高騰の実態、その要因、そして家計への影響と対策について詳しく解説します。

家賃高騰の実態

ファミリー向け物件の急騰

東京23区のファミリー向け(2LDK〜3DK)マンションの平均家賃は約24万8000円に達し、前年同月比で9.7%もの上昇を記録しています。1年間で約2万2000円の値上がりという、異例のペースです。

70平方メートルを超える大型ファミリー向け物件では平均家賃が約39万3000円となり、前年比9.1%増と、高額帯でも上昇が続いています。都心部で子育てをしながら働く世帯にとって、住居費の負担は限界に近づきつつあります。

単身者向けも記録的な上昇

家賃高騰はファミリー層だけの問題ではありません。ワンルームマンションの平均家賃は約10万4000円(前年比29%増)と、過去に例を見ない急騰を記録しています。単身者向け物件の掲載平均賃料も約11万6000円で、前年から15.1%上昇しました。

これにより、新社会人や若年層が都心部に住むハードルも大きく上がっています。

家賃高騰の背景

分譲マンション価格の高騰

最大の要因は、分譲マンション価格の異常な高騰です。東京23区の2025年度上半期における新築分譲マンションの平均価格は1億3309万円に達し、直近2025年10月には1億5000万円を超えました。

一般的なサラリーマン世帯では到底手が届かない価格帯となり、住宅購入を諦めた層が賃貸市場に流れ込んでいます。この「購入から賃貸へ」のシフトが、賃貸物件の需給バランスを大きく崩しています。

都心回帰と人口集中

コロナ禍の終息に伴い、都心回帰の流れが加速しています。特に20〜30代の東京への転入超過数が高水準で推移しており、賃貸需要を押し上げています。

テレワークの普及で一時は郊外への移住が注目されましたが、出社回帰の動きとともに、通勤利便性の高い都心部の人気が再び高まっています。

維持管理コストの上昇

物価高の影響で、マンションの維持・管理費が上昇していることも見逃せません。建材費や人件費の高騰がオーナーのコスト増につながり、それが家賃に転嫁されています。

また、不動産投資物件としての人気も高まっており、投資目的の物件取得が増えることで、居住用物件の供給が相対的に減少している側面もあります。

家計への深刻な影響

可処分所得の4割を住居費に

一般的に、住居費は可処分所得の3割以内が適正とされています。しかし、東京23区ではすでにファミリー層の住居費負担が4割を超え、「危険水域」に達しています。

2024年までの約4年間で、可処分所得に対する平均家賃の割合は1〜5ポイント上昇しており、この傾向に歯止めがかかっていません。

低所得世帯ほど重い負担

世帯年収別に見ると、低所得世帯ほど住居費の負担が重くなる傾向があります。世帯年収200〜300万円の層では、東京都で住居費が年収の約33%を占めています。

家賃がさらに上昇すれば、生活に必要な他の支出を削らざるを得なくなり、生活の質の低下や貯蓄の困難化につながります。

ライフプランへの影響

「出産などのライフステージの変化を考えると、家賃の高い東京に住み続けるのは難しい」という声が増えています。結婚・出産・子育てといった人生の節目で、都心を離れざるを得ない世帯が増加する可能性があります。

これは個人の問題にとどまらず、東京の労働力確保や少子化対策にも影響を与える社会的な課題です。

新たなインフレ圧力として

消費者物価指数への影響

これまで変動が少ないとされてきた家賃ですが、2023年に消費者物価指数(CPI)の家賃指数が25年ぶりにプラスに転じました。家賃はCPI全体に占めるウエイトが高いため、今後は物価全体を押し上げる要因となる可能性があります。

家賃上昇がインフレ圧力となれば、日銀の金融政策にも影響を与えかねません。

賃金上昇との追いかけっこ

賃金が上がっても、それ以上のペースで家賃が上昇すれば、実質的な生活水準は向上しません。現在の東京では、賃金上昇が家賃上昇に追いつかない状況が生まれつつあります。

注意点と今後の展望

2026年は上昇ペース鈍化の見通し

東京カンテイの高橋雅之上席主任研究員によると、2026年は「所得や賞与の上昇、人口流入などの勢いが弱まりそう」で、「2025年ほどの賃料の値上がりは見込めない」との見通しです。

ただし、これは「家賃が下がる」という意味ではなく、上昇ペースが緩やかになるという予測にすぎません。

郊外への移住という選択肢

東京都下(23区外)のファミリー向け平均家賃は約13万3000円で、23区の約24万8000円と比べると約11万円の差があります。通勤時間との兼ね合いになりますが、郊外への移住は現実的な選択肢の一つです。

行政の対応

東京都は市場家賃より2割程度安い「アフォーダブル住宅」を供給する計画を発表しています。ただし、供給戸数は限定的であり、家賃相場全体への影響は小さいと見られています。

まとめ

東京23区の家賃高騰は、分譲マンション価格の上昇、都心回帰、人口集中など複合的な要因によってもたらされています。可処分所得の4割を超える住居費負担は、働く世代の家計を圧迫し、ライフプランにも影響を与えています。

2026年は上昇ペースが鈍化する見通しですが、根本的な解決にはまだ時間がかかりそうです。住まい選びにあたっては、将来の収入見通しやライフプランを踏まえ、無理のない範囲で物件を選ぶことが重要です。郊外への移住やアフォーダブル住宅の活用など、選択肢を広げて検討することをお勧めします。

参考資料:

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