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by nicoxz

東京オフィス市場が逼迫、需要が供給の倍に

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はじめに

東京のオフィス市場が、かつてないほどの逼迫状態に陥っています。不動産サービス大手CBREの調査によると、2025年の東京23区における新規オフィス需要は過去最高を更新しました。一方で新規供給はその約半分にとどまり、需要と供給の大きなギャップが生じています。

コロナ禍でリモートワークの普及によりオフィス不要論が叫ばれた時期もありましたが、現在の市場はその予測を完全に覆しています。企業の業績拡大を背景にオフィスの移転・拡張需要が急増し、空室がほぼ払底する事態となっています。本記事では、東京オフィス市場の現状と、今後の見通しについて詳しく解説します。

過去最高を記録した新規需要

需要は前年比51%増の急拡大

CBREのレポートによると、2025年の東京23区における新規オフィス需要は約33.6万坪(約111万平方メートル)に達しました。これは前年比51%増という大幅な伸びであり、過去最高の記録です。背景には、日本企業の業績回復と拡大があります。

特に注目すべきは、需要がグレードAと呼ばれる大規模・高品質オフィスだけでなく、全グレードにわたって堅調に推移していることです。CBREの2025年第1四半期レポートでは、全グレードの空室率が2四半期連続で低下したことが報告されています。グレードA物件の空室率は第1四半期に3.6%、第2四半期には1.4%まで急落し、4年ぶりに2%を下回りました。

賃料は18年ぶりの高水準に

空室率の低下に伴い、オフィス賃料も上昇を続けています。2025年第3四半期にはグレードAの賃料が前四半期比3.4%上昇し、2007年以来最大の四半期上昇率を記録しました。賃料水準はコロナ前の2020年第1四半期のピークを超え、約18年ぶりの高水準に達しています。

CBREは「東京のプレミアムオフィスは、ここ20年近くで最も高い賃料水準にある」と分析しており、都心主要区を中心に優良ビルの争奪戦が激化しています。

供給が追いつかない構造的要因

建築費高騰と人手不足が直撃

需要が急増する一方で、新規供給はわずか約18.5万坪にとどまりました。需要の約55%しかカバーできておらず、深刻な供給不足に陥っています。この供給不足には、複数の構造的要因が重なっています。

第一に、建築費の高騰です。建築資材の価格上昇が続いており、鉄鋼やコンクリートなどの主要資材コストが軒並み上昇しています。第二に、建設業界の深刻な人手不足があります。2024年4月に適用された「働き方改革関連法」による残業規制も加わり、工期の長期化が常態化しています。

大規模ビルの供給予測も低水準

森トラスト株式会社の「東京23区の大規模オフィスビル供給量調査2025」によると、今後5年間の平均供給量は年間約95万平方メートルと予測されています。これは過去20年間の平均である年間約104万平方メートルを下回る水準です。

特に2027年は過去20年間で最も少ない供給量となる見通しで、計画発表時点から竣工時期が後ろ倒しとなるプロジェクトが相次いでいます。建築費高騰を背景に、事業性の観点からプロジェクト自体を見直す動きも顕在化しています。

竣工前からの高い内定率

供給不足を象徴するのが、新築ビルの高い内定率です。2024年竣工の大規模オフィスビルでは内定率が8割を超え、2025年・2026年竣工予定のビルでも約6〜7割に達しています。テナントが竣工前の段階で確保に動くほど、市場は逼迫しているのです。

需要拡大の背景と都心外への波及

企業の移転・拡張ニーズが急増

オフィス需要拡大の直接的な要因は、企業の業績拡大です。コロナ禍からの回復に加え、インバウンド需要の増加、株高による企業の財務体質改善などが重なり、積極的なオフィス投資が可能になっています。

特に目立つのが、グレードアップ移転と拡張移転です。企業がより高品質なオフィスに移転したり、従業員数の増加に対応してフロア面積を拡大したりする動きが活発化しています。人材獲得競争が激化する中、魅力的なオフィス環境を整備することが、採用戦略の一環として重要視されるようになっています。

非都心エリアへの需要波及

CBREのデータによると、東京の非都心エリアにおけるオフィス空室率は、2025年第1四半期に前年同期比1.8ポイント低下しました。都心エリアの低下幅(1.2ポイント)を上回るペースで空室が解消されています。

都心部での物件確保が困難になったことで、テナントが周辺エリアに目を向けるようになった結果です。横浜や福岡といった地方都市でも強い需要吸収が見られ、オフィス市場の回復は全国的な広がりを見せています。

注意点・展望

今後のリスク要因

東京オフィス市場は好調ですが、いくつかのリスク要因に注意が必要です。まず、世界的な景気減速の影響です。米国の関税政策や地政学リスクの高まりが、日本企業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、リモートワークの定着によるオフィス戦略の見直しも引き続き進行中です。完全な出社回帰ではなく、ハイブリッドワークを前提とした「質重視」のオフィス選択が主流になりつつあり、単純な面積拡大だけでなく、立地やスペックへのこだわりが強まっています。

2026年以降の市場見通し

JLLの分析では、東京オフィス市場は「空室枯渇時代」に突入しつつあるとされています。2026年にはまとまった新規供給が見込まれるものの、旺盛な需要を考慮すると、市場の逼迫感は容易に解消されない見通しです。賃料の上昇トレンドは当面継続すると予想されており、テナントにとっては早期の意思決定と柔軟な戦略が求められる局面が続きそうです。

まとめ

東京23区のオフィス市場は、需要が供給の約2倍に達するという歴史的な逼迫状態にあります。企業の業績拡大による移転・拡張需要の急増に対して、建築費高騰と人手不足が新規供給を抑制し、空室率は過去最低水準に低下しています。

賃料は18年ぶりの高値を更新し、今後もこの傾向は続く見通しです。オフィスの移転や拡張を検討する企業にとっては、早い段階での情報収集と意思決定が重要になっています。供給制約が続く中、柔軟なオフィス戦略の構築がこれまで以上に求められるでしょう。

参考資料:

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