がん5年生存率を初公表、前立腺92%・膵臓11%と大差

by nicoxz

はじめに

厚生労働省は2026年1月14日、2016年にがんと診断された患者の5年生存率を発表しました。国内でがん診断を受けたすべての人を網羅する「全国がん登録」に基づいて同省が生存率を公表するのは今回が初めてです。

発表されたデータでは、前立腺がんの5年生存率が92.1%と高い一方、膵臓がんは11.8%にとどまるなど、部位別で大きな差があることが明らかになりました。本記事では、がんの5年生存率の意味と部位別の特徴、そして早期発見の重要性について解説します。

全国がん登録に基づく5年生存率

部位別の生存率データ

2016年に新たにがんと診断された15歳以上の患者について、主な部位別の5年生存率は以下のとおりです。

生存率が高い部位:

  • 前立腺:92.1%
  • 乳房:88.0%
  • 子宮頸部:71.8%
  • 大腸(直腸・結腸):67.8%
  • 胃:64.0%

生存率が低い部位:

  • 肺:37.7%
  • 肝および肝内胆管:33.4%
  • 膵臓:11.8%

15歳以上99歳未満の成人では、前立腺、甲状腺、皮膚のがんが90%を上回った一方、肝臓は33.4%、膵臓は11.8%と低く、部位ごとに大きな差がありました。

小児がんの生存率

15歳未満の小児がんについても5年生存率が公表されました。小児の全がん5年生存率は82.4%でした。

小児(15歳未満)の主な部位別5年生存率:

  • リンパ腫・リンパ網内系腫瘍:95.7%
  • 胚細胞性腫瘍・絨毛性腫瘍・性腺腫瘍:90.2%
  • 白血病・リンパ増殖性疾患・骨髄異形成疾患:82.2%
  • 神経芽腫・その他類縁疾患:78.5%
  • 中枢神経系・その他頭蓋内・脊髄腫瘍:60.8%

がん罹患者数の推移

厚労省は2022年と2023年のがん罹患者数も公表しました。2022年は99万930人、2023年は99万3,469人で、2020年に新型コロナウイルス流行の影響で一時減少したものの、ほぼ横ばいが続いています。

生存率に差が生じる理由

前立腺がんの生存率が高い理由

前立腺がんは5年生存率が92.1%と非常に高く、全がん種の中でもトップクラスです。ステージI〜III期では100%、ステージIV期でも63.4%と、他のがんと比較して予後が良好です。

高い生存率の主な理由として、まず進行が比較的緩やかであることが挙げられます。前立腺がんはゆっくり進行するケースが多く、早期に発見すれば治癒が可能です。

また、PSA検査の普及により早期発見が進んでいます。PSA検査は簡便な血液検査で、泌尿器科だけでなく、かかりつけ医や人間ドック、検診でも受けることができます。欧米の大規模研究ではPSA検査の実施による死亡率低下が報告されています。

さらに、手術技術の改善、放射線治療法の開発、ホルモン療法の最適化、ターゲットを絞った治療法や免疫療法などの出現が、生存率向上に寄与しています。ロボット支援手術のような最先端技術は、より精密で回復が早いという利点があります。

膵臓がんの生存率が低い理由

膵臓がんは5年生存率が11.8%と、主要ながんの中で最も低い水準です。膵臓がんの早期発見が難しいことが、低い生存率の主な原因です。

早期発見が困難な理由:

  1. 初期症状が現れにくい:膵臓がんは進行スピードが速いだけでなく、早期がんでは症状が現れにくいため発見が遅れやすいです。

  2. 臓器の位置:膵臓はお腹の奥深くに位置し、他の臓器や重要な血管、神経に囲まれているため、腫瘍が小さい段階では触診やエコー検査でも見つけにくいです。

  3. 検診体制の不備:膵臓がんの検診は確立されておらず、市区町村が推進する対策型がん検診に含まれていません。つまり、膵臓がんには早期発見のための検診機会がありません。

  4. 発見時の進行度:膵臓がん患者のうち、診断時にステージ4であるケースが約50%にのぼり、ステージ1で見つかる人はわずか6.3%というデータもあります。

膵臓がんの症状としては、膵頭部にがんが発生すると黄疸やビリルビン尿が出現し、皮膚や白目が黄色くなったり、尿の色が褐色になったりします。膵体尾部にがんが発生すると腹痛や背部痛を感じることがあります。また、糖尿病を発症した、または急に悪くなったということも膵臓がんの症状の一つとされています。

早期発見と検診の重要性

日本のがん検診受診率の現状

第4期がん対策推進基本計画では、がん検診の受診率を60%以上とする目標が掲げられています。しかし、厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2022年調査までに50%を超えているのは男性の肺がん検診だけで、いずれも目標の60%には大きく届いていません。

日本のがん検診受診率は国際的に見ても低い水準にあります。アメリカと比べると約40ポイントも下回っており、欧米の70〜80%に対し、日本は肺がんを除けば50%にも満たない状況です。

受診率向上への取り組み

厚生労働省は「がん対策推進企業アクション」として、企業等におけるがん検診の受診率向上やがん患者・経験者の就労支援対策等を推進しています。「がん検診受診率向上等がん対策の取組に関する厚生労働大臣表彰」を毎年実施し、啓発活動を行う者を表彰しています。

がん検診を受けない理由として最も多く挙げられるのは「たまたま受けていない」です。検診を受けてもらうためには、認知度を上げるだけでなく「きっかけ」を与えることが不可欠で、個別受診勧奨・再勧奨が有効とされています。

注意点と今後の展望

リスクファクターを持つ方への推奨

膵臓がんのハイリスク因子として知られているのは、喫煙、飲酒、肥満、糖尿病、膵嚢胞、慢性膵炎です。また、家族に膵臓がんの方がいる場合は発症率が高いことが明らかになっています。これらのリスクファクターがある方は、定期的に膵臓の検査を受けることが望ましいです。

前立腺がんについては、50歳以上の男性はPSA検査を定期的に受けることで、早期発見につなげることができます。

今後の医療の発展

将来的には、個々の患者の遺伝子情報や健康データをもとにしたパーソナライズドメディシンの進展が、さらなる生存率の向上に貢献することが期待されています。また、膵臓がんについても、血液や尿などを使用した早期発見マーカーの開発研究が進められています。

まとめ

厚生労働省が全国がん登録に基づく5年生存率を初めて公表し、前立腺がん92.1%、膵臓がん11.8%と部位別に大きな差があることが明らかになりました。前立腺がんはPSA検査の普及と治療技術の進歩により高い生存率を維持している一方、膵臓がんは早期発見の難しさから依然として厳しい状況が続いています。

日本のがん検診受診率は国際的に見ても低い水準にあり、早期発見・早期治療のためには受診率向上が課題です。定期的な検診を受けることが、がんの早期発見と生存率向上につながります。

参考資料:

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