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by nicoxz

コスコのホルムズ再開を読む 物流正常化はまだ遠い理由とリスク

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はじめに

2026年3月27日、中国海運大手COSCOの大型コンテナ船がホルムズ海峡の航行を再開したと報じられました。もっとも、このニュースは「海峡の物流が元通りになった」という意味ではありません。3月上旬から中旬にかけて、ホルムズ海峡では攻撃や封鎖リスクで商船の通航が激減し、世界の海運各社は予約停止や迂回を相次いで実施してきました。COSCOの再開は、完全正常化ではなく、限定的で選別的な物流再開のシグナルとみるべきです。この記事では、予約再開と実際の通航の違い、代替ルートの実態、世界貿易への影響を整理します。

COSCOは何を再開したのか

予約再開と「通常運航」は同じではない

まず押さえたいのは、COSCOが再開したのが何なのかです。Reutersが3月4日に伝えたところでは、COSCO Shipping Linesは中東情勢の悪化とホルムズ海峡の通航制限を理由に、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、イラク、クウェートなど向けの新規予約を停止しました。これは航路全体を止めたというより、新規貨物の引き受けを止め、安全評価と代替港の検討に入ったことを意味します。

その後、3月25日付のウォール・ストリート・ジャーナル報道では、COSCOがアジアと湾岸諸国の間のコンテナ予約を再開したと伝えられました。ただし同報道は、これがそのままホルムズ海峡の自由な通航再開を意味しないとしています。Caixinの報道も、COSCOがオマーンのソハールやUAEのコール・ファカーンといった海峡の外側の港へまず貨物を運び、そこから陸送やフィーダー船で最終目的地へつなぐ可能性を伝えています。つまり「予約再開」は、物流の受付を部分的に戻したという意味であり、危険海域を通常どおり直航しているという意味ではありません。

中国船の先行再開が示すもの

Caixinは3月11日、中国船籍のばら積み船が、封鎖状態になって以降で初めてホルムズ海峡を通過したと報じました。この時点で、COSCOの19,000TEU級コンテナ船2隻を含む大型船が湾内で足止めされている状況も伝えられています。ここから読み取れるのは、通航再開が一律ではなく、船種、船籍、積み荷、相手国との関係によって選別されていることです。

実際、英ガーディアンやWSJの報道では、イラン側が「非敵対的」な船舶に限って調整のうえ通航を認めるメッセージを出し、一部の船が北寄りのルートを使っているとされます。これは自由航行の回復というより、イランが実質的なゲートキーパーとして振る舞っている状態です。COSCOの再開は、この管理された通航枠の中で、中国系物流が先に動き始めた可能性を示します。

なぜ世界市場はCOSCOの動きを注視するのか

ホルムズ海峡はコンテナだけでなくエネルギーと肥料の要衝

ホルムズ海峡の重みは、コンテナ物流だけでは説明できません。米エネルギー情報局によると、2024年には同海峡を日量約2,000万バレルの石油が通過し、世界の石油消費の約2割に相当しました。UNCTADも2026年3月の分析で、ホルムズ海峡は世界の海上石油貿易のおよそ4分の1に加え、LNGや肥料の重要な輸送路だと指摘しています。ここが詰まると、エネルギー価格だけでなく、農業投入材や食品コストにも波及します。

実際の通航量も大きく落ち込みました。ジェトロがIMFのPortWatchを引用してまとめた3月4日付レポートでは、3月1日のホルムズ海峡通航隻数は26隻で、2019年以降の公表データで最低でした。2019年から2026年3月1日までの平均92.6隻、2025年平均95.7隻と比べると、落ち込みの大きさがわかります。S&P Globalは3月12日の通航が1隻だったと伝え、project44はこの混乱で海上貨物の迂回が平均360%増えたと分析しました。

COSCO再開は「正常化」ではなく「分岐」の始まりかもしれない

ここでCOSCOの動きが重要になるのは、世界最大級の中国国有海運が、どの条件なら再開できると判断したかが他社の参考指標になるからです。ただし、その意味を過大評価すべきではありません。WSJは、COSCOの原油・石油製品輸送子会社はなお安全評価を続けていると報じています。コンテナ貨物は代替港や陸送である程度しのげても、原油やLNGはそう簡単にはいきません。

さらに、米運輸省MARADは現在も、ホルムズ海峡やペルシャ湾でイランによるミサイル、無人機、小型艇を使った攻撃リスクが高いと警告しています。保険も完全には戻っておらず、Caixinは3月7日の時点で、戦争危険保険が船価の1%程度で7日ごと更新という高コストで再開され始めたと報じました。つまり、COSCOの再開は「海峡の安全が戻った」からではなく、「高コストと高リスクを織り込んだ限定運行が成り立つ局面に入った」ことを意味します。

注意点・展望

このニュースで最も誤解しやすいのは、予約再開、寄港再開、海峡の完全再開を同一視してしまうことです。現時点では、コンテナ貨物の一部が代替港経由で動き始めた段階であり、エネルギー輸送まで含めた全面正常化には距離があります。特に、イランが通航の可否を事実上選別しているなら、物流は「戻る」のではなく「分断されたまま再編される」可能性があります。

今後の焦点は3つです。第一に、COSCO以外の大手船社が同様の再開に動くか。第二に、代替港と陸送を組み合わせた暫定ルートが採算に合うか。第三に、保険、護衛、外交調整が進み、自由航行に近い状態へ戻れるかです。海運は一社が動いたから即正常化する世界ではありません。ホルムズ海峡では当面、「通れる船だけが高コストで通る」状態が続くとみるのが現実的です。

まとめ

2026年3月27日のCOSCO再開報道は、ホルムズ海峡の物流に小さな変化が出始めたことを示しています。しかし実態は、通常運航への復帰ではなく、代替港や選別通航を組み合わせた限定再開です。ホルムズ海峡は石油、LNG、肥料、コンテナ物流が重なる要衝であり、混乱の影響は中東にとどまりません。COSCOの一歩は重要ですが、それは正常化の到来というより、地政学リスクの下で海運ネットワークが新しい形に組み替えられ始めた兆候として読むべきです。

参考資料:

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