政投銀系と大和証券が国内最大級の航空機ファンド設立へ
はじめに
日本政策投資銀行(DBJ)系の投資ファンドであるマーキュリアホールディングスと大和証券グループ本社が、欧州系リース会社と組んで国内最大級となる1500億円規模の航空機投資ファンドを設立することが明らかになりました。
航空機リース市場は世界的に拡大を続けており、中長期的に安定した需要が見込めるアセットクラスとして注目されています。年金基金などの機関投資家向けにファンドを通じた投資機会を提供するほか、個人投資家への販売も検討されています。本記事では、航空機投資ファンドの概要と、日本における航空機リース市場の動向について解説します。
ファンドの概要と運用体制
1500億円規模の国内最大級ファンド
今回設立されるファンドは、マーキュリアホールディングスとアイルランドの航空機リース会社エアボーン・キャピタルが運用を担います。2026年春頃までにファンドの組成を完了する予定で、国内最大級の航空機投資ファンドとなります。
航空機投資は、航空機というドル建て資産への投資機会を提供するものです。航空旅客数の増加を背景に、安定的かつ外貨建てで投資家が利益を確保できる特徴があります。リース期間終了後の航空機転売市場での価格も安定しており、機体整備制度が整っていることから価値の毀損が生じにくいとされています。
エアボーン・キャピタルとの連携
エアボーン・キャピタル(Airborne Capital Limited)は、アイルランドを拠点とする航空機アセットマネジメント専門会社です。グローバルで約60機の航空機を管理するほか、航空機関連アドバイザリーサービスなどで多くの実績を持っています。
マーキュリアホールディングスは戦略パートナーとしてエアボーン・キャピタルとタッグを組み、安定したリターンを狙った機材選別やリース先航空会社のクレジットを重視した投資を実行してきました。両社の合弁会社であるマーキュリアエアボーンキャピタルを通じて、日本の投資家向けに航空機ファイナンス事業を展開しています。
大和証券グループの参入
大和証券グループ本社は2024年11月、エアボーン・キャピタルと航空機リース分野における資本業務提携に合意しました。エアボーン傘下の日本法人に50%出資し、持分法適用会社としています。合弁会社「大和エアボーン株式会社」を通じて、富裕層や機関投資家向けに航空機リース商品を提供していく方針です。
今回のファンド設立は、マーキュリアホールディングスと大和証券グループが共同で機関投資家向けの大規模な投資機会を創出するものであり、日本の航空機投資市場における新たな展開といえます。
航空機リース市場の現状
世界市場の拡大
航空機リース市場は急速に拡大しています。2023年の市場規模は約1,728億8,000万米ドルで、2032年には約4,016億7,000万米ドルに達する見込みです。年平均成長率は11.1%と予測されており、成長著しい分野として注目されています。
世界では約2.7万機の旅客機が運航しており、その約半数が「リース機」です。1970年にはリース機の割合は3%程度でしたが、1990年には19%、2000年には27%、2020年には45%まで増加しました。航空会社にとって、リースは初期投資を抑えながら機材を確保できる有効な手段となっています。
日系リース会社の躍進
航空機リース業界では、日系企業の存在感が高まっています。三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は、Goshawk Management Limitedの買収により世界第2位の地位を確立しました。住友商事とSMBC、SMFLが共同で設立したSMBC Aviation Capitalは、保有機数約700機を誇る世界有数の航空機リース会社となっています。
オリックスも航空機リース事業を強化しており、1,500億円以上を投資して保有・管理機数を倍増させる方針です。同社が取引する投資家は国内に150社以上おり、「安定収入が得られる」「資産価値が安定的」「機体売却によるキャピタルゲインが期待できる」と高い人気を得ています。
機関投資家のオルタナティブ投資シフト
年金基金の運用環境
日本の年金制度の保有資産は約480兆円(約3兆3,000億米ドル)といわれています。世界最大の公的年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、運用資産残高223兆円を誇り、オルタナティブ投資への配分比率上限を5%(約750億米ドル)としています。
GPIFは長期にわたり安定的な収入が見込める案件に投資しており、風力発電施設などのインフラストラクチャーや物流施設、オフィスなどの不動産を中心に運用しています。航空機リースも、安定したキャッシュフローが期待できるオルタナティブ投資の一つとして注目されています。
オルタナティブ投資の魅力
オルタナティブ投資とは、株式や債券など伝統的な金融資産に代わる投資対象への投資です。ヘッジファンドやプライベート・エクイティのほか、金や石油などのコモディティ、不動産や航空機などの実物資産が該当します。
一般に流動性には欠けるものの、他資産との相関の低さやハイリターンが期待できる特徴があります。国内金利の上昇環境下で、地域金融機関においても伝統資産と相関が低く相応のリターンが期待できるプライベートアセットへの関心が高まっています。
投資家にとってのメリットと注意点
航空機投資の魅力
航空機リース投資には複数の魅力があります。まず、航空旅客数の長期的な増加トレンドを背景に、安定したリース収入が期待できます。2022年以降、ワクチンの普及や経済回復を背景に航空需要が急回復しており、特にレジャー需要とアジア地域での旅行再開が市場を牽引しています。
また、ドル建て資産であることから、円資産への集中リスクを分散できます。30年間日本経済が停滞する中でも、航空機リース投資家は比較的安定的に外貨建てで利益を確保してきたとされています。
注意すべきリスク
一方で、航空業界特有のリスクにも注意が必要です。新型コロナウイルスの感染拡大時には航空需要が大幅に落ち込み、リース会社や航空会社の経営に影響が出ました。地政学的リスクや原油価格の変動、為替変動なども投資成績に影響を与える可能性があります。
機関投資家にとっては、流動性の低さも考慮すべき点です。航空機リースは長期投資が前提となるため、短期での資金化が難しい場合があります。投資判断にあたっては、リスクとリターンのバランスを十分に検討する必要があります。
まとめ
日本政策投資銀行系のマーキュリアホールディングスと大和証券グループが、アイルランドのエアボーン・キャピタルと組んで国内最大級となる1500億円規模の航空機投資ファンドを設立します。航空機リース市場は世界的に拡大を続けており、安定したキャッシュフローが期待できるオルタナティブ投資として機関投資家の注目を集めています。
日本の年金基金や金融機関もオルタナティブ投資へのシフトを進めており、今回のファンド設立は新たな投資機会を提供するものです。航空業界の回復基調を背景に、航空機投資への関心は今後も高まっていくと予想されます。
参考資料:
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