欧州株が急騰、米関税違憲判決で高級ブランド・自動車に買い
はじめに
2026年2月20日、米連邦最高裁判所がトランプ政権による一連の関税を違憲と判断したことを受け、欧州株式市場が急騰しました。特に、米国市場を主要な輸出先とする高級ブランドやドイツ自動車メーカーの株価が大幅に上昇しています。
欧州の株式市場は取引時間中に判決のニュースが伝わると上昇が加速し、主要株価指数がそろって前日比プラスで取引を終えました。この記事では、判決の概要と欧州市場への影響、そして今後の見通しについて詳しく解説します。
最高裁判決の概要と市場の即時反応
6対3で違憲判断
米連邦最高裁はロバーツ長官が執筆した多数意見において、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に課した関税について、大統領にはその権限がないとする判決を下しました。判決は6対3で、トーマス、アリート、カバノーの3判事が反対意見を述べています。
ロバーツ長官は「議会が関税を課す権限を付与する際には、明確かつ慎重な制約を伴って行う。今回はそのいずれもなされていない」と指摘しました。米国憲法では関税を課す権限を連邦議会に与えており、大統領が独断で広範な関税を課すことは認められないという判断です。
欧州市場の反応
判決のニュースが伝わると、欧州市場では即座に買いが広がりました。汎欧州Stoxx 600指数は一時1.1%上昇し、最終的には前日比0.8%高で取引を終えています。すべての主要市場と大半のセクターがプラス圏で推移しました。
特に注目されたのは、関税の影響を大きく受けてきた高級品セクターと自動車セクターの反発です。これらの銘柄は、トランプ政権の関税政策発表以降、大幅に売り込まれていた経緯があります。
高級ブランドと自動車セクターの急騰
LVMHやエルメスなど高級品株が上昇
欧州の高級ブランド各社は、米国市場を重要な収益源としています。トランプ関税の影響で米国向け輸出コストが増大し、株価は長期にわたり圧迫されていました。判決を受けて、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)、エルメス・インターナショナル、イタリアの高級アウターウェアブランドであるモンクレールなどの株価がそろって上昇しました。
高級品セクターの回復は、関税撤廃による米国市場での価格競争力回復への期待を反映しています。これまで関税分を価格に転嫁するか、利益率を削るかの選択を迫られていたブランド各社にとって、大きな追い風となります。
ドイツ自動車メーカーも恩恵
欧州の自動車セクターは、トランプ関税の最大の被害者の一つでした。特にドイツのBMW、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツの3社は、米国向け輸出に対する高関税により業績への打撃が懸念されていました。
2月20日の取引では、欧州自動車株は1.1%上昇しました。ドイツ自動車産業にとって米国は最大級の輸出市場であり、関税の違憲判断は直接的な恩恵をもたらします。これまでIEEPAに基づく関税が課されていた分が撤廃される可能性が高いためです。
ただし、鉄鋼・アルミニウムに対するセクション232に基づく関税や、自動車に対する既存の15%関税など、異なる法的根拠に基づく関税は今回の判決の対象外であり、引き続き有効です。
1,750億ドルの還付問題と今後の展開
徴収済み関税の行方
今回の判決で最も注目されているのが、すでに徴収済みの関税の還付問題です。ペンシルベニア大学ウォートンスクールの予算モデルによると、IEEPA関税として徴収された金額は1,750億ドル(約19兆円)以上に達します。2025年12月時点で、政府は1,300億ドル以上の関税収入を得ていました。
ただし、判決では還付について明確な判断を示していません。カバノー判事が反対意見の中で「本判決は、政府が輸入業者から徴収した数十億ドルを返還すべきかどうか、またその方法について何も述べていない」と指摘した通り、還付の実現には今後さらなる法的手続きが必要です。
輸入業者は通常、商品が「清算」されてから180日以内に米国税関・国境警備局に異議を申し立て、還付を請求できます。この手続きが大規模に進む可能性があり、米国の財政に大きな影響を与えることが予想されます。
トランプ政権の対応策
トランプ大統領は判決を「恥ずべきこと」と批判し、「バックアッププラン」があると主張しています。政権は別の法的根拠を活用して関税政策を維持する方針を示しており、具体的には以下の手段が検討されています。
- セクション232(1962年通商拡大法):国家安全保障を理由とした関税。鉄鋼やアルミニウムへの関税はすでにこの法律に基づいており、今回の判決の影響を受けません。
- セクション301(1974年通商法):不公正な貿易慣行に対する調査と関税。ただし、新たな調査の開始から関税発動までには通常数カ月以上を要します。
- セクション122:貿易収支の不均衡に対し最大15%の関税を150日間課すことが可能ですが、過去に使用された前例はありません。
注意点・展望
欧州市場の上昇は歓迎すべき動きですが、楽観視しすぎるのは早計です。トランプ政権が代替的な法的手段で関税を再導入する可能性は十分にあります。特にセクション301に基づく新たな調査が開始されれば、数カ月後には新たな関税が課される可能性があります。
また、EUも今回の判決を受けて対応を検討中であり、米EU間の貿易交渉が新たな局面を迎えることになります。EU報道官は「判決の影響を精査している」と述べており、今後の通商政策の方向性に注目が集まっています。
投資家にとっては、短期的な株価上昇に飛びつくのではなく、今後の政策動向を慎重に見極めることが重要です。特に自動車セクターでは、セクション232に基づく関税が継続する可能性があるため、完全な関税リスク解消とは言えません。
まとめ
米最高裁によるトランプ関税の違憲判決は、欧州株式市場に即座のプラス効果をもたらしました。LVMHやエルメスなどの高級ブランド、BMW・フォルクスワーゲンなどのドイツ自動車メーカーが特に恩恵を受けています。Stoxx 600は0.8%上昇し、関税リスクの後退を市場が歓迎した形です。
しかし、1,750億ドルの還付問題やトランプ政権の対抗措置など、今後の展開は不透明です。欧州の輸出企業にとっては、関税政策の行方を注視しながら、柔軟な事業戦略を維持することが求められます。
参考資料:
- European Stocks Hit Record as Supreme Court Strikes Down Tariffs - Bloomberg
- European stocks close higher after U.S. Supreme Court strikes down Trump’s tariffs - CNBC
- European auto stocks jump after Supreme Court tariff ruling - MarketScreener
- Supreme Court slaps down $175 billion worth of Trump tariffs as unconstitutional - Fortune
- US, European stocks rise after supreme court strikes down Trump tariffs - The Irish Times
- Sections 122 and 301: Trump’s alternate tariff tools after Supreme Court ruling - The Hill
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