トランプ関税「より強力に」一般教書演説の全容
はじめに
2026年2月24日夜(日本時間25日午前)、トランプ米大統領は連邦議会で一般教書演説を行いました。就任2期目の実績を列挙する中で、最大の注目点となったのが通商政策に関する発言です。
わずか4日前の2月20日、連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税を違憲と判断したばかりでした。この判決にもかかわらず、トランプ大統領は「以前より強力な解決策になる」と代替措置への強い意欲を示しています。
本記事では、一般教書演説の通商政策に関する発言内容と最高裁判決の意味、そして今後の関税政策の行方について解説します。
最高裁が下したIEEPA関税違憲判決
「Learning Resources Inc. v. Trump」判決の内容
2026年2月20日、米連邦最高裁判所は6対3の判決で、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づくトランプ大統領の関税賦課を違憲と判断しました。ロバーツ首席判事が多数意見を執筆し、ソトマイヨール、ケーガン、ゴーサッチ、バレット、ジャクソンの各判事が賛同しています。
ロバーツ首席判事は判決文で「IEEPAの中で16語を隔てて配置された『規制する』と『輸入』という2つの単語だけを根拠に、大統領はあらゆる国からあらゆる製品に、あらゆる税率で、あらゆる期間にわたって関税を課す独立した権限を主張している。これらの単語にそのような重みを持たせることはできない」と述べました。つまり、IEEPAには関税や関税率に関する明示的な言及がなく、大統領に無制限の関税権限を与えるものではないという判断です。
判決がもたらす影響
この判決により、トランプ政権が2025年以降に導入した広範な相互関税の多くが法的根拠を失いました。ただし、判決はIEEPAに基づく関税のみを対象としており、他の法的根拠に基づく関税措置には直接影響しません。通商拡大法232条(国家安全保障関税)や通商法301条(不公正貿易慣行への対抗関税)に基づく鉄鋼・自動車・中国製品への関税は引き続き有効です。
一般教書演説で語られた関税政策
「以前より強力な解決策」の真意
トランプ大統領は一般教書演説で、最高裁判決を「非常に残念な判決だった」と批判しつつも、関税政策を「我が国の経済回復の主な要因の一つ」と評価しました。そのうえで、代替措置が「以前より強力な解決策になる」と宣言し、「議会の承認は必要ない」と述べています。
この発言は、最高裁判決に真っ向から対抗する姿勢を示すものです。大統領は演説の中で、各国が既存の貿易合意の維持を望んでいると主張し、新たな法的枠組みのもとで関税政策を継続する意向を明確にしました。
代替措置の具体的内容
最高裁判決を受けて、トランプ政権はすでに複数の代替法的根拠への移行を開始しています。
まず、1974年通商法122条に基づき、即座に全世界の貿易相手国に対して10%のベースライン関税を発動しました。この税率はその翌日に15%へ引き上げられています。ただし、122条に基づく関税には150日間の期限があり、延長には議会の承認が必要です。
さらに、通商法301条に基づく調査の拡大や、通商拡大法232条(国家安全保障を理由とする関税)の活用も進める方針です。これらの法的根拠はIEEPAと異なり、最高裁判決の影響を受けません。
演説のもう一つの注目点:中国への沈黙
異例の「言及なし」
今回の演説で注目されたのは、中国との関係にほとんど触れなかった点です。トランプ大統領は3月末からの中国訪問を控えているとされ、この時期に中国を刺激する発言を避けた可能性があります。
これまでトランプ大統領は関税政策において中国を最大のターゲットとしてきました。中国製品への追加関税は通商法301条を根拠としており、最高裁判決の直接的な影響を受けないため、あえて一般教書演説の場で言及する必要がなかったとの見方もあります。
今後の米中通商交渉
3月末の中国訪問は、新たな関税枠組みのもとでの交渉が焦点になると見られています。IEEPAに基づく高率の相互関税が使えなくなった中で、トランプ政権がどのような交渉カードを切るのかが注目されます。
注意点・展望
法的な不確実性は続く
代替措置として用いられている122条関税には150日間の時限があり、2026年夏以降の取り扱いが焦点になります。議会が延長を承認しなければ自動的に失効するため、政治的な駆け引きが激しくなる見通しです。
また、代替関税の合法性についても新たな法的挑戦が起こる可能性があります。ローファーメディアなどの法律専門メディアでは、「フォールバック関税」の合法性を疑問視する声もあります。
市場と経済への影響
関税政策の法的不確実性は、企業のサプライチェーン戦略に大きな影響を与えています。税率や適用範囲が頻繁に変わる状況は、輸入業者にとって計画の立てにくい環境を生み出しています。Tax Foundationの分析によると、232条関税だけでも今後10年間で約6,350億ドルの税収が見込まれる一方、2026年に米国の世帯あたり平均約400ドルのコスト増をもたらすとされています。
まとめ
トランプ大統領の2026年一般教書演説は、最高裁によるIEEPA関税違憲判決という前代未聞の状況下で行われました。大統領は判決を批判しつつも、代替法的根拠を用いた「より強力な」関税措置を宣言し、通商政策の継続姿勢を鮮明にしています。
122条、301条、232条など複数の法的枠組みを組み合わせた新たな関税体制がどこまで機能するのか、そして150日の期限到来後にどう展開するのかが、今後の焦点です。日本を含む各国の企業や投資家は、引き続き米国の通商政策の動向を注視する必要があります。
参考資料:
- トランプ大統領の一般教書演説:看板政策の関税で強気の発言 - 野村総合研究所
- トランプ米大統領の一般教書演説、政権2期目の実績を列挙 - JETRO
- Supreme Court Restricts Presidential Tariff Authority Under IEEPA - Brownstein
- Trump insists trade deals safe after Supreme Court ruling - CNBC
- Supreme Court Trump Tariffs Ruling: Analysis - Tax Foundation
- The Supreme Court Clipped Trump’s Tariff Powers - CFR
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