生成AIの著作権問題、日本でも訴訟続発でクリエイター保護が焦点
はじめに
生成AIと著作権をめぐる問題が世界中で激化しています。2025年、日本でも読売新聞社、朝日新聞社、日本経済新聞社が相次いで生成AI企業を提訴。著作権侵害と不正競争行為を理由に、合計66億円を超える損害賠償を求める事態となりました。
一方、米国では生成AIの学習データに著作物を利用することについて、初めて著作権侵害を認める判決が出ました。「フェアユース(公正利用)」をめぐる法的判断が積み重なりつつあります。
本記事では、日本における生成AI著作権問題の現状、海外の判例動向、そしてクリエイターが取るべき対策について解説します。
日本国内の訴訟動向
新聞3社がPerplexity AIを提訴
2025年8月、読売新聞社が米国の生成AI検索・要約サービス企業Perplexity AIを相手取り、約22億円の損害賠償を求める訴訟を提起しました。
続いて、朝日新聞社と日本経済新聞社も同様に、著作権侵害および不正競争行為を理由に44億円の損害賠償を請求しています。
新聞記事を無断で学習データとして利用し、要約して提供する行為が著作権侵害にあたるとの主張です。
OpenAI「Sora」への対応
米オープンAIが2025年9月30日に公開した動画生成AI「Sora(ソラ)2」に対し、アニメや漫画に関わる日本の権利者団体らが改善を要求しています。
日本のアニメ・漫画作品が無断で学習データに使用されている可能性があるとして、対応を求める動きです。
日本の著作権法の解釈
第30条の4の規定
日本の著作権法第30条の4は、情報解析のための複製等を認めています。AIの学習は、人間のように作品を「楽しむ」ためではなく、情報解析やパターンの抽出を目的としているため、原則として著作権者の許可なく利用できるとされています。
ただし、「著作権者の利益を不当に害する場合」は例外とする但し書きがあります。
侵害リスクが高まるケース
以下のケースでは著作権侵害のリスクが高まります。
既存の著作物の類似物を生成させることを目的としたAI学習を行う場合、特定のクリエイターの作品である少量の著作物のみを学習データとした場合は、侵害とみなされる可能性があります。
また、AI学習用のデータセットとして有償で提供されているデータベース著作物を無許諾で複製する場合や、海賊版サイト等の違法にアップロードされた著作物をAI学習に利用する場合も同様です。
海外の判例動向
米国初の侵害認定判決
2025年2月、米デラウェアの連邦地裁は、AIの学習データとして著作物を利用することの是非に関する初の判断をくだしました。Thomson Reuters v. Ross Intelligence訴訟において、フェアユース(公正利用)を否定し、著作権侵害を認めました。
この判決は、今後の訴訟に大きな影響を与える先例となります。
Midjourney訴訟の展開
画像生成AIのMidjourneyについては、2023年の個人クリエイターによる初回訴訟は「生成物に原告作品との類似性がない」として棄却されました。
しかし2025年6月には、ディズニー、ユニバーサル、ワーナーブラザースなど大手企業が、自社キャラクターと酷似した生成物の証拠を提示して提訴しています。大手企業による訴訟は、より大きなインパクトを持つ可能性があります。
AI生成物の著作権
2025年2月、米国著作権局は報告書を公表し、重要な見解を示しました。AI単独で生成された作品には著作権が認められないこと、人間の創作的関与があれば著作権保護の対象となり得ること、特に詳細で創造的なプロンプトは著作権保護の対象になる可能性があることが示されました。
クリエイターの対策
オプトアウトの活用
クリエイター側では、AI開発企業に対して学習データからの除外を申請する「オプトアウト」の仕組みが整備されつつあります。
主要なAI企業は、ウェブサイト運営者が robots.txt を通じて学習からの除外を指定できる仕組みを導入しています。
電子透かし技術
自身の作品にAIによる学習を困難にする電子透かし技術を導入する動きも活発です。
Glaze(グレイズ)やMistなどのツールは、画像に人間の目には見えないノイズを加え、AIの学習を妨げる効果があるとされています。
契約による保護
作品の利用許諾契約において、AI学習への利用を明示的に禁止する条項を入れる動きも広がっています。
今後の展望
ライセンス契約の普及
米国著作権局の報告書は、フェアユースに該当しない可能性のある利用に対しては、AI訓練用のライセンス契約などに期待しています。
学習用のライセンス契約などの実務が広がらない場合は、拡大集中許諾のようなアプローチを検討すべきと結論しています。
国際的な規制の整備
EUのAI規制法(AI Act)が段階的に施行される中、著作権関連の規制も強化される見通しです。日本でも、文化庁や経済産業省がガイドラインの整備を進めています。
権利侵害は「現在も止まらず」
日本経済新聞の報道によると、生成AIによる権利侵害は「現在も止まらず」、訴訟と並行して新たな仕組みの模索が続いています。
クリエイターの権利保護と、AI技術の発展のバランスをどう取るかが、今後の大きな課題です。
まとめ
生成AIと著作権をめぐる問題が世界で激化しています。日本では読売・朝日・日経がAI企業を提訴し、合計66億円超の損害賠償を求めています。
米国では2025年2月、AI学習への著作物利用について初めて侵害を認める判決が出ました。一方、AI生成物については、人間の創作的関与がなければ著作権は認められないとの見解も示されています。
クリエイターはオプトアウトや電子透かし技術で自衛する動きを強めています。ライセンス契約の普及や規制整備が進む中、権利保護と技術発展のバランスが問われています。
参考資料:
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