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by nicoxz

北海道で異例の猛暑、タマネギ・ジャガイモ不作で価格高騰

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はじめに

「夏も涼しい北海道」という常識が、今や過去のものになりつつあります。2025年夏、北海道は記録的な猛暑に見舞われ、主要21地点で夏の平均気温が史上最高を記録しました。

この異常気象の影響は、北海道の基幹産業である農業に深刻な打撃を与えています。タマネギやジャガイモの収穫量が大きく減少し、2025年12月の卸値は同月として最高値を記録しました。砂糖原料のビート(てん菜)も糖分が低下するなど、暑さの影響は広範囲に及んでいます。

本記事では、北海道の農産物不作の現状と、今後の対策について詳しく解説します。

2025年夏、北海道を襲った記録的猛暑

観測史上最高レベルの暑さ

2025年7月23日、北海道で驚異的な気温が観測されました。網走地方の美幌では38.2度を記録し、翌24日には北見で39.0度に達しました。これは北海道における観測史上最高気温(2019年5月の佐呂間町39.5度)に迫る数値です。

札幌でも7月24日に35.3度を観測し、7月としては1877年からの統計史上4番目に高い気温となりました。7月の札幌では15日間も真夏日(30度以上)となり、これは統計史上2番目に多い記録です。

全道で猛暑日が連続

7月7日には、北海道のアメダス観測点174か所のうち115か所で真夏日となり、そのうち17か所で35度以上の猛暑日を記録しました。十勝地方の帯広では36.8度を観測し、2日連続で猛暑日となる異例の事態となりました。

この猛暑は一時的なものではなく、7月いっぱい、そして8月以降も平年よりかなり高い気温が続きました。夏全体を通じて、全道の猛暑日は12日に上り、札幌では真夏日が計35日を観測し、101年ぶりに記録を更新しました。

猛暑の原因

大陸で暖められた熱波が、太平洋高気圧の縁を回り込んで北海道に流れ込みました。上空1500メートル付近には24度という危険な暖気が入り、さらに山越えのフェーン現象も加わって、内陸部では観測史上初の40度に達する可能性もありました。

タマネギ価格が平年の2倍に高騰

6割のシェアを持つ北海道産が不作

日本国内で消費されるタマネギの約6割は北海道産です。その北海道で6月以降に猛暑と少雨が続き、生育不良が発生しました。

農林水産省の調査によると、タマネギの小売価格は以下のように推移しました。

  • 9月9日時点:1キログラム379円(平年比25%高)
  • 9月17日時点:1キログラム383円(平年比27%高)
  • 10月21日時点:1キログラム445円(平年比約1.6倍)

卸売価格では、10月20日時点で平年の2.1倍となる1キロ184円を記録しました。

小玉傾向で収量減少

北海道のJAは「6、7月の肥大期に雨が少なく、その後の高温も生育に影響した」と説明しています。小玉傾向により収量は平年より1〜2割少なくなりました。

地域によって状況は異なり、北見地区では夏季の干ばつが影響して小玉傾向が顕著になり、十勝地区では一部で大雨による湿害も報告されています。

流通への影響

高値の長期化を受け、スーパーなどからの引き合いは必要最低限の仕入れ分にとどまっています。関東のあるスーパーは「例年なら行う北海道フェアなどの特売を今年は打っていない」と話しており、消費者への影響も広がっています。

ジャガイモも7割高、カレー用野菜が軒並み高騰

日本一の生産地で収量2割減

日本一の生産量を誇る北海道のジャガイモも、猛暑の影響を大きく受けました。ジャガイモは涼しい気候を好む作物であり、高温は生育に悪影響を及ぼします。

10月20日時点のジャガイモ卸売価格は、平年比72%高の1キロ193円を記録しました。気温低下による煮炊き需要の高まりもあり、価格は上昇傾向が続いています。

初期生育の遅れが影響

道内のJAは「発芽後の高温で初期の生育が進まず、そのまま生育が進行したことが小玉傾向の要因の一つ」と分析しています。結果として、収量は平年比2割減となりました。

家庭の食卓への影響

タマネギとジャガイモはカレーやシチュー、肉じゃがなど日本の家庭料理に欠かせない食材です。両方の価格が高騰したことで、家計への影響は小さくありません。

東京の青果卸は「今後も絶対量不足は続く。じわじわと価格は上がっていく」と見通しており、輸入品、特に中国産の需要が高まる可能性も指摘されています。

ビート(てん菜)も糖分低下の影響

国産砂糖の8割を支える作物

国内で自給されている砂糖のうち、約8割は北海道のみで栽培されるビート(てん菜)から作られています。ビートは寒さに強い作物で、昼夜の寒暖差によって糖度を高めていきます。

高温で糖分が低下

ビートの糖分は栽培年の気温に大きく影響されます。7〜10月の最低気温が低い年は糖分が高く、高い年は糖分が低くなるとされています。2025年の猛暑は、まさにこの糖分低下を招く条件でした。

また、ビートの大敵である褐斑病は高温・多湿の環境で発生しやすく、葉に斑点ができて枯れ落ち、収穫量の低下や糖分の減少につながります。2023年にも褐斑病の多発による低糖分の問題が発生しており、2025年も同様の影響が懸念されています。

気候変動への適応策

行政・研究機関の取り組み

北海道では気候変動への適応策が急ピッチで進められています。2025年5月には「令和7年度 地球温暖化に対応する技術開発・普及に関する検討会」が開催され、高温等に対する対策や営農技術対策について検討されました。

道総研では2025年から5年間の研究期間で、水稲、小麦、大豆、小豆、馬鈴しょ、てん菜、りんご、飼料用トウモロコシを対象に中期的な生育変化を予測し、それぞれの適応策を提示する取り組みを行っています。

品種改良と栽培技術の見直し

水稲では、高温登熟でタンパク値が上がり食味が低下する傾向が目立っています。「ななつぼし」「ふっくりんこ」「ゆめぴりか」などの品種改良を進めてきた北海道では、現在、気候変動に適応した高温耐性のある品種の開発に取り組んでいます。

ただし、本州の品種を単純に導入すればよいというものではありません。道外の品種は感光性が強く、穂の出るタイミングが遅いため、北海道では安定栽培が難しいのです。

生産者ができる対策

生産者レベルでできる対策としては、高温が気になるときに水田の水を掛け流しにして圃場の温度を下げることで、品質低下をある程度抑えられます。また、農林水産省の「強い農業づくり総合支援交付金」などを活用し、高温対策向け資材の導入支援を受けることも可能です。

気候変動がもたらす好影響も

冷害リスクの低下

気候変動は北海道農業にマイナス面だけでなく、プラス面ももたらしています。かつては水稲が4年に一度の割合で冷害に見舞われるといわれていましたが、その危険性は低くなりました。

新たな作物栽培の可能性

凍結に弱く特に道東での栽培が困難だったアルファルファの越冬が可能になり、栽培面積が拡大しています。十勝地方の輸出農産物として有名なナガイモも、秋の収穫だけでなく越冬させて春収穫することも可能になりました。

今後、本州の生産量が減少した場合、北海道が国内の需要を支える役割を担う可能性もあります。道北や道東で新たな野菜栽培ができるようになれば、農業の選択肢が広がるかもしれません。

まとめ

2025年夏の記録的猛暑により、北海道の農産物は深刻な不作に見舞われました。タマネギは平年比2倍、ジャガイモは7割高と、家計への影響は避けられません。

しかし、北海道では気候変動への適応策が着実に進められています。高温耐性品種の開発、栽培技術の見直し、支援制度の活用など、多角的なアプローチで課題に取り組んでいます。

消費者としては、価格高騰時には代替食材を活用する、旬の野菜を選ぶといった工夫が考えられます。気候変動は一朝一夕に解決する問題ではありませんが、生産者・行政・消費者が連携して対応していくことが重要です。

参考資料:

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