訪日外国人の最大の困りごとは「ゴミ箱がない」
はじめに
学研ホールディングス(HD)傘下の旅行ガイドブック大手「地球の歩き方」が、訪日旅行中の外国人の困りごとに関する調査結果を発表しました。日本旅行中に困ったことを複数回答で聞いたところ、「ゴミ箱の少なさ・場所のわかりにくさ」が86%で最多でした。
「公衆無線LAN環境」(80%)、「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」(62%)が続き、日本の受入環境にはまだ多くの課題が残っていることが浮き彫りになりました。
本記事では、調査の詳細とゴミ箱問題の背景、そして今後の改善に向けた動きについて解説します。
調査結果の概要
ゴミ箱問題が圧倒的1位
今回の調査は、地球の歩き方が運営する訪日旅行情報サイト「GOOD LUCK TRIP」を通じて実施されました。過去10年以内に日本を訪れた外国人を対象にインターネットで調査を行っています。
日本旅行中に困ったことの上位は以下の通りです。
- ゴミ箱の少なさ・場所のわかりにくさ(86%)
- 公衆無線LAN環境(80%)
- 多言語表示の少なさ・わかりにくさ(62%)
この結果は、観光庁が実施している「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」の結果とも整合しています。観光庁の調査でも「ゴミ箱の少なさ」は上位にランクインしており、長年にわたって指摘され続けている課題です。
Wi-Fiと多言語対応の根強い課題
公衆無線LAN(Wi-Fi)環境の不便さは、スマートフォンが旅行の必需品となった現在、以前にも増して深刻な問題です。地図アプリや翻訳アプリ、交通機関の検索など、旅行者がスマートフォンに依存する場面は多岐にわたります。
多言語表示については、大都市の主要駅や観光地では英語・中国語・韓国語の案内が増えてきましたが、地方の観光地や飲食店ではまだ不十分な状況が続いています。
なぜ日本にはゴミ箱がないのか
テロ対策という建前と実際の経緯
日本の公共空間からゴミ箱が消えた背景には複雑な経緯があります。一般的には、1995年の地下鉄サリン事件をきっかけにテロ対策として撤去されたと認識されています。しかし、実際の経緯はやや異なります。
地下鉄サリン事件では、サリンはゴミ箱ではなく車両内で散布されました。事件後に撤去されたゴミ箱は1997年には営団地下鉄(現・東京メトロ)で再設置されています。その後、2004年のマドリード列車爆破テロや2005年のロンドン同時爆破テロを受けて、再びテロ対策として撤去が進みました。
管理コストと分別の複雑さ
ゴミ箱が少ない現状は、テロ対策だけが理由ではありません。自治体にとって、公共のゴミ箱は設置・管理に多大なコストがかかります。不法投棄や分別ルール違反への対応、定期的な清掃・回収の人件費など、維持管理の負担が大きいのです。
日本のゴミの分別ルールが細かいことも、公共のゴミ箱を設置しにくい要因です。自治体ごとに分別方法が異なり、外国人旅行者にとってはさらにわかりにくい状況を生んでいます。
改善に向けた動き
スマートゴミ箱の導入
一部の自治体や観光地では、IoT技術を活用した「スマートゴミ箱」の導入が始まっています。内蔵センサーでゴミの量を検知し、満杯になると自動的に圧縮する機能を持つゴミ箱です。回収頻度を最適化できるため、管理コストの削減と利便性の向上を両立できます。
観光地を中心に、広告付きのスマートゴミ箱を設置する取り組みも広がっています。広告収入で管理費用を賄うモデルは、自治体の財政負担を軽減する有効な手段です。
観光庁の取り組み
観光庁は定期的に「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」を実施し、課題の把握と改善に取り組んでいます。2025年の調査では「困ったことはなかった」と回答した割合が増加傾向にあり、全体的な受入環境は改善しつつあります。
しかし、ゴミ箱の問題は構造的な課題であり、一朝一夕での解決は難しい状況です。自治体、観光事業者、住民の連携が不可欠です。
注意点・今後の展望
インバウンド6,000万人時代への備え
日本政府は訪日外国人旅行者数の目標として6,000万人を掲げています。2025年には訪日外国人数が過去最高を更新する勢いで推移しており、受入環境の整備は急務です。
ゴミ箱の問題は、日本の「清潔さ」という国際的に高い評価と表裏一体の関係にあります。街にゴミが落ちていないのは、各個人がゴミを持ち帰る文化が根付いているためですが、その前提を知らない外国人旅行者にとっては不便に映ります。
文化の違いをどう橋渡しするか
今後は、ゴミ箱の増設だけでなく、日本のゴミに関するルールや文化を旅行者にわかりやすく伝える取り組みも重要です。空港や観光案内所での情報提供、多言語でのゴミ分別ガイドの配布、旅行ガイドブックやアプリでの啓発など、複合的なアプローチが求められます。
まとめ
「地球の歩き方」の調査は、訪日外国人の困りごとの実態を改めて浮き彫りにしました。ゴミ箱の少なさは86%の訪日客が不便を感じている最大の課題であり、Wi-Fi環境や多言語対応と合わせて、早急な改善が求められています。
インバウンド需要が拡大する中、日本の「おもてなし」をハード面でも充実させることが、リピーター獲得と観光立国の実現に不可欠です。スマートゴミ箱の導入や多言語案内の充実など、テクノロジーを活用した解決策に注目が集まっています。
参考資料:
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