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by nicoxz

情報処理技術者試験が2027年度から大幅刷新へ

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はじめに

情報処理技術者試験が約15年ぶりに大きく変わろうとしています。経済産業省は2025年12月、現行の応用情報技術者試験と高度試験を「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」として3つの領域に再編する検討案を発表しました。

さらに、非エンジニア向けの新試験「データマネジメント試験(仮称)」も新設される予定です。これはITパスポート試験の次のステップとして位置づけられ、企業のDX推進を担う幅広い人材の育成を目指しています。

本記事では、2027年度から始まる情報処理技術者試験の大改革について、その背景、具体的な変更内容、そして受験者への影響を詳しく解説します。

改革の背景と目的

なぜ今、大改革が必要なのか

情報処理技術者試験は、ITエンジニアのスキルを客観的に評価する国家試験として長年活用されてきました。しかし、AI技術の急速な発展やDXの進展により、求められるITスキルの範囲が大きく変化しています。

従来の試験体系は、ネットワークスペシャリストやデータベーススペシャリストといった「職種」に基づいた区分が中心でした。しかし現代では、ITエンジニアに限らず、あらゆるビジネスパーソンがデジタル技術を活用する能力を求められています。

経済産業省は、従来の職種ベースの認定から、より実務的なスキルベースの評価体系への転換を図ることで、企業のDX推進を加速させる狙いがあります。

データ活用人材の不足という課題

多くの企業がAI活用やデータドリブン経営を推進しようとしていますが、「データが活用できる状態になっていない」という課題を抱えています。データの収集・整備・管理を担う人材が圧倒的に不足しているのです。

この課題を解決するため、非エンジニアでもデータマネジメントの基礎を学べる試験を新設し、組織全体のITリテラシー向上を図ることが今回の改革の重要なポイントです。

新試験体系の具体的な内容

プロフェッショナルデジタルスキル試験への再編

現行の応用情報技術者試験と9つの高度試験は、「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」として3つのスキル領域に再編されます。

1. システム領域 従来のネットワークスペシャリストやシステムアーキテクトの範囲を含む領域です。システムの設計・構築・運用に関する専門知識を問います。インフラエンジニアやバックエンドエンジニアを目指す方に適した試験となる見込みです。

2. データ・AI領域 従来のデータベーススペシャリストの範囲に加え、AI・機械学習関連の知識も含まれる領域です。データサイエンティストやAIエンジニアを目指す方向けの試験として位置づけられます。

3. マネジメント・監査領域 プロジェクトマネージャ、ITストラテジスト、システム監査技術者などの高度試験を統合した領域です。IT戦略の立案やプロジェクト管理、システム監査に関するスキルを評価します。

キャリアに合わせた柔軟な受験が可能に

この再編により、受験者は自分のキャリアパスに合わせて領域を選択できるようになります。「インフラエンジニアを目指すからまずシステム領域を取得する」といった戦略的な受験が可能です。

また、3つの領域すべてに合格した場合、「フルスタックエンジニア」として認定される制度も検討されています。幅広いスキルを持つIT人材の可視化につながる取り組みです。

試験形式の変更点

新試験では論述式問題(論文)の出題がなくなる予定です。試験レベルは「レベル4相当」とされ、現行の応用情報技術者試験以上、高度試験未満に位置づけられます。

なお、論述試験については2028年度以降に別途設置される可能性があり、より高度な能力を証明したい受験者向けのオプションとなる見込みです。

データマネジメント試験の新設

非エンジニア向けの新たな選択肢

「データマネジメント試験(仮称)」は、ITパスポート試験の次に受験すべき試験として新設されます。エンジニア以外のビジネスパーソンが、データを活用可能な状態に整備・管理するスキルを身につけることを目的としています。

試験で問われる内容

データマネジメント試験では、以下のようなスキルの習得が想定されています。

  • データの品質管理と整備手法
  • データガバナンスの基礎知識
  • データ活用のための基盤整備
  • プライバシーとセキュリティの基本

営業、マーケティング、人事、経理など、あらゆる部門でデータを扱う機会が増えている現代において、これらのスキルは非常に重要です。

2026年度からのCBT方式移行

試験方式の大きな変化

新試験体系への移行に先立ち、2026年度からは応用情報技術者試験と高度試験がCBT(Computer Based Testing)方式に移行します。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2025年8月にこの方針を発表しました。

CBT方式では、試験会場に設置されたパソコンを使って解答します。記述式や論述式の問題でも、文章の編集が容易になり、書き直しの手間が大幅に軽減されます。

受験機会の拡大

CBT方式への移行に伴い、試験日程も変更されます。従来は春期(4月)と秋期(10月)にそれぞれ1日のみの実施でしたが、一定期間内に複数日で実施される予定です。

受験者は自分の都合に合わせて受験日時と会場を選択できるようになります。仕事との両立が難しかった社会人にとって、受験のハードルが大きく下がることが期待されます。

科目名称の変更

CBT方式では受験時間帯が自由になるため、「午前試験」「午後試験」という名称は実態に合わなくなります。そこで、「午前試験」は「科目A試験」に、「午後試験」は「科目B試験」に名称が変更されます。

なお、従来の免除制度(高度試験の午前Ⅰ免除など)は、「科目A-1試験免除制度」として継続される予定です。

受験者への影響と対策

現行試験の受験機会は2026年度が最後

検討案が採用された場合、現行の応用情報技術者試験および高度試験は2026年度が最後となる可能性があります。特定の高度区分の資格取得を目指している方は、スケジュールを考慮した受験計画が必要です。

情報処理安全確保支援士は存続の見込み

情報処理安全確保支援士(SC)は、「情報処理の促進に関する法律」に基づく国家資格(登録制度)であり、他の試験区分とは法的性質が異なります。そのため、今回の再編の対象外となり、現行制度のまま存続する可能性が高いです。

セキュリティ分野でのキャリアを考えている方は、情報処理安全確保支援士の取得を引き続き検討してもよいでしょう。

基本情報技術者試験とITパスポートの位置づけ

基本情報技術者試験(FE)はエンジニアの基礎スキルを証明する試験として維持されますが、より実務的な内容への変更が予想されます。ITパスポート試験(IP)はAI時代の倫理やデータマネジメントの要素が強化される一方、詳細な開発知識は縮小される方向です。

まとめ

2027年度から始まる情報処理技術者試験の大改革は、日本のIT人材育成における大きな転換点となります。職種ベースからスキルベースへの移行、非エンジニア向け試験の新設、CBT方式による受験機会の拡大など、時代の変化に対応した包括的な見直しが行われます。

今後の正式発表に注目しつつ、自身のキャリアプランに合わせた受験戦略を検討することをお勧めします。2026年3月末に試験制度の改正案、2026年度夏頃に新試験の詳細が公表される予定ですので、最新情報を確認しながら準備を進めていきましょう。

参考資料:

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