日本株アクティブ投信がオルカン超え 中小型株で勝機
はじめに
全世界株投信「オルカン」への資金流入が続く中、日本株のアクティブ運用投信が存在感を高めています。QUICK投信分析評価サービスによると、2025年は日本株アクティブ投信の運用成績が本数ベースでインデックスファンドのリターンを上回るケースが増加しました。中小型株の再評価が追い風となり、個人投資家の価値観が変わればマネーの一部が日本株アクティブ投信に回り、優良企業の選別が株高を支える好循環が生まれる可能性があります。
オルカンとアクティブ投信の運用成績
オルカンの圧倒的人気
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称「オルカン」は、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスに連動する投資成果を目指すインデックスファンドです。設定来の騰落率は+192.25%という好成績を記録し、過去5年間のトータル騰落率は+146.92%、年率換算で約19〜20%という非常に高いパフォーマンスを示しています(2025年9月26日時点)。
2025年12月の投資信託市場では約1.6兆円の資金流入があり、年間では14兆円超の資金が流入しました。その多くがオルカンやS&P500インデックスファンドなど、低コストのパッシブ運用商品に集中しています。
アクティブ投信の巻き返し
一方で、2025年はNISAで人気のオルカンやS&P500インデックスファンドよりも、金(ゴールド)ファンドやAI(人工知能)関連株式ファンド、国内や新興国の株式ファンドなどが相対的に好成績を収めました。特に日本株のアクティブ投信(通貨選択型を除く)は、中小型株の再評価により運用成績を大きく伸ばしています。
日本経済新聞の報道によると、インデックスに「勝つ」アクティブ運用の日本株投信が増えつつあり、劣らぬ投資機会が国内にも存在する可能性が示されています。
中小型株が押し上げる要因
2025年は中小型成長株の飛躍の年
2025年はいよいよ中小型成長株の上昇が期待できる相場になると予想されています。中小型株は企業規模が小さい分だけ政策保有株の売りプレッシャーが小さく、創業者やその姻戚関係者が大株主であるケースも多いため、売り圧力が小さくなる要因となっています。
賃金上昇による内需の回復といったマクロ環境も追い風となり、内需の比率が大きい中小型株により強い利益成長が見込まれています。中小型成長企業の株価はこれまで大きく出遅れてきたことから割安に放置されている状況にあり、再評価の余地が大きいと考えられます。
大型株と中小型株の格差
2025年度上期は9月25日に日経平均株価が終値ベースで過去最高値を更新するなど、主力大型株が上昇のけん引役となりました。一方で、中小型株には金利上昇など逆風が続き、大型株に資金が集中する状況が続いていました。しかし、この格差が縮小し始めたことで、中小型株に投資するアクティブファンドのパフォーマンスが向上しています。
アクティブファンドの選別眼
中小型株を主な投資対象とするアクティブファンドであれば、時価総額が小さくても成長期待のある企業に投資することでハイリスクハイリターンの運用を目指すことができます。日経225をベンチマークとするインデックスファンドに投資した場合、既に規模が大きな企業へ投資しているため、小型株の成長の恩恵を受けることはできません。この違いが、2025年のアクティブファンドの優位性につながっています。
好成績のアクティブファンド事例
NISA投信グランプリ2025
「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025」では、日本中小型株部門で「カレラ 日本小型株式ファンド」が最優秀賞を受賞しました。割安な小型株に特化し、優良銘柄を選別する運用が評価されています。
中小型株ファンドのランクイン
2024年7月から2025年8月の期間で、中小型株ファンドのランクインが目立ち、「インベスコ 店頭・成長株オープン」が27.6%のリターンを記録するなど、好成績を上げました。2023年以降、日本株市場では大型株に資金が集中し、さらに金利上昇など中小型株には逆風が続く中、運用が難しい相場で優秀な実績を上げたファンドが選ばれています。
アクティビスト・中小型株型が好調
日本株投資信託では、アクティビスト・中小型株型が好調で、日経平均の伸びを超える成績を記録しています。企業の経営改善を促すアクティビスト戦略と、成長余地の大きい中小型株への投資を組み合わせることで、インデックスを上回るリターンを実現しています。
個人投資家の選択肢
パッシブ一辺倒からの転換
公募投資信託市場では、パッシブファンドへの資金流入が顕著で、個人投資家は一般的にパッシブファンドを選択する傾向があります。しかし、日本や新興国はインデックス型より成績のいいアクティブ型投信も多いとの専門家の見解が示されています。
オルカンやS&P500をベースとしつつ、値動きが異なる投信も併せて持つことで、資産全体のリスクを下げることもできるという提案がなされており、アクティブファンドへの分散投資が見直されています。
アクティブファンド選びのポイント
アクティブファンドの場合は「これから成長が見込める中小型株に投資したい」「配当を多く出している企業に投資したい」など様々なテーマや哲学で選ぶことができます。比較する期間や対象によって違いますが、インデックス・ファンドのパフォーマンスを上回った、言い換えれば「勝った」アクティブ・ファンドは存在します。
ただし、中小型株の投資でパフォーマンスがよかったファンドの資産規模が大きくなると、中小型株への投資だけではポートフォリオを保てなくなり、大型株を一部組み入れるなど方針が変わってしまう場合があるという注意点もあります。
コストと成績のバランス
アクティブファンドは一般的にインデックスファンドよりも信託報酬が高めに設定されています。コストを上回るリターンを継続的に上げられるかどうかが重要なポイントとなります。過去の運用実績、ファンドマネージャーの運用方針、ポートフォリオの構成などを総合的に評価する必要があります。
市場への影響と今後の展望
好循環の可能性
個人投資家の価値観が変わり、マネーの一部でも日本株のアクティブ投信に回れば、優良企業の選別が株高を支える好循環が生まれる可能性があります。アクティブファンドは企業調査を通じて優良企業を発掘し、投資することで企業価値向上に貢献します。これが株価上昇につながり、さらなる資金流入を呼ぶ循環が期待されます。
2025年度下期の見通し
2025年度下期には、中小型株への注目がさらに高まると予想されています。内需回復、賃金上昇、政策保有株の売り圧力減少などの追い風要因が継続する見込みです。アクティブファンドにとっては、銘柄選択力を発揮できる環境が続くと考えられます。
インデックスとアクティブの使い分け
専門家は、インデックスファンドだけでなく、アクティブファンドを組み合わせる投資戦略を提案しています。市場全体の成長を享受するインデックス投資をコアとしながら、中小型株や特定テーマに投資するアクティブファンドをサテライトとして活用することで、リスク分散とリターン向上の両立が可能になります。
まとめ
2025年、日本株アクティブ投信の運用成績が全世界株投信「オルカン」を上回る事例が増加しています。中小型株の再評価が大きな要因となっており、時価総額が小さくても成長期待のある企業への投資が成果を上げています。オルカンやS&P500への資金流入が続く一方で、日本国内にも優れた投資機会が存在することが明らかになりつつあります。
個人投資家にとって、低コストのインデックスファンドは依然として有力な選択肢ですが、アクティブファンドとの使い分けにより、より効果的な資産形成が可能になります。ファンドの運用方針、過去の実績、コストを総合的に評価し、自身の投資目的に合った商品を選ぶことが重要です。日本株アクティブ投信への資金流入が増えれば、優良企業の選別が株高を支える好循環が生まれ、日本の株式市場全体の活性化にもつながる可能性があります。
参考資料:
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