オルカン2.4兆円流入、2年連続首位の理由と今後の展望
はじめに
2025年の投資信託市場において、「オルカン」の愛称で知られるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が、年間約2.4兆円という歴代最大の資金流入を記録しました。これは2024年に続く2年連続の首位であり、日本の個人投資家の投資行動に大きな変化が起きていることを示しています。
新NISAの2年目を迎え、投資信託への資金流入は全体で14兆円を超える規模となりました。なぜオルカンがこれほど支持されているのか、そして今後の投資環境はどうなるのか。本記事では、2025年の投資信託市場を振り返りながら、個人投資家が知っておくべきポイントを解説します。
オルカンが2年連続で資金流入首位となった背景
新NISAの追い風と個人投資家の参入拡大
2024年1月にスタートした新NISAは、2年目となる2025年も個人投資家の投資意欲を強力に後押ししました。『日経マネー』の調査によれば、投資を行っている人の約88%が新NISAを利用しており、つみたて投資枠と成長投資枠の両方を活用している人は約56%に達しています。
新NISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円まで非課税で投資できます。この制度設計が、毎月コツコツと積み立てるスタイルに適したインデックスファンドへの資金流入を加速させました。2025年1月には、投資信託への資金流入額が初めて2兆円を超え、つみたて投資枠の対象商品だけで1兆3800億円が流入しています。
低コストと分散投資の魅力
オルカンが支持される最大の理由は、圧倒的な低コストと徹底した分散投資にあります。信託報酬は年0.05775%(税込)と業界最低水準であり、全世界約50カ国の株式市場に分散投資できる点が、長期投資を考える個人投資家から高い評価を得ています。
投資信託を長期保有する場合、信託報酬の差は最終的なリターンに大きく影響します。例えば、信託報酬が0.3%と1.7%のファンドで毎月2万円ずつ10年間積み立てた場合、手数料だけで16.8万円もの差が生じるという試算もあります。オルカンの低コスト構造は、こうした観点からも投資家に選ばれる要因となっています。
純資産総額は約10兆円に迫る規模へ
オルカンの純資産総額は、2025年12月末時点で約9.75兆円に達しました。2018年10月の設定以来、わずか7年でこの規模に成長したことは、日本の投資信託市場において異例の出来事です。直近1年間のリターンは約20.5%を記録しており、円安の恩恵も受けながら投資家に利益をもたらしています。
2025年の投資信託市場を振り返る
年間14兆円超の資金流入
2025年の国内公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)には、約14兆2443億円の資金が流入したと推計されています。これは過去最大となった2024年の約15兆3383億円、2007年の約14兆3201億円に次ぐ歴代3番目の高水準です。
新NISAマネーは2年目で前年比7%増の12兆円に達したとみられ、インフレを背景とした資産形成ニーズの高まりが継続していることがわかります。預貯金だけでは資産価値が目減りするという認識が広がり、投資へのシフトが進んでいます。
S&P500連動投信も好調
オルカンと並んで人気を集めたのが、米国S&P500指数に連動するインデックスファンドです。eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、国内の投資信託として初めて残高10兆円を突破しました。
つみたて投資枠の含み益ランキングでは、同ファンドが首位となり、2025年10月末時点で含み益は2.9兆円に達しています。2位のオルカン(2.2兆円)と合わせると、この2本だけで対象ファンド全体の含み益の約3割を占める状況です。
市場の変動を乗り越えて
2025年は株式市場にとって波乱の年でもありました。年前半には「トランプ関税ショック」の影響を受け、4月末にはつみたて投資枠対象ファンドの含み益が5.4兆円まで縮小する場面もありました。しかし、その後の株価回復により、10月末には15.7兆円まで回復し、過去最高を更新しています。
このような相場変動を経験しながらも、積立投資を継続した投資家が最終的に利益を得ているという事実は、長期・分散・積立という投資の基本原則の有効性を改めて示しています。
インデックス投資を始める際の注意点
短期的な値動きに一喜一憂しない
インデックスファンドへの投資において最も重要なのは、短期的な値動きに動揺しないことです。2024年8月には日経平均株価が1日で4,451円下落するという歴史的な急落がありましたが、このような局面で慌てて売却してしまうと、その後の回復局面で利益を得る機会を逃してしまいます。
積立投資の利点は、株価が下落した時により多くの口数を購入できる点にあります。時間分散によってリスクを軽減しながら、長期的な成長を取り込むという姿勢が重要です。
為替リスクへの理解
オルカンやS&P500連動ファンドは、海外資産に投資するため為替の影響を受けます。2025年は円安が進行したことで、円建てのリターンが押し上げられました。しかし、今後円高に振れた場合には、株価が上昇しても円建てでは含み益が減少する可能性があります。
長期投資においては為替変動も平準化される傾向がありますが、為替リスクの存在を理解した上で投資判断を行うことが大切です。
投資目的と時間軸の明確化
新NISAを活用した投資を始める際には、何のために投資するのか、いつ頃資金が必要になるのかを明確にしておくことが重要です。老後資金の形成であれば20〜30年という長期視点で、教育資金であれば10〜15年程度の中期視点で運用方針を考える必要があります。
2026年以降の展望
インデックス投資の裾野拡大
新NISAの普及により、投資初心者層が着実に増加しています。金融庁によってつみたて投資枠の対象ファンドからは「長期投資に不向きな高コストファンド」が除外されているため、初心者でも比較的安心してファンド選びができる環境が整っています。
この流れは2026年以降も継続すると見られ、オルカンやS&P500連動ファンドへの資金流入は引き続き堅調に推移する可能性が高いです。
分散先の多様化も選択肢に
オルカンは全世界株式への分散投資を実現していますが、ポートフォリオの大部分は米国株式が占めています。2025年後半からは新興国株式への関心も高まっており、eMAXIS Slim 新興国株式インデックスは直近1年で約30%のリターンを記録しています。
より積極的な分散を求める投資家には、地域や資産クラスを組み合わせたポートフォリオ構築も選択肢となります。
まとめ
2025年のオルカンへの2.4兆円流入は、日本の個人投資家の投資行動が大きく変化していることを象徴する出来事です。新NISAという制度的な後押しと、低コスト・分散投資という商品特性が合致し、歴代最大の資金流入を実現しました。
投資を始める際に重要なのは、短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点で資産形成に取り組むことです。2026年以降もインデックス投資の裾野は広がっていくと予想されますが、為替リスクや市場変動への理解を深めながら、自分に合った投資スタイルを確立していくことが大切です。
参考資料:
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