上場企業の配当が初の20兆円超え、家計に恩恵
はじめに
日本の上場企業による株主への配当が、2026年3月期に初めて20兆円を超える見通しとなりました。前期比で約8%増加し、5年連続で過去最高を更新する見込みです。
配当総額の拡大は、株を保有する家計にとって大きな恩恵となります。単純計算で約3.5兆円が家計に流入することになり、実質賃金が伸び悩む中で個人消費を支える効果が期待されています。
この記事では、配当20兆円超えの詳細、株主還元強化の背景、そして投資家や経済への影響について詳しく解説します。
配当20兆円超えの詳細
集計の概要
日本経済新聞が3月期決算の上場企業(変則決算などを除く)約2,300社を対象に集計した結果、2026年3月期の配当総額は20兆円を超える見通しとなりました。
これは前期の約18.5兆円から約8%増加し、純利益の4割に相当する水準です。配当総額が20兆円を超えるのは初めてのことです。
5年連続で過去最高
配当総額は5年連続で過去最高を更新しています。
| 年度 | 配当総額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2022年3月期 | 約14兆円 | - |
| 2023年3月期 | 約15兆円 | +7% |
| 2024年3月期 | 約17兆円 | +13% |
| 2025年3月期 | 約18兆円 | +6% |
| 2026年3月期 | 約20兆円超 | +8% |
この5年間で配当総額は約1.4倍に拡大しました。
増配企業の増加
2025年3月期は期初時点から353社が配当予想を引き上げました。業績好調に加え、企業に資本効率改善の要請が強まっていることが背景にあります。
2026年3月期も同様の傾向が続いており、多くの企業が増配を予定しています。
株主還元強化の背景
東証の市場改革
株主還元が強化されている最大の背景は、東京証券取引所による市場区分の見直しとコーポレートガバナンス改革の推進です。
2023年3月、東証は上場企業に対し「資本コストや株価を意識した経営」を要請しました。特にPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業には、改善策の開示と実行を求めています。
この要請を受け、多くの企業が株主還元の強化に動いています。
日本企業の「余剰資本」問題
日本企業は長年、過剰な内部留保を抱えていると指摘されてきました。いわゆる「カネ余り」の状態です。
余剰資本を有効活用できていなければ、資本効率(ROE:自己資本利益率)は低下します。株主還元を強化することで、資本効率を改善し、株価の向上につなげる狙いがあります。
物言う株主の台頭
アクティビスト(物言う株主)の活動も活発化しています。彼らは企業に対し、増配や自社株買いなど株主還元の強化を求めることが多く、経営陣への圧力となっています。
こうした外部からの圧力も、株主還元強化の一因です。
自社株買いも活発
配当と自社株買いの両輪
株主還元には、配当と自社株買いの2つの方法があります。
配当 年1〜2回、株主に現金を支払います。安定的な還元策として多くの企業が採用しています。
自社株買い 企業が発行済みの自社株を市場から買い戻します。株式総数が減ることで、1株当たりの価値が向上します。
自社株買いの拡大
自社株買いも近年大きく拡大しています。2024年度には政策保有株式(いわゆる「持ち合い株」)解消の動きもあり、16兆円に達しました。
2025年度以降も自社株買いの動きは活発で、配当と合わせた総株主還元は高水準を維持しています。
総株主還元の水準
東証上場企業の配当性向は30〜50%の範囲で推移しています。配当と自社株買いの合計からなる総株主還元の水準は50〜70%の範囲となっており、米国企業に近い水準に達しています。
家計への恩恵
約3.5兆円が家計に流入
配当20兆円超のうち、個人株主が受け取る金額は単純計算で約3.5兆円と推定されています。
これはインフレ下で実質賃金が増えにくい中、個人消費を支える重要な効果が期待できます。
NISA効果
2024年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)により、個人の株式投資が拡大しています。NISA口座で受け取る配当は非課税となるため、配当の恩恵を受けやすくなっています。
特に高配当株への投資が個人投資家の間で人気を集めており、配当収入を目的とした投資が増加しています。
資産形成への寄与
株式配当は、給与以外の収入源として家計の資産形成に寄与します。再投資すれば複利効果で資産を増やすことができ、長期的な資産形成に有効です。
株主還元への異なる見方
積極評価の立場
株主還元の強化を積極的に評価する立場からは、以下のような意見があります。
- 日本企業は余剰の資本を持っており、資本効率を上げるには株主に資本を還元すべき
- 株主還元の強化は株価上昇につながり、企業価値向上に寄与する
- 投資家に報いることで、株式市場の活性化につながる
批判的な見方
一方で、株主還元の行き過ぎを懸念する声もあります。
- 設備投資や研究開発への投資が抑制される恐れがある
- 従業員への賃上げよりも株主還元が優先されている
- 短期的な株価対策に偏り、長期的な成長投資が疎かになる
バランスの重要性
理想的には、成長投資と株主還元のバランスを取ることが重要です。将来の成長に必要な投資を行いつつ、余剰資金は株主に還元するという考え方が求められます。
高配当銘柄への関心
投資家の注目
配当が増加する中、高配当銘柄への投資家の関心が高まっています。配当利回り(株価に対する配当の割合)が高い銘柄は、安定した収益を求める投資家に人気です。
高配当銘柄の選び方
高配当銘柄を選ぶ際には、単に配当利回りが高いだけでなく、以下の点を確認することが重要です。
- 業績が安定しているか
- 配当の継続性があるか(連続増配年数など)
- 配当性向が適正な範囲か(高すぎると持続困難)
- 財務基盤が健全か
連続増配企業
日本にも20期以上連続で増配を続けている企業があります。花王(35期連続)、リコーリース(27期連続)など、長期にわたり株主還元を強化し続けている企業は、投資家からの信頼も厚くなっています。
今後の展望
株主還元の継続
東証の市場改革や投資家からの要請を受け、株主還元の強化は今後も続く見通しです。特にPBR1倍割れの企業には、さらなる還元強化の圧力がかかるでしょう。
配当と成長投資の両立
一方で、配当と成長投資のバランスも問われています。過度な株主還元は将来の成長を損なう恐れがあり、企業は難しい判断を迫られています。
個人投資家の増加
新NISAの普及により、個人投資家は今後も増加が見込まれます。配当収入を目的とした投資が広がれば、企業の株主還元への意識はさらに高まるでしょう。
まとめ
日本の上場企業の配当総額が2026年3月期に初めて20兆円を超える見通しとなりました。5年連続で過去最高を更新し、株主還元強化の流れは加速しています。
背景には東証の市場改革、資本効率改善への要請、アクティビストの台頭などがあります。家計にとっては約3.5兆円の配当収入が期待でき、個人消費を支える効果も見込まれます。
参考資料:
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