長期金利が27年ぶり高水準に上昇した背景と影響

by nicoxz

はじめに

2026年1月14日、日本の長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが2.18%台に上昇しました。これは1999年2月以来、およそ27年ぶりの高水準です。長らく「金利のない世界」が続いてきた日本において、この金利上昇は経済全体に大きな影響を及ぼす転換点となっています。

本記事では、長期金利上昇の背景にある要因を解説し、家計や企業、さらには財政運営への影響について詳しく分析します。金利上昇がもたらす機会とリスクを理解することで、今後の経済動向を見通す手がかりを提供します。

長期金利上昇の背景と要因

日銀の金融政策正常化

長期金利上昇の最大の要因は、日本銀行による金融政策の正常化です。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後段階的に利上げを実施してきました。2025年12月19日には政策金利を0.75%に引き上げ、30年ぶりの高水準となりました。

植田和男総裁は「賃金と物価がほとんど変化しない、いわゆるゼロノルムの世界に戻る可能性は大きく低下している」と述べ、2026年以降も経済・物価情勢を見ながら利上げを継続する方針を示しています。市場では次の利上げ時期を「2026年前半」と予想する見方が多く、政策金利は2026年度中に1.25%程度まで上昇する可能性があります。

財政拡張への懸念

高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」も金利上昇圧力となっています。2026年度予算案は一般会計総額122.3兆円と過去最大規模となり、国債の返済や利払いに充てる国債費は31.3兆円に達する見込みです。

国債発行残高は2026年度末時点で1,145兆円に達する見通しで、利払い費は13兆円に急増しています。市場では財政悪化への懸念から国債が売られやすい状況が続いており、これが長期金利の上昇を後押ししています。

政治的不透明感

高市早苗首相が通常国会冒頭での衆院解散に踏み切る可能性が高まっていることも、市場の不安材料となっています。選挙後の財政政策の方向性が不透明なことから、投資家はリスクプレミアムを上乗せする傾向にあり、国債利回りの上昇につながっています。

住宅ローンへの影響と家計負担

変動金利の上昇

長期金利の上昇は、住宅ローン金利にも直接的な影響を及ぼしています。特に変動金利は日銀の政策金利と連動しているため、利上げのたびに上昇します。

令和6年度の国土交通省調査によると、新規契約による変動金利利用者の割合は84.3%と大多数を占めています。これらの借入者にとって、金利上昇は毎月の返済負担増加に直結します。

具体的な返済額の変化

試算によると、変動型で4,500万円を借りたケースでは、2024年7月以降の利上げによって毎月返済額は借り入れ当初に比べ合計で約1万4,000円増加します。5,000万円を借りた場合、金利が0.75%から1%に上昇すると、毎月の返済額は約6,000円増える計算です。

ただし、多くの金融機関では「5年ルール」や「125%ルール」が適用されるため、当面の返済額は変わらない場合もあります。しかし、これは返済額に占める利息と元本の内訳が変化するだけで、総支払額は確実に増加する点に注意が必要です。

固定金利の動向

長期金利に連動する固定金利も上昇しています。フラット35の金利は2%の大台に達しており、固定金利への借り換えを検討している人にとっては、タイミングの見極めが重要になっています。

企業活動と経済への影響

設備投資への影響

金利上昇は企業の資金調達コストを押し上げ、設備投資に対する抑制要因となります。工場建設や機械・設備の購入、IT投資、研究開発などに必要な資金の調達が割高になるためです。

しかし、2026年の設備投資については、省力化・脱炭素対応への持続的な投資需要や国内生産拠点強化の動きを背景に、増加基調を維持するとの見方が優勢です。人手不足を背景とする企業の根強い設備投資意欲が、金利上昇のマイナス影響を相殺すると予測されています。

円安との関係

金利上昇は本来、通貨高要因となりますが、日本の金利上昇ペースが米国などと比べて緩やかなため、円安基調は続いています。この円安は輸出企業の収益を下支えする一方、輸入物価の上昇を通じて家計の負担増加にもつながっています。

金融セクターへの影響

銀行など金融機関にとって、金利上昇は収益改善の機会となります。貸出金利と預金金利の差(利ざや)が拡大するためです。一方で、保有する債券の価格下落による含み損の発生にも注意が必要です。

今後の見通しと注意点

金利の先行き予想

専門家の間では、今後の金利動向について複数のシナリオが示されています。野村総合研究所は、次回の利上げを2026年9月と予想し、政策金利は最終的に1.25%程度がターミナルレート(到達点)になるとみています。

長期金利については、メインシナリオでは緩やかな上昇が続くと予測されていますが、財政懸念が強まれば年度末に2.5%へ、円安が加速して日銀がさらなる利上げを迫られれば3%超へ上昇する可能性も指摘されています。

グローバルへの波及

日本の金利上昇は、グローバル金融市場にも影響を及ぼす可能性があります。長年にわたり、日本は世界の超低金利の源泉として、キャリートレードなどの投資戦略を支えてきました。日本の金利上昇は、こうした資金フローの巻き戻しを引き起こし、世界的な金融市場の変動要因となる恐れがあります。

家計が取るべき対策

住宅ローンを抱える家計は、金利上昇への備えとして以下の対策を検討することが重要です。

  • 返済計画の見直しと将来の金利上昇を織り込んだシミュレーション
  • 余裕資金がある場合の繰り上げ返済の検討
  • 金利タイプの見直し(変動から固定への借り換え検討)
  • 家計全体の支出の見直しによる金利負担増への備え

まとめ

日本の長期金利が27年ぶりの高水準に達したことは、「金利のある世界」への本格的な回帰を象徴しています。日銀の金融政策正常化、財政拡張への懸念、政治的不透明感が複合的に作用し、金利上昇圧力が高まっています。

住宅ローンを抱える家計にとっては返済負担の増加が避けられない一方、企業の設備投資は省力化需要などに支えられて底堅く推移する見通しです。今後の金利動向を注視しながら、家計や企業は長期的な視点で資金計画を見直すことが求められています。

参考資料:

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