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by nicoxz

日本10〜12月期GDPがプラス成長回復へ、関税影響一巡の背景

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はじめに

内閣府は2026年2月16日、2025年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値を発表します。民間エコノミストの予測では、実質GDPは前期比年率で1%前後のプラス成長に転じる見通しです。前期の7〜9月期は、トランプ米政権による関税引き上げの影響を受けて年率2.3%減と大幅なマイナス成長を記録していました。

今回のプラス転換は、日米関税交渉の合意による輸出環境の改善と、企業の設備投資回復が主な要因です。この記事では、GDP回復の背景にある要因を分析し、日本経済の今後の見通しを解説します。

トランプ関税の影響と日米交渉の転機

7〜9月期のマイナス成長の要因

2025年7〜9月期の実質GDPは前期比0.4%減(年率1.8%減)となり、6四半期ぶりのマイナス成長を記録しました。2次速報では年率2.3%減へさらに下方修正されています。

マイナス成長の主な要因は、トランプ政権が2025年4月に発動した相互関税と自動車関税です。日本からの輸出品に最大25%の追加関税が課され、特に自動車輸出が大きな打撃を受けました。輸出企業は関税の負担を吸収するために輸出単価を引き下げざるを得ず、輸出金額の減少につながりました。

また、住宅の省エネルギー基準の厳格化に伴う駆け込み需要の反動減も、GDP押し下げの一因となっています。

日米関税合意がもたらした転機

2025年7月23日、日米両政府は関税措置に関する協議で合意に達しました。この合意により、自動車および自動車部品に課されていた25%の追加関税率は半減され、既存の税率を含めて15%に引き下げられました。相互関税も15%で合意しています。

合意の見返りとして、日本は米国への投資促進に向けて最大5,500億ドル(約80兆円)規模の出資・融資・融資保証を提供することになりました。半導体、医薬品、AI・量子技術など9分野でサプライチェーンの強靱化に連携することでも一致しています。

この合意により、企業の先行き不透明感が後退し、10〜12月期にかけて自動車などの輸出が下げ止まる要因となりました。

プラス成長を支える国内要因

設備投資の回復

10〜12月期のGDPを押し上げる大きな要因の一つが、企業の設備投資の回復です。日本政策投資銀行の調査によると、2025年度の設備投資計画は全産業で前年度比23.2%増と大幅な伸びを見せています。製造業では31.2%増、非製造業でも17.9%増の計画です。

投資の中心は、AI・半導体関連や省力化・デジタル化(DX)投資です。政府は2030年度までの7年間で約10兆円以上の財源を確保し、半導体産業への戦略的支援を進めています。人手不足への対応としてロボットやAIを活用した自動化投資も拡大しており、機械投資や知的財産投資が堅調に推移しています。

個人消費と賃上げの動向

個人消費については、物価上昇の影響を受けつつも底堅く推移しています。2025年の春季労使交渉では幅広い企業で賃上げが実施され、雇用・所得環境の改善が消費を下支えしています。

ただし、実質賃金の伸びは依然として緩やかであり、消費の回復ペースには限界があるとの見方もあります。ニッセイ基礎研究所は、10〜12月期の個人消費が4四半期ぶりに減少に転じる可能性を指摘しています。

エコノミストの見通しと注目ポイント

主要シンクタンクの予測

民間シンクタンクの予測は、概ねプラス成長で一致しています。日本経済研究センターが実施する「ESPフォーキャスト調査」では、10〜12月期の実質GDP成長率は年率換算で前期比1.48%増との予測平均でした。

各機関の予測を見ると、大和総研が年率0.7%増、ニッセイ基礎研究所が年率1.7%増、第一生命経済研究所が年率1.2%増と、0.7〜1.7%の幅で予測が分かれています。いずれも2四半期ぶりのプラス成長を見込んでいます。

今後のリスク要因

プラス成長への回復が見込まれる一方で、先行きには複数のリスクが残ります。

第一に、日米関税合意で自動車関税は15%に引き下げられたものの、元々の2.5%と比べれば依然として高い水準にあります。輸出への下押し圧力は完全には解消されていません。

第二に、2026年度の経済見通しは慎重です。ESPフォーキャスト調査によると、2025年度の実質GDP成長率は0.91%、2026年度は0.80%と減速する見通しです。トランプ政権の通商政策が今後どう展開するかは引き続き不透明です。

第三に、中国経済の減速や中国からの訪日旅行者の減少がサービス輸出に影響を与えている点も懸念材料です。

まとめ

2025年10〜12月期のGDPは、日米関税交渉の合意を受けた輸出環境の改善と、AI・半導体関連を中心とした設備投資の回復を背景に、2四半期ぶりのプラス成長に転じる見通しです。ESPフォーキャスト調査の予測平均は年率1.48%増となっています。

ただし、関税率は依然として合意前より高い水準にあり、中国経済の減速リスクも残ります。今回のGDP速報値は、日本経済が関税ショックから立ち直りつつあるのか、それとも一時的な反発にとどまるのかを見極める重要な指標となります。2026年度にかけての持続的な成長には、賃上げによる消費拡大と、DX・半導体分野での設備投資の継続が鍵を握ります。

参考資料:

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