立憲・公明新党で利益確定売り、TSMCが株高期待を下支え
はじめに
2026年1月16日の東京株式市場で、日経平均株価は続落し、前日比174円安の5万3936円で取引を終えました。年明け以降、衆議院解散観測を背景に上昇基調にあった株式市場ですが、立憲民主党と公明党による新党結成の正式合意を受けて、利益確定売りが優勢となりました。
一方で、台湾の半導体大手TSMCが発表した2025年10-12月期決算は過去最高益を記録し、AI半導体需要の堅調さを改めて示しました。この好決算は投資家心理を下支えし、株価の急落を防ぐ要因となっています。
本記事では、国内政局の急展開とTSMC決算が株式市場に与える影響について詳しく解説します。
立憲民主党と公明党の新党「中道改革連合」結成
歴史的な政界再編の動き
1月15日、立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表は国会内で党首会談を行い、次期衆議院選挙に向けて新党を結成することで正式に合意しました。新党の名称は「中道改革連合」と発表されています。
この合意の背景には、2025年10月の自民党総裁選で高市早苗氏が勝利した後、公明党が約26年続いた自民党との連立を解消したことがあります。野田代表は「高市政権の下で政治が右に傾く中、中道勢力が政治のど真ん中に位置づけられるチャンスが来ている」と述べ、新党結成の意義を強調しました。
新党の規模と選挙協力の枠組み
立憲民主党の衆院議員は現在148人、公明党は24人で、仮に全員が新党に参加すれば172人となり、自民党の衆院勢力196人に迫る規模となります。野田代表は衆院選の目標について「比較第1党を目指す」と明言しています。
選挙協力の枠組みとしては、両党を存続させたまま新党を設立し、「中道改革の理念」に賛同する衆院議員が参加して比例代表の統一名簿を作成します。また、公明党がこれまで候補者を擁立してきた小選挙区には同党出身の候補者を擁立しないことでも合意しました。
自民党への影響
公明党は創価学会を支持母体とし、1選挙区あたり約2万票の組織票を持つとされています。自民党にとって、この公明票を失うことは大きな打撃となります。分析によると、自民党は小選挙区の現職のうち約2割が苦戦する可能性があるとされています。
なお、国民民主党の玉木雄一郎代表は新党には「加わらない」と明言し、「政局や選挙最優先の政治が日本の停滞を招いてきた」と距離を置く姿勢を示しています。
衆議院解散と株式市場の反応
高市首相の解散決断
高市早苗首相は1月14日、自民党と日本維新の会の幹部に対し、1月23日召集の通常国会の早期に衆院を解散する意向を伝えました。投開票日は2月上中旬で調整されており、「1月27日公示、2月8日投開票」または「2月3日公示、2月15日投開票」が有力な日程として挙がっています。
2月に衆院選が実施されれば36年ぶりの「真冬の決戦」となります。首相が早期解散に踏み切る背景には、75%前後で推移する高い内閣支持率があります。
解散観測で株価上昇も、新党結成で一服
年明け以降、解散観測が報じられると株式市場は敏感に反応しました。日経平均先物は夜間取引で大きく上昇し、一時は5万4000円台に乗せる場面もありました。
市場が解散総選挙を好感した理由としては、高い支持率のまま選挙を実施すれば与党が議席を増やし安定した政権運営が可能になること、また高市政権が重視する「危機管理投資」「成長投資」、特にAI・半導体など17の戦略分野への投資が円滑に進むとの期待が挙げられます。
しかし、立憲・公明の新党結成が正式に決まったことで、選挙情勢の不透明感が高まり、1月16日は利益確定売りが優勢となりました。
TSMCの過去最高益決算がAI半導体需要を裏付け
第4四半期決算のハイライト
TSMCは1月15日、2025年10-12月期決算を発表しました。純利益は前年同期比35%増の5,057億4,000万台湾ドル(約160億米ドル)と過去最高を記録し、アナリスト予想を上回りました。売上高も20.5%増の1兆460億台湾ドルとなっています。
特筆すべきは粗利益率の高さです。62.3%という水準は製造業としては異例であり、最先端プロセスに対する圧倒的な価格決定力を示しています。
AI半導体が業績を牽引
収益構造の変化も顕著です。かつて主力だったスマートフォン向けプロセッサから、HPC(高性能コンピューティング)分野が全売上の58%を占めるまでに成長しました。NVIDIAのGPUなどAIアクセラレータやデータセンター向けCPUを含むこの分野は、前年同期比48%増と急成長しています。
TSMCは「AIメガトレンド」を強調し、顧客から強い需要シグナルが送られていると述べました。好業績の背景には、3ナノメートル製造能力のフル活用があり、AppleのA19チップを搭載したiPhone 17シリーズへの供給やAI半導体への旺盛な需要が寄与しています。
2026年の成長見通し
TSMCは2026年の売上高が米ドルベースで約30%増加すると予測しています。第1四半期だけでも売上高は前年同期比で最大40%増の358億米ドルに達する見込みです。
設備投資についても、2026年は最大37%増の560億ドルに拡大する可能性があり、2028年、2029年も「大幅に」増加すると予想されています。米国アリゾナ州では1,650億ドルを投じて半導体製造工場の建設を進めており、AI需要に対応するための生産能力拡大を着実に進めています。
日本の半導体関連株への影響
東京エレクトロン・アドバンテストの動向
TSMCの好決算を受けて、日本の半導体関連株にも買いが入りました。NVIDIAのサプライヤーであるアドバンテストは5%以上急騰し、東京エレクトロンも2.4%上昇しました。
アドバンテストは2026年3月期第2四半期が大幅増収増益となり、通期業績予想を上方修正しています。一方、東京エレクトロンは通期業績予想を下方修正しましたが、これは一時的な要因によるものと見られています。
中長期の成長期待
日本の半導体製造装置セクターは、2025年後半からの2ナノ量産開始、2026年後半からの1.6ナノ量産開始、AI半導体の種類増加と中国におけるAI半導体増産、2026年からのHBM4導入など、業績拡大余地が大きいと見られています。
証券アナリストは、アドバンテスト、東京エレクトロン、レーザーテック、ディスコの4社について目標株価を引き上げ、中長期で投資妙味があるとの見方を示しています。
注意点・今後の展望
政治情勢の不透明感
新党「中道改革連合」の結成により、次期衆院選の構図は大きく変わりました。高市政権が高い支持率を維持しているとはいえ、公明票の行方や中道層の動向次第では選挙結果は予断を許しません。
自民党内からは「気が気じゃない」との声も上がっており、選挙戦の行方が株式市場のボラティリティを高める可能性があります。また、衆院解散・総選挙により2026年度予算案の成立は年度内に間に合わない見通しで、政策運営への影響も懸念されます。
AI半導体需要の持続性
TSMCの好決算はAI半導体需要の強さを裏付けましたが、市場の一部には「AIバブル」への警戒感も根強く存在します。ただし、TSMCが示した560億ドルという巨額の設備投資計画は、同社がAI需要の持続性に強い自信を持っていることを示唆しています。
半導体関連株への投資を検討する際は、個別企業の業績動向だけでなく、地政学リスクや為替動向にも注意が必要です。
まとめ
1月16日の東京株式市場は、立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」結成の正式合意を受けて、利益確定売りが優勢となり続落しました。年明け以降の衆院解散観測を背景とした上昇相場には一服感が出ています。
一方、TSMCの2025年10-12月期決算は純利益が過去最高を記録し、AI半導体需要の堅調さを改めて証明しました。2026年も30%の売上成長を見込むなど、成長見通しは依然として明るく、日本の半導体関連株を含む株式市場の下支え要因となっています。
今後は2月上中旬に予定される衆院選の結果と、AI半導体需要の持続性が株式市場の方向性を左右する重要な要素となりそうです。
参考資料:
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