中道改革連合の安保・エネルギー政策、現実路線への転換とは
はじめに
2026年1月16日、日本の政界に新たな潮流が生まれました。立憲民主党と公明党が合流し、新党「中道改革連合」(略称:中道)を結成したのです。立民148人、公明24人の全員が参加すれば、衆院で172議席という大きな勢力となります。
この新党が注目を集めているのは、安全保障やエネルギー政策において「現実路線」を打ち出したことです。集団的自衛権の限定行使を合憲とし、「原発ゼロ」を綱領に明記しないなど、従来の立憲民主党の立場から大きく転換しました。
高市早苗首相率いる自民・維新連立政権との対決を控え、政権担当能力をアピールする狙いがあります。しかし、この路線変更に対しては立民内の左派や社民党から強い反発も出ています。本記事では、中道改革連合の政策転換の内容と背景、そして今後の課題について詳しく解説します。
中道改革連合の結成経緯
公明党の連立離脱から新党結成へ
中道改革連合の結成に至る道筋は、2025年10月の公明党の連立離脱から始まりました。公明党は野党時代を含め26年間続いた自民党との自公連立政権を解消しました。離脱の直接的なきっかけは、企業・団体献金の規制強化をめぐる自民党との折り合いがつかなかったことです。
翌11月には公明党が「中道改革」を掲げ、現実的な外交・防衛政策と憲法改正、政治改革と選挙制度改革をはじめとする5本柱を打ち出しました。この動きが、立憲民主党との接近につながっていきます。
高市政権への対抗軸として
2026年2月実施の可能性が高まった第51回衆議院議員総選挙を前に、両党は自民党の高市政権および日本維新の会への対抗軸を形成する必要がありました。
高市早苗首相は2025年10月21日に第104代首相に就任し、女性初の首相として注目を集めています。日本経済新聞社の世論調査によると、高市内閣の支持率は2025年12月に75%と高い水準を維持しています。しかし、自民と維新両党の衆院会派の議席はぎりぎり過半数の233で、参院では少数与党の「ねじれ国会」状態にあります。
この状況下で、立憲民主党と公明党は中道勢力を結束させることで政権交代を目指す戦略を取ったのです。
安全保障政策の転換
存立危機事態での自衛権行使を「合憲」と明記
中道改革連合の安全保障政策で最も注目されるのが、存立危機事態での自衛権行使を「合憲」と明記した点です。綱領には「専守防衛を基本に現実的な外交防衛政策を進める」と記されています。
これは立憲民主党にとって大きな方針転換です。立憲民主党はこれまで「日本国憲法は、平和主義の理念に基づき、個別的自衛権の行使を限定的に容認する一方、集団的自衛権行使は認めていない」という立場を取ってきました。2015年に成立した安全保障関連法については「憲法違反であり、立憲主義に反する」と強く批判していました。
公明党への歩み寄り
この変化の背景には、公明党との連携があります。集団的自衛権の行使を限定的に認める憲法解釈変更には、当時与党だった公明党が深く関わっていました。立憲民主党の源流である民主党は反対し、両党は激しく対立した経緯があります。
立民幹部は「公明と連携するためにも、安保関連法の容認を視野に入れる必要がある」と指摘しています。実際、立憲民主党は2026年春にも安全保障関連法に関する党の新たな見解を打ち出す方針でした。基本政策に明記していた「違憲部分を廃止」の主張の修正も見据えていたのです。
高市政権への警戒
両党が安全保障政策で現実路線を取りつつも、高市政権に対する警戒は共有しています。与党内で、安保3文書の改定時に「非核三原則」を見直すべきだとの意見があることや、憲法改正で集団的自衛権を全面容認したり、戦力の不保持などを定める9条2項を削除したりする意見があることを、両党は強く警戒しています。
中道改革連合は「現実的な安全保障」を掲げつつ、高市政権の「右傾化」には歯止めをかけるという立場を示しています。
エネルギー政策の現実路線
「原発ゼロ」を綱領に明記せず
中道改革連合のエネルギー政策も大きな転換点を迎えています。新党は綱領に「原発ゼロ」を明記しない方針を取りました。
立憲民主党は従来、綱領に「原発ゼロ社会を一日も早く実現する」と掲げていました。しかし、野田佳彦代表は新党の綱領にこの表現を踏襲することに慎重な考えを示しました。
基本政策の内容
基本政策では、エネルギー政策について以下のように記されています。
- 再生可能エネルギーの最大限活用
- 将来的に原発へ依存しない社会を目指す
- 安全性が確実に確認され、実効性のある避難計画があり、地元の合意が得られた原発の再稼働
- 次世代技術の開発促進などによるエネルギー安全保障の確保と脱炭素社会を実現
つまり、「原発ゼロ」という明確な目標は掲げず、条件付きでの原発再稼働を容認する姿勢を示しています。これは「将来的に原発へ依存しない社会を目指す」という表現に留め、現実的なエネルギー政策を優先した結果です。
エネルギー安全保障の観点
この方針転換の背景には、エネルギー安全保障への配慮があります。脱炭素社会の実現と電力の安定供給を両立させるためには、再生可能エネルギーの拡大だけでなく、原発の活用も選択肢として残す必要があるという判断です。
立民左派・社民党からの反発
福島瑞穂党首の強い批判
中道改革連合の路線転換に対して、社民党の福島瑞穂党首は強い反発を示しています。2026年1月19日の記者会見で、福島党首は「看過できない。非常に危機感を持っている」と語りました。
特に安全保障関連法の合憲容認について、福島党首は「10年前に憲法違反だったものが10年たって合憲になることはあり得ない」と強調し、「(立憲民主党は)180度変わった」と指摘しました。
また、新党の基本政策が「責任ある憲法改正論議を深化」するとしている点についても、「自民党が長年主張してきた方向性と変わらない」と憂慮を表明しています。
社民党への移籍を呼びかけ
福島党首は会見の中で、「中道改革連合の政策がいけないと思う人はぜひ社民党に来て」と呼びかけました。これは、立憲民主党から離反する左派議員や支持者の受け皿になる意思を示したものです。
2020年に社民党が分裂した際、多くの議員が立憲民主党に合流しました。福島党首は党残留を選び、「55年体制」の一翼を担った社会党の系譜を継いできました。今回の中道改革連合の路線転換は、かつて立憲民主党に合流した社民党出身者にとっても複雑な思いを抱かせるものでしょう。
党内外の分裂リスク
中道改革連合は「中道左派」に近い立場とされていますが、安全保障やエネルギー政策での現実路線は、リベラル派や左派の支持者から批判を受けるリスクがあります。社会政策は中左派的だが、経済や安全保障、エネルギー政策などは中道右派までカバーするような幅の広い政策になると分析されています。
この「幅の広さ」が強みになるか、それとも内部分裂の火種になるかは、今後の選挙戦や政権運営で試されることになります。
国民民主党の反応
新党への参加を拒否
国民民主党は立憲・公明の新党への参加要請を断りました。玉木雄一郎代表は、この動きについて批判的な見解を示しています。
玉木代表は「公明党さんはまさに現行憲法の中でできるだけその解釈をぎりぎりまで広げて、限定的な集団的自衛権を認めるということに至ったわけで。じゃあ今度こちらと仲良くするためには、その根幹であった政策をですね、そのパートナーに合わせて変えていくというのがですね」と述べ、立憲民主党の姿勢に疑問を呈しました。
野党再編の行方
国民民主党の不参加により、野党再編は中道改革連合を軸としながらも、複数の勢力が並立する形となりました。共産党、社民党、れいわ新選組といった左派政党、そして国民民主党という中道勢力が、それぞれの立場で選挙戦に臨むことになります。
今後の注目点・展望
2月の衆院選に向けた課題
高市首相は1月19日に衆議院解散を表明し、「1月27日公示―2月8日投開票」の日程が見込まれています。解散から投開票までの期間は16日と戦後最短の短期決戦になります。
中道改革連合にとっての課題は、短期間で新党の認知度を高め、政策の浸透を図ることです。「中道改革連合」という名称が有権者に定着するかどうかも注目されます。
政権担当能力のアピール
中道改革連合が現実路線を打ち出した最大の理由は、政権担当能力をアピールすることにあります。野田佳彦代表は首相経験者であり、公明党も長年の与党経験を持ちます。この両党の合流により、政権運営のノウハウを持つ勢力として有権者にアピールする狙いがあります。
内部結束の維持
最大の課題は、路線転換に伴う内部分裂を防ぎ、結束を維持することです。安全保障やエネルギー政策での現実路線に不満を持つ議員や支持者が、社民党やれいわ新選組に流れる可能性もあります。選挙戦を通じて、どこまで党内の一体感を保てるかが問われます。
まとめ
中道改革連合の結成は、日本の政党政治における大きな転換点となります。立憲民主党と公明党という、かつて安全保障政策で対立した両党が合流し、「現実路線」を掲げて政権交代を目指すという構図は、有権者に新たな選択肢を提供します。
安全保障では存立危機事態での自衛権行使を合憲とし、エネルギー政策では条件付きの原発再稼働を容認するなど、従来の立憲民主党の立場から大きく転換しました。これは政権担当能力をアピールするための戦略的判断ですが、左派からの反発というリスクも伴います。
2月の衆院選は、高市政権の信任投票であると同時に、中道改革連合という新たな政治勢力が国民からどう評価されるかを問う選挙でもあります。有権者の判断が、日本の政治の方向性を大きく左右することになるでしょう。
参考資料:
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