レーザーテック株価復調、新製品A200HiTで最高値に迫る
はじめに
半導体検査装置メーカーのレーザーテックの株価が復調しています。2024年5月の最高値から一時8割近く下げた株価は、足元で最高値比2割安まで回復しました。世界トップシェアを握る半導体検査装置で2025年10月に新製品「A200HiT」を打ち出し、受注拡大への期待が高まっています。
今回の株価復調で注目されるのは、2024年の急騰時に見られた短期筋による熱狂的な売買が控えめで、息の長い株高になる可能性がある点です。レーザーテックはEUVマスク検査装置で世界シェアほぼ100%を握り、TSMC、インテル、サムスンといった世界トップの半導体メーカーを顧客に持つ独占的企業です。
本記事では、レーザーテックの株価復調の背景、新製品A200HiTの意義、EUV検査装置市場の展望、そして2026年以降の成長シナリオについて解説します。
レーザーテック株価復調の経緯
急騰と急落のサイクル
レーザーテックの株価は、2024年5月に最高値を記録した後、急激に下落しました。一時は最高値から8割近く下げ、投資家の間で懸念が広がりました。この急落の背景には、半導体市場の調整局面と、短期投資家による過熱した売買の反動がありました。
しかし、2025年10月に新製品「A200HiT」を発表してから株価は反転し、足元では最高値比2割安まで回復しています。2025年7〜9月期の決算では、純利益が前年同期比2.1倍の190億円、売上高が47%増の541億円と好調な業績を示しました。
短期筋の退出と長期投資家の台頭
今回の株価復調で特徴的なのは、2024年の急騰時に見られた短期筋による熱狂的な売買が控えめな点です。新製品発表による受注拡大期待を背景に、長期的な成長を見込む投資家が増えていると考えられます。
2025年12月に開催されたアナリスト向け説明会で、仙洞田善弘社長は新製品について「『ゲームチェンジャーになり得る』と評価をいただいている」と述べ、複数の商談が裏で進んでいることを明らかにしました。
新製品A200HiTの意義
ゲームチェンジャーとしての評価
2025年10月に発表された新製品「A200HiT」は、アナリストや業界関係者から「ゲームチェンジャーになり得る」との高い評価を受けています。仙洞田社長によれば、A200HiTに関する複数の商談が裏で進んでおり、受注拡大への期待が高まっています。
具体的な技術仕様は明らかにされていませんが、レーザーテックの既存製品であるACTISシリーズ(EUVパターンマスク検査)やABICSシリーズ(EUVマスクブランクス検査)の技術を進化させたものと見られます。
AI半導体需要への対応
2025年7〜9月期の業績では、特にAIサーバーGPU向けの需要が好調で、米国向け売上が前年同期比138.3%増の220.5億円に急増しました。AI需要の高まりにより、最先端の半導体製造における検査装置の重要性がさらに増しています。
仙洞田社長は「2026年からの回復という見方は変わっていない」と述べ、AI向けロジック半導体に加えて、先端DRAM製品への需要増加を見込んでいます。
DRAM分野への拡大
レーザーテックはこれまでロジック半導体のEUVマスク検査装置で圧倒的なシェアを握ってきましたが、DRAM分野への拡大も進めています。2021年にはDRAMメーカーにもEUV検査装置の納入を開始しており、メモリ市場への浸透が加速しています。
2026年にはAI向け高帯域メモリ(HBM)の需要急増により、DRAMメーカーの設備投資が活発化すると予想されています。レーザーテックの検査装置は、こうした先端メモリの製造にも不可欠な存在となっています。
EUV検査装置市場の展望
世界シェアほぼ100%の独占的地位
レーザーテックは、EUV光源を使ったマスク欠陥検査装置で世界シェアほぼ100%を握っています。具体的には、ACTISシリーズ(EUVパターンマスク検査)とABICSシリーズ(EUVマスクブランクス検査)の2分野で世界シェア100%を維持しています。
ABICSシリーズは、インフルエンザウイルスよりも小さい数十ナノメートルという微細な欠陥を感知する精度を誇ります。TSMCなどが手掛ける線幅が5ナノメートル以下の最先端半導体に微細な回路を書き込むためには、EUVと呼ばれる非常に短い波長の光源を使う露光技術が欠かせず、レーザーテックの検査装置なしには効率的な製造ができません。
主要顧客の設備投資動向
レーザーテックの主要顧客は、ASML、TSMC、インテル、サムスンなど世界のEUV先端プレーヤーです。これら3社で売上の7割以上を占めています。
2025年度は台湾のファウンドリー向け2ナノメートルプロセス投資の本格化、HBMを中心としたDRAM投資の底堅さにより、半導体製造装置市場は前年度比2%増の4兆8,634億円と予測されています。2026年度は台湾以外の地域でも2ナノメートル投資が開始され、DRAM・HBM投資も引き続き伸びが期待されます。
市場規模の成長見通し
EUVマスク検査装置市場は、2022年の12.5億米ドルから2030年には23.5億米ドルへ成長する見込みで、年平均成長率(CAGR)は10.5%と予測されています。最先端半導体の微細化が進むほど、レーザーテックの検査装置の重要性は高まります。
半導体市場のメガトレンドとレーザーテック
AI需要による半導体市場の拡大
2025年の半導体市場は生成AIやデータセンター向け需要の拡大により大幅に成長し、売上は7,500億ドル超へと伸びました。2026年も市場は26%以上の成長が見込まれています。
AI向け高帯域メモリ(HBM)の需要急増が特に顕著で、SKハイニックスは2026年分のHBMがすでに完売したと述べています。OpenAIのStargateプロジェクトが月間90万DRAMウェハーの需要に達する可能性があり、これは総DRAM生産量の約40%に相当します。
メモリ価格高騰と設備投資拡大
DRAM契約価格は前年比171.8%上昇(2025年Q3)し、消費者向けメモリは2〜3倍に高騰しています。主要DRAMの16ギガビットDDR5の平均スポット価格は、2025年9月20日時点で6.84ドルだったものが、11月19日には24.83ドルに上昇し、12月1日には27.2ドルと高騰が続いています。
この供給逼迫により、メモリメーカーは設備投資を急拡大しています。Micronは2026会計年度の設備投資額を当初の180億ドルから200億ドルへ引き上げ、生産能力の増強を急いでいます。
レーザーテックへの追い風
こうした半導体市場の拡大と設備投資の増加は、レーザーテックにとって大きな追い風となります。最先端プロセスの微細化が進むほど、高精度な検査装置の需要は高まります。EUV検査装置で独占的地位を持つレーザーテックは、この成長トレンドの最大の受益者の一つです。
注意点と今後の展望
顧客集中リスク
レーザーテックの売上の7割以上を、TSMC、インテル、サムスンの3社が占めています。これらの顧客の設備投資動向に業績が大きく左右されるため、顧客集中リスクには注意が必要です。
ただし、これら3社はいずれも世界トップクラスの半導体メーカーであり、最先端プロセスの開発競争を続けています。2026年以降も2ナノメートル、さらにはそれ以下のプロセスへの投資が続く見込みで、レーザーテックの検査装置需要は堅調に推移すると予想されます。
半導体市場のサイクル性
半導体市場は景気サイクルの影響を受けやすく、設備投資も好不調の波があります。2024年の株価急落は、こうしたサイクルの調整局面を反映したものでした。
S&Pグローバル・レーティングは、メモリの供給逼迫は2026年まで続く可能性が高く、正常化は2027〜2028年ごろと予測しています。当面は好調が続くと見られますが、2027年以降の市場環境には注意が必要です。
技術革新の継続
レーザーテックが独占的地位を維持するには、技術革新を続けることが不可欠です。新製品A200HiTが「ゲームチェンジャー」と評価されているのは、技術的優位性を保ち続けている証拠です。
今後も微細化が進む半導体製造に対応した検査技術の開発が求められます。特に、2ナノメートル以下のプロセスでは、さらに高精度な検査が必要になるため、技術開発への継続的な投資が重要です。
長期投資家の視点
今回の株価復調は、短期筋の投機的な売買ではなく、長期的な成長を見込む投資家の買いが中心と見られます。レーザーテックのビジネスモデルは、世界シェアほぼ100%という独占的地位、高い技術障壁、主要顧客との強固な関係という強みがあり、長期的な成長ポテンシャルは高いと言えます。
ただし、2026年度通期の業績予想は売上高2,000億円(前年比20%減)、純利益600億円(同29%減)と、前年からの減少を見込んでいます。市場は2026年度以降の回復を織り込んで株価が上昇しているため、実際の受注動向と業績の確認が重要です。
まとめ
レーザーテックの株価復調は、2025年10月発表の新製品A200HiTが「ゲームチェンジャー」と評価され、受注拡大への期待が高まったことが背景にあります。EUVマスク検査装置で世界シェアほぼ100%を握る同社は、TSMC、インテル、サムスンといった世界トップの半導体メーカーを顧客に持つ独占的企業です。
2026年以降、AI需要の拡大によって半導体市場は26%以上の成長が見込まれ、特にHBMを中心としたメモリ市場の設備投資が活発化すると予想されます。レーザーテックは、この成長トレンドの最大の受益者の一つとなる可能性があります。
今回の株価復調では、短期筋による熱狂的な売買が控えめで、長期的な成長を見込む投資家の買いが中心と見られます。顧客集中リスクや半導体市場のサイクル性には注意が必要ですが、技術的優位性と独占的地位を背景に、息の長い株高となる可能性があります。
参考資料:
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