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by nicoxz

海の電波利用が拡大へ、漁網探知から遭難追跡まで

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はじめに

日本の海における電波の利用範囲が大きく広がろうとしています。総務省は2026年内をめどに電波法関連の省令を改正し、船舶以外にもAIS(船舶自動識別装置)の技術を活用できるようにする方針です。

具体的には、漁網の位置をリアルタイムで把握したり、海で遭難した人を追跡したりすることが可能になります。深刻な人手不足に直面する水産業の生産性向上と、マリンスポーツを含む海の安全確保が主な目的です。この記事では、改正の背景と期待される効果について詳しく解説します。

AIS(船舶自動識別装置)とは何か

世界共通の船舶無線システム

AIS(Automatic Identification System)は、国際VHF帯の電波を利用した船舶の動静を自動で識別するシステムです。船名、識別符号、位置情報、針路、速力などのデータをリアルタイムで周囲の船舶や陸上局と共有します。

国際海事機関(IMO)の規定により、一定以上の大きさの船舶にはAISの搭載が義務付けられています。日本でも500トン以上の船舶や旅客船などに搭載義務があり、海上交通の安全に大きく貢献してきました。

日本の規制と現状の課題

現在の日本の電波法では、AISの設置は原則として船舶に限定されています。つまり、漁網やブイ、個人が携帯するデバイスにAISの技術を搭載して使用することは認められていません。

一方、海外ではすでにAISを船舶以外の用途に活用する動きが広がっています。漁具の位置管理や海上構造物の識別など、さまざまな場面でAIS技術が応用されています。日本はこの点で後れを取っている状況です。

省令改正で何が変わるのか

漁網の位置をリアルタイムで把握

省令改正の柱の一つが、漁網へのAIS関連技術の活用です。漁網にAIS対応の発信器を取り付けることで、漁網がどこにあるかをリアルタイムで確認できるようになります。

従来、漁網の位置管理は漁業者の経験や記憶に頼る部分が大きく、悪天候後に漁網を見失うケースや、他の船舶が漁網に接触する事故も発生していました。電波による位置把握が可能になれば、こうしたリスクを大幅に軽減できます。

遭難者の追跡が可能に

もう一つの重要な変更点は、遭難者の追跡への活用です。海に落ちた人や漂流者の位置を電波で追跡できるようになれば、救助活動の迅速化が期待できます。

現在、海での遭難時にはPLB(Personal Locator Beacon)と呼ばれる個人用救難信号発信器が存在しますが、人工衛星経由のため位置特定に時間がかかる場合があります。AIS技術を活用した近距離での位置追跡が可能になれば、より迅速な救助につながります。

水産業の人手不足とスマート化の流れ

深刻化する漁業の担い手不足

日本の漁業就業者数は一貫して減少が続いています。農林水産省の統計によると、漁業就業者のうち65歳以上の割合は約4割に達しており、高齢化も深刻です。長年の経験や勘に依存してきた漁業技術の継承が困難になりつつあります。

こうした状況の中、ICTやIoTを活用した「スマート水産業」への転換が急務となっています。水産庁も先端技術の活用による水産資源の持続的利用と産業としての成長の両立を目指す施策を推進しています。

各地で進むスマート水産業の取り組み

すでに全国各地でスマート水産業の実証実験が進んでいます。IoTセンサーやブイで水温、塩分濃度、潮流などのデータを収集し、AIで漁場予測を行う取り組みが各地で始まっています。

福井県小浜市ではIoTセンサーによる給餌管理でコスト削減と生産性向上を実現しています。長崎県五島市では水中カメラ映像のAI解析により、定置網漁業の確認工数を約30%削減できる見込みが示されています。今回の電波法関連の省令改正は、こうしたスマート水産業の流れをさらに加速させるものです。

海の安全確保への期待

マリンスポーツの普及と事故リスク

サーフィン、ダイビング、SUP(スタンドアップパドルボード)など、マリンスポーツの人気は年々高まっています。それに伴い、海難事故のリスクも増加しています。海上保安庁の統計では、プレジャーボートやマリンスポーツ関連の海難事故は毎年一定数発生しています。

電波を活用した遭難者追跡技術が普及すれば、万が一の際の生存率向上に直結します。特に沿岸部での活動では、AIS技術を応用した近距離追跡が効果的です。

国際的な動向との整合性

海洋における電波利用の拡大は国際的な潮流でもあります。欧州では漁具へのAIS発信器の搭載を義務化する動きがあり、北米でも同様の検討が進んでいます。日本が省令改正を行うことで、国際的な海洋安全基準との整合性も高まります。

注意点・展望

今回の省令改正にはいくつかの課題も想定されます。まず、漁業者にとっては新たな機器の導入コストが発生します。特に小規模な漁業者への支援策が重要になるでしょう。

また、漁業者の中には漁場情報の秘匿を重視する声もあります。AISは位置情報を発信する仕組みであるため、自分の漁場が他者に知られることへの懸念が導入の障壁になる可能性があります。プライバシーへの配慮と技術的な解決策の両面からの対応が求められます。

今後は、2026年内の省令改正に向けてパブリックコメントの募集や関係者との調整が進む見通しです。改正後は、実際の運用ルールの策定や機器の技術基準の整備なども必要になります。

まとめ

総務省による電波法関連の省令改正は、日本の海における電波利用を大きく前進させる取り組みです。漁網の位置把握による水産業の効率化と、遭難者追跡による海の安全確保という二つの重要な目的を持っています。

人手不足が深刻化する水産業にとって、ICT・IoT技術の活用は待ったなしの課題です。今回の規制緩和を契機に、スマート水産業のさらなる発展が期待されます。海で活動するすべての人々の安全にも寄与する施策として、今後の具体的な制度設計に注目が集まります。

参考資料:

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