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by nicoxz

食事補助の非課税枠が42年ぶり倍増 月7500円時代の活用法

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はじめに

2026年4月、企業の福利厚生に大きな変化が訪れます。従業員への食事補助に適用される非課税枠の上限が、現行の月3,500円から月7,500円へと倍増される見通しです。この見直しは実に42年ぶりとなる歴史的な改正で、令和8年度税制改正大綱に盛り込まれました。

物価高騰が続くなか、企業にとっては従業員の実質的な手取りを増やす「第3の賃上げ」として大きな注目を集めています。また、リモートワーク普及後のオフィス回帰を促す施策としても、食事補助制度が再評価されています。

この記事では、食事補助制度の基本的な仕組みから非課税枠引き上げの背景、企業が押さえておくべきポイントまで詳しく解説します。

食事補助の非課税制度とは

制度の基本的な仕組み

食事補助とは、勤務時間中の食事代を企業と従業員が分担する福利厚生制度です。社員食堂の運営、弁当の支給、食事券の配布など、さまざまな形態があります。

現行制度では、以下の2つの要件を満たせば、企業が負担した食事補助額は非課税となります。

  1. 従業員が食事代の50%以上を自己負担すること
  2. 企業の補助額が月額3,500円(税抜)以下であること

この条件を満たさない場合、食事補助は「給与」として扱われ、所得税や社会保険料の課税対象になります。つまり、非課税の枠内で食事補助を提供できれば、企業・従業員の双方にとって税負担を抑えながら実質的な待遇改善が可能になるのです。

42年ぶりの改正が実現した背景

月3,500円という非課税枠は、1984年(昭和59年)に設定されて以来、一度も見直されていませんでした。20日勤務で計算すると1日あたりわずか175円で、現在の物価水準では社員食堂のメニュー1品にも満たない金額です。

経済界からは長年、枠の引き上げを求める声が上がっていました。2025年12月の税制改正大綱でようやく「月7,500円への引き上げ」が明記され、42年越しの改正が実現する運びとなりました。

物価上昇率を踏まえると、1984年当時の3,500円は現在の価値で7,000円以上に相当するとされます。今回の引き上げは実質的に「現在の物価に合わせた適正化」ともいえるでしょう。

企業と従業員への影響

「第3の賃上げ」としての効果

エデンレッドジャパンなどが提唱する「第3の賃上げ」とは、基本給のアップ(第1の賃上げ)やボーナスの増額(第2の賃上げ)に加え、福利厚生の充実による実質的な手取り向上を指す考え方です。2026年2月には「#第3の賃上げアクション2026」プロジェクトも始動しています。

非課税枠が7,500円に引き上げられた場合、企業が月7,500円を補助し、従業員も同額を負担すると、月15,000円分の食事が実質半額で利用可能になります。年間では従業員1人あたり最大9万円の非課税メリットが生まれる計算です。

給与として同額を支給した場合は所得税・住民税・社会保険料が発生しますが、食事補助なら企業・従業員の双方にとって税負担が軽減されます。エデンレッドジャパンの調査では、9割の従業員が非課税上限アップを歓迎し、補助額を引き上げると回答した企業も約9割にのぼりました。

出社回帰の切り札として

コロナ禍を経てリモートワークが定着した一方、多くの企業がオフィス勤務への回帰を模索しています。LINEマンガを運営するLINE Digital Frontier社のように、充実した食事支援をオフィスの魅力として活用する動きが広がっています。同社では無料の朝食提供や割引価格のランチ、社内カフェテリアの運営といった施策で、従業員のオフィス出社意欲を高めています。

「出社したくなるオフィス」をつくるうえで、食の充実は極めて効果的な施策です。非課税枠の拡大により、こうした施策のコストパフォーマンスが飛躍的に向上します。出社率の向上は、社内コミュニケーションの活性化やチームワークの強化といった副次的な効果も期待でき、企業の生産性向上にもつながるでしょう。

多様な食事補助サービスの台頭

非課税枠の引き上げを追い風に、さまざまな食事補助サービスが注目を集めています。

  • 食事券型(チケットレストラン等): 全国25万店舗以上の加盟飲食店で利用可能。外勤やリモートワークの従業員にも公平に対応できる
  • 社内設置型(オフィスコンビニ等): オフィス内に食品や飲料を設置する方式。手軽に導入でき、小規模企業にも向いている
  • デリバリー型: 弁当やケータリングを定期配送する方式。社員食堂のない企業に人気が高い
  • 社員食堂運営: 大規模企業向け。メニューの充実で従業員満足度を高められる

特に食事券型のサービスは、勤務場所を問わず全従業員が公平に恩恵を受けられる点が評価され、導入企業数が急速に伸びています。

注意点・展望

導入・運用時の注意点

非課税枠が拡大されても、制度設計を誤ると課税対象になる可能性があります。以下の点に注意が必要です。

  • 従業員の自己負担割合: 食事代の50%以上を従業員が負担する必要があります。企業負担が多すぎると、補助額の全額が課税対象になります
  • 現金支給はNG: 食事補助を現金で支給した場合、非課税の適用外です。食事の現物支給や食事券など、所定の方法で提供する必要があります
  • 全従業員への公平適用: 特定の役職や部署だけに提供する場合、福利厚生費として認められない可能性があります
  • 施行時期の確認: 2026年4月施行が有力ですが、2027年1月になる可能性もあるため、最新情報の確認が重要です

今後の展望

食事補助制度は人材獲得競争の重要なツールとなりつつあります。特に若手人材の採用・定着において、給与だけでなく福利厚生の充実度が企業選びの重要な判断基準になっています。

今後はAIやデジタル技術を活用した食事補助の個別最適化や、健康経営との連携(栄養バランスを考慮したメニュー推奨など)といった方向への発展も見込まれます。

まとめ

食事補助の非課税枠が42年ぶりに月3,500円から7,500円へ引き上げられることで、企業の福利厚生は新たなステージに入ります。「第3の賃上げ」としての実質手取り向上、出社回帰の促進、人材確保の強化など、多方面での効果が期待されます。

企業の人事・総務担当者は、施行時期を見据えて制度の新規導入や既存制度の見直しを進めることが推奨されます。従業員にとっても、自社の食事補助制度を改めて確認し、最大限に活用する良い機会です。

参考資料:

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