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by nicoxz

明治大学が42年ぶり系列校新設、少子化時代の大学付属校戦略

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はじめに

2026年4月、東京都世田谷区にある日本学園中学校・高等学校が「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」へと生まれ変わります。明治大学にとっては、1984年の明治大学付属中野八王子中学・高等学校の開校以来、実に42年ぶりとなる系列校の誕生です。

この動きの背景には、2035年に18歳人口が100万人を割るとされる「超少子化」の波があります。大学間の学生獲得競争が激化するなか、有力私立大学が系列校を通じた一貫教育に力を入れる動きが加速しています。本記事では、明治大学の系列校新設の狙いと、偏差値が急上昇した日本学園の変貌、そして私立大学の付属校戦略について解説します。

日本学園から明大世田谷へ——42年ぶりの系列校誕生

歴史ある男子校が共学の付属校に

日本学園は1885年(明治18年)に創立された歴史ある男子校です。しかし近年は少子化の影響もあり、志願者数の減少に直面していました。そこで2022年、明治大学との系列校化が正式に発表されました。2026年4月からは校名を「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に変更し、同時に男女共学化を実施します。

明治大学にはこれまで3つの系列校がありました。直系付属校の明治大学付属明治中学校・高等学校(調布市)、明治大学付属中野中学校・高等学校(中野区)、そして明治大学付属中野八王子中学校・高等学校(八王子市)です。今回の明大世田谷の誕生により、系列校は4校体制となります。

偏差値40台から60超へ——驚異的な急騰

系列校化の発表は、入試市場に劇的なインパクトを与えました。2022年度の日本学園の偏差値は40台でしたが、明大系列校化が発表された翌年の2023年度入試では偏差値が一気に60へと跳ね上がりました。2024年度にはさらに上昇して63に達しています。

志願者数の変化はさらに衝撃的です。4大模試における志願者数は、発表前年の合計28人に対し、発表翌年には約1,111人と約40倍に激増しました。2023年度入試では出願者数が前年比6倍以上となり、第2回入試では倍率12.7倍、第3回入試では11.4倍という高倍率を記録しています。

明治大学への推薦進学の仕組み

卒業生の約7割が明治大学へ推薦入学できる体制の構築が目指されています。ただし、明治大学への付属高等学校推薦入学試験による受け入れ開始は2029年度からの予定です。つまり、2026年度入学の中学1年生が高校を卒業する時期に合わせた制度設計となっています。

残りの約3割の生徒は、他大学への進学を目指すことになります。このような「半付属」的な位置づけにより、内部進学の安心感と外部受験への挑戦を両立させる狙いがあります。

なぜ今、大学付属校が人気なのか

志願者数No.1の明治大学ブランド

明治大学は、リクルート進学総研の「進学ブランド力調査」で関東甲信越エリアにおける「志願したい大学」ランキングで2年連続1位を獲得しています。2025年度の一般選抜志願者数は11万5,323人に達し、6年ぶりに11万人の大台を超えました。

この圧倒的な人気を持つ大学の付属校に入学できるとなれば、受験生と保護者が殺到するのは自然な流れです。大学入試の競争を回避しつつ、人気大学への進学を確保できるというメリットは、保護者にとって大きな魅力となっています。

大学入試改革と「早期確定」志向

近年、大学入試の多様化・複雑化が進むなかで、「早く進学先を決めたい」という受験生の心理が強まっています。総合型選抜や学校推薦型選抜の拡大により、入学する大学の決定時期が早期化する傾向があります。

付属校からの内部進学は、この「早期確定」志向の究極的な形態といえます。中学入学の時点で大学進学がほぼ確約されるため、受験勉強に追われることなく、部活動や課外活動、探究学習などに打ち込める環境が整います。

他大学も系列校拡充に動く

明治大学だけでなく、他の有力私立大学も系列校の拡充に動いています。学校法人立命館は首都圏や東海圏の中学・高校を提携校や付属校にする検討を始めたことが報じられています。関西を地盤とする大学が、首都圏の生徒を囲い込む戦略に出ているのです。

また、既存の付属校においても、大学との連携プログラムの充実や、大学施設の活用など、一貫教育のメリットを強化する取り組みが各校で進められています。

注意点・展望

「ブランド先行」で教育の質は追いつくか

偏差値や志願者数の急上昇は、明治大学というブランド力によるところが大きいのが実情です。しかし、本当に重要なのは教育内容の充実です。新しい付属校として、明治大学の教育理念をどのように中高の現場に落とし込んでいくかが今後の課題となります。

共学化に伴うカリキュラムの刷新、教員の採用・研修体制の整備、大学との連携授業の設計など、取り組むべき課題は山積しています。名前だけの付属校にならないためには、教育の質をブランド力に見合うレベルまで引き上げる努力が欠かせません。

少子化がもたらす学校間競争の激化

18歳人口は現在約109万人ですが、2035年には100万人を割り、2040年には約74万人にまで減少すると予測されています。大学進学者数も2040年には約51万人となり、2017年比で約12万人の減少が見込まれます。

文部科学省は令和6年度からの5年間を「集中改革期間」として、私立大学の構造改革を本格始動しました。この厳しい環境のなかで、付属校の存在は大学にとって安定的な学生確保の「防波堤」となります。今後も有力大学による系列校の新設・拡充の動きは続くと予想されます。

まとめ

明治大学付属世田谷中学校・高等学校の誕生は、少子化時代における大学の生き残り戦略を象徴する出来事です。偏差値40台だった学校が明治大学の名を冠することで60超へと急騰した事実は、大学ブランドの持つ力の大きさを物語っています。

一方で、ブランド力に教育の質が追いついていくかどうかは、今後数年間の取り組みにかかっています。受験生や保護者は、名前の響きだけでなく、実際の教育内容やカリキュラム、卒業生の進路状況などを冷静に見極めることが大切です。超少子化時代の学校選びは、ますます情報収集力と判断力が問われる時代に入っています。

参考資料:

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