メタ新社長にトランプ政権元幹部マコーミック氏が就任
はじめに
米メタ・プラットフォームズは2026年1月12日、トランプ第1次政権で国家安全保障担当の大統領副補佐官を務めたディナ・パウエル・マコーミック氏が、社長兼副会長に就任したと発表しました。
マコーミック氏はゴールドマン・サックス出身で、2025年4月から12月までメタの取締役を務めていました。今回の人事は、AI(人工知能)インフラへの大規模投資を進めるメタにとって、戦略構築や投資実行を加速させる狙いがあります。
本記事では、マコーミック氏の経歴とメタの戦略、そしてトランプ政権との関係強化の背景について解説します。
ディナ・パウエル・マコーミック氏の経歴
エジプトからアメリカへ
ディナ・パウエル・マコーミック氏は1973年6月12日、エジプト・カイロでコプト教徒の家庭に生まれました。幼少期に家族とともにアメリカに移住し、テキサス州ダラスで育ちました。英語を全く話せない状態で渡米しましたが、努力を重ね、テキサス大学オースティン校を優等で卒業しています。
大学卒業後はロースクールへの進学が決まっていましたが、テキサス州選出のケイ・ベイリー・ハッチソン上院議員のインターンシップに参加したことが転機となりました。政治の世界に魅了され、結局ロースクールには進まず、共和党全国委員会などで経験を積みました。
ゴールドマン・サックスでの16年
2007年にゴールドマン・サックスに入社したマコーミック氏は、金融のバックグラウンドがなかったにもかかわらず、急速に頭角を現しました。2010年にはパートナーに昇格し、経営委員会のメンバーにもなりました。
ゴールドマン・サックスでは、ソブリン・ファンド部門の責任者として、世界の政府系ファンドとの関係構築に尽力しました。2019年のサウジアラムコの大規模IPO(新規株式公開)にも重要な役割を果たしています。
また、ゴールドマン・サックス財団の会長として、「10,000 Women」「10,000 Small Businesses」「One Million Black Women」といった社会貢献プログラムを主導し、世界中の女性起業家や中小企業経営者を支援してきました。
トランプ政権での要職
2017年にはトランプ第1次政権に参加し、国家安全保障担当の大統領副補佐官を務めました。中東政策を中心に、政権初年度の外交政策に影響を与えました。トランプ大統領の長女イバンカ氏との親交でも知られています。
2018年にゴールドマン・サックスに復帰した後、2023年にはBDTアンドMSDパートナーズに移籍し、副会長兼グローバル・クライアント・サービス担当社長を務めていました。
メタのAI投資戦略
6000億ドル規模の投資計画
マコーミック氏の社長就任と同日、メタは「メタ・コンピュート」という新たなAIインフラ構築イニシアチブを発表しました。マーク・ザッカーバーグCEOは、メタが今後10年間で数十ギガワット、長期的には数百ギガワット以上のコンピューティング能力を構築する計画を明らかにしました。
メタは2028年までにアメリカのインフラと雇用に6000億ドル(約90兆円)を投資する方針を示しています。2026年の設備投資は少なくとも1000億ドルに達する見込みで、2025年から大幅な増加となります。
エネルギー確保への取り組み
大規模なAIデータセンターの運営には膨大な電力が必要です。メタは2035年までに6.6ギガワットの原子力発電を確保する計画を発表しました。具体的には、オハイオ州とペンシルベニア州のビストラ原子力発電所から2600メガワット以上の電力を購入し、オクロ社のオハイオ州での1.2ギガワット発電所建設を支援し、テラパワー社の新型原子炉開発にも資金を提供します。
マコーミック氏の役割
マコーミック氏はメタの経営チームの一員として、戦略と実行を主導します。特に注目されるのは、コンピューティングおよびインフラチームとの連携と、「政府やソブリン(政府系ファンド)との協力によるメタのインフラ構築、展開、投資、資金調達」への関与です。
ゴールドマン・サックス時代に培った政府系ファンドとの関係構築能力は、AIインフラへの大規模投資を実現する上で大きな強みとなります。
メタとトランプ政権の関係
修復された関係
ザッカーバーグCEOとトランプ大統領の関係は、2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件をきっかけに悪化していました。メタはトランプ氏のアカウントを2年間停止し、両者の関係は冷え込みました。
しかし、2024年7月のトランプ氏暗殺未遂事件後にザッカーバーグ氏が見舞いの電話をかけたことを契機に、関係修復が始まりました。2024年11月にはザッカーバーグ氏がトランプ氏のフロリダ州マール・ア・ラーゴで開かれた感謝祭ディナーに出席し、関係改善が公になりました。
政策転換の連続
2025年1月、メタは大きな政策転換を発表しました。サードパーティによるファクトチェック体制を廃止し、X(旧ツイッター)で採用されているコミュニティノート方式に移行することを決定しました。また、移民や性自認に関するトピックへの制限を緩和し、政治的コンテンツをユーザーのフィードに再び表示する方針も示しました。
人事面でも、共和党と関係の深いジョエル・カプラン氏をグローバル・アフェアーズ担当社長に起用しました。さらに、トランプ氏の盟友でUFC CEOのダナ・ホワイト氏を取締役に任命しています。
トランプ氏の反応
トランプ大統領はマコーミック氏の社長就任を祝福し、Truth Socialで「ディナ・パウエル・マコーミック氏がメタの新社長に任命されたことを祝福する。マーク・Zによる素晴らしい選択だ!」と投稿しました。
マコーミック氏の夫であるデービッド・マコーミック上院議員は、ペンシルベニア州に約1000億ドルの投資をもたらすためにトランプ大統領と協力してきた人物です。
注意点・展望
ビジネスと政治のバランス
メタの一連の政策転換について、元メタ公共政策ディレクターのケイティ・ハーバス氏は「これは言論の自由の問題ではなく、ビジネスの問題だ」と指摘しています。AI分野での競争が激化する中、メタにとって政府との良好な関係は、データセンター建設や規制対応において重要な意味を持ちます。
しかし、従業員の間では創業者の政策転換に対する懸念も広がっています。会社の評判への影響を心配する声もあり、ザッカーバーグ氏のリーダーシップは試されています。
AIインフラ競争の行方
テック大手各社がAIインフラへの投資を加速させる中、メタの動きは業界全体に影響を与える可能性があります。マコーミック氏の起用は、政府や政府系ファンドからの資金調達を視野に入れた戦略的な判断といえます。
メタは2026年までに1ギガワット以上のAIコンピューティング能力をオンライン化する計画で、130万個以上のGPUを確保しています。この規模の投資が成功すれば、AI分野でのメタの競争力は大きく向上するでしょう。
まとめ
メタのディナ・パウエル・マコーミック社長就任は、同社のAI戦略とトランプ政権との関係強化の両面で重要な意味を持ちます。ゴールドマン・サックスでの16年間の経験と、トランプ政権での要職経験を持つマコーミック氏は、メタのインフラ投資を加速させる上で理想的な人材といえます。
メタは6000億ドル規模のインフラ投資を通じて、AI時代の覇権を狙っています。政府や政府系ファンドとの協力関係構築は、この野心的な計画を実現するための鍵となります。
一方で、政策転換に対する社内外の批判もあり、ザッカーバーグ氏のリーダーシップは引き続き注目されます。テック業界と政治の関係がますます緊密になる中、メタの動向は業界全体の方向性を示す指標となるでしょう。
参考資料:
- Meta names former Trump advisor Dina Powell McCormick as president, vice chair - CNBC
- Dina Powell McCormick Joins Meta as President and Vice Chairman - Meta Newsroom
- Meta launches new “Meta Compute” initiative to build AI infrastructure - Axios
- Dina Powell - Wikipedia
- Meta says it will end fact-checking - NPR
- Meta’s big AI spending blitz will continue into 2026 - CNBC
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