日経平均430円高の反発、AI関連株と関税判決が焦点
はじめに
2026年2月24日、東京株式市場で日経平均株価が反発し、午前終値は前週末比430円85銭(0.76%)高の5万7256円55銭をつけました。上げ幅は一時500円を超える場面もあり、市場には安堵感が広がりました。
前週末に日経平均が600円あまり下落していたことから、自律反発狙いの買いが優勢になったことが直接の要因です。しかし、その背景には米連邦最高裁によるトランプ関税の違憲判決、AI関連株の回復、そして第2次高市早苗内閣の経済政策への期待など、複合的な要因が絡み合っています。
本記事では、この日の株価反発の背景にある3つの要因を整理し、今後の市場見通しについて解説します。
AI関連「黒子株」が相場をけん引
アドバンテストや古河電工が上昇
24日の東京市場では、アドバンテスト(6857)や古河電気工業(5801)などのAI関連銘柄が上昇し、相場全体を押し上げました。特に注目されたのは、AIの「黒子」と呼ばれるサプライチェーン関連企業の堅調さです。
アドバンテストは半導体テスト装置の世界トップメーカーで、AI向けGPU需要の拡大を背景に業績が急伸しています。2026年3月期の連結純利益予想は3度にわたる上方修正を経て3285億円に達し、前期比71%増という驚異的な成長を見せています。
古河電気工業もデータセンター向け光関連製品の好調を受け、2026年3月期の営業利益予想を530億円から560億円に上方修正しました。年間配当金も120円から160円に引き上げるなど、業績好調が鮮明です。
ハイパースケーラーの投資継続が追い風
AI関連株が底堅さを維持している最大の理由は、米国の大手クラウド事業者(ハイパースケーラー)によるAIインフラへの巨額投資が2026年も継続する見通しであることです。
データセンターの新設・拡張に伴い、半導体テスト装置や光ファイバー製品への需要は高水準を維持すると予想されています。暦年2026年の半導体市場は、前年に引き続きAI関連向け半導体が市場成長をけん引する見込みで、関連企業の受注は引き続き好調です。
アナリストの間では、AI関連プレイヤー間の競争が激化しても、テスト装置メーカーはどの陣営にも製品を供給する立場にあるため、有利なポジションを維持できるとの評価が広がっています。
トランプ関税の違憲判決と新たな10%関税
最高裁が大統領権限の逸脱と判断
2月20日、米連邦最高裁判所はトランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課した相互関税について、大統領権限の逸脱に当たるとして違憲の判決を下しました。判決は6対3で、IEEPAは関税賦課の権限を大統領に与えていないという判断です。
この判決により、日本を含む多くの国に課されていた相互関税が無効となりました。IEEPA関税に基づく徴収額は約1330億ドル(約21兆円)に達しており、還付の問題は今後の司法判断に委ねられることになります。
通商法122条による「プランB」
しかし、トランプ政権はIEEPA関税の失効と同時に、1974年通商法第122条に基づく全世界一律10%の関税を24日午前0時1分(米東部時間)に発動しました。通商法122条は、国際収支の重大な赤字を理由に大統領が最大15%の関税を最長150日間課すことを認めた法律です。
さらにトランプ大統領は翌21日、この新関税を10%から15%に引き上げると表明しました。これは通商法122条で許容される上限いっぱいの税率です。
日本市場への影響
24日の日経平均が反発した背景の一つには、最高裁判決によってIEEPAに基づく高率の相互関税が撤廃され、当面は通商法122条による15%関税に置き換わったことがあります。多くの国にとっては、従来の相互関税よりも税率が低下した形です。
ただし、通商法122条には150日間という期限があり、その間にトランプ政権が恒久的な法的根拠を模索することは確実です。市場は短期的な安堵と中長期的な不透明感の間で揺れ動いています。
第2次高市内閣の経済政策への期待
衆院選大勝を受けた政策推進力
前週の2月18日に第2次高市早苗内閣が発足したことも、市場心理の改善に寄与しています。先の衆議院選挙で自民党が316議席を獲得し、連立を組む日本維新の会と合わせて議席の3分の2を超える圧勝となったことで、政策推進力への期待が高まっています。
高市首相は初閣議で全18閣僚に指示書を交付し、3つの柱からなる「総合経済対策」の策定を指示しました。具体的には、生活安全保障・物価高対策、危機管理投資・成長投資による強い経済の実現、そして防衛力と外交力の強化です。
消費税減税や増配政策への注目
家計支援策としては、ガソリン税の旧暫定税率の「速やかな廃止」や、冬季の電気・ガス料金補助が打ち出されています。さらに、食料品に対する消費税の期間限定減税にも言及しており、所得税の基礎控除等のインフレに応じた調整も年内に制度設計を完了する方針です。
これらの積極財政路線が景気や企業業績の追い風になるとの見方が広がり、24日の買い材料の一つとなりました。
注意点・展望
短期的なリスク要因
反発したとはいえ、市場には複数のリスク要因が残っています。まず、通商法122条に基づく15%関税は24日から発動されており、日本企業の対米輸出にはマイナスの影響が生じます。特に自動車関連企業への影響が懸念されます。
日本は2025年7月の合意で、関税を25%から15%に抑える見返りに5500億ドル(約80兆円)の米国投資を約束していますが、最高裁判決を受けてこの合意の前提が変わりつつあるとの指摘もあります。
AI関連株の変動リスク
AI関連株は業績好調が続いていますが、米国市場でのAI普及を巡る懸念が浮上する場面もあります。前週末の日経平均600円安の一因にはこうしたセンチメントの悪化もありました。AI投資の持続性に対する市場の見方は、引き続き株価を大きく左右する要因です。
150日後の関税動向
通商法122条の150日間の期限は7月下旬に到来します。それまでにトランプ政権が議会と協力して恒久的な関税措置の法的根拠を整備できるかどうかが、中期的な最大の注目点です。
まとめ
2月24日の日経平均株価の反発は、前週末の急落からの自律反発に加え、AI関連株の堅調さ、トランプ関税の違憲判決による一時的な安堵感、第2次高市内閣の経済政策への期待という3つの要因が重なった結果です。
ただし、通商法122条に基づく15%の新関税が同日発動されるなど、不透明感は依然として残っています。投資家にとっては、AI関連の業績動向、7月の通商法122条の期限到来、高市政権の経済対策の具体化という3つのポイントを継続的にウォッチすることが重要です。
参考資料:
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