日経平均続落か、トランプ15%関税と米株急落の影響を解説
はじめに
2026年2月24日、3連休明けの東京株式市場は厳しい展開が予想されています。連休中に米国市場で大きな動きがあり、ダウ工業株30種平均は約814ポイント(1.7%)の急落を記録しました。背景にあるのは、トランプ大統領によるグローバル関税の15%への引き上げです。米最高裁がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税を違憲と判断したにもかかわらず、大統領は別の法的根拠を用いて即座に新たな関税措置を発動しました。一方で、高市早苗首相が2月20日に行った施政方針演説では「責任ある積極財政」が改めて打ち出されており、押し目買いの材料となる可能性もあります。本記事では、これらの動向を詳しく解説します。
米最高裁判決とトランプ関税の急展開
IEEPA関税の違憲判決
2月20日、米連邦最高裁判所は歴史的な判決を下しました。「Learning Resources, Inc. v. Trump」事件において、6対3の多数意見でIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づくトランプ大統領の関税賦課を違憲と判断したのです。ロバーツ首席判事が多数意見を執筆し、ソトマイヨール、ケーガン、ゴーサッチ、バレット、ジャクソンの各判事が賛同しました。
判決の要点は明確です。関税は事実上の課税行為であり、合衆国憲法第1条により課税権は連邦議会に専属するとされました。トランプ大統領がIEEPAを根拠に課してきた関税は、2025年12月中旬までに約1,300億ドルの税収をもたらしていましたが、その法的基盤が根底から覆されたことになります。
Section 122による即座の反撃
しかし、トランプ大統領は判決から間を置かず反撃に出ました。2月20日中に1974年通商法第122条を根拠とする新たな関税措置に署名し、まず10%のグローバル関税を発動しました。さらに翌22日には、Truth Socialへの投稿を通じてこの税率を15%に引き上げると発表しました。この15%という数字は、同条が大統領に認める上限税率に該当します。
Section 122は「大規模かつ深刻な国際収支赤字」に対処するために大統領が関税を課す権限を定めたものですが、過去に一度も発動された前例がない条項です。さらに重要な制約として、この関税は150日間の時限措置であり、延長には議会の承認が必要となります。非差別的に適用しなければならないという条件も付されています。
一部の通商法専門家は、米国には該当するような「基本的な国際収支問題」が存在しないため、Section 122の発動自体が違法であるとの見解を示しています。しかし、新関税は2月24日午前0時1分(ワシントン時間)に発効する予定であり、市場は法的論争の帰結を待たずして影響を受けることになります。
米国株市場の大幅下落
こうした関税を巡る混乱が直撃したのが、2月23日月曜日の米国株式市場です。ダウ工業株30種平均は約814ポイント(1.7%)下落し、48,804ドルで取引を終えました。S&P 500指数も1.0%安の6,837ポイント、ハイテク株中心のナスダック総合指数は1.1%安の22,627ポイントとなりました。
下落の要因は関税問題だけではありません。米北東部を襲った冬季暴風雪「フェルナンド」による航空・運輸セクターへの打撃や、AIスタートアップ企業による新サービス発表に伴うテクノロジー株への売り圧力も重なりました。しかし、最大の売り材料はやはりトランプ関税の15%引き上げであり、投資家のリスク回避姿勢が鮮明になった一日でした。
日本株への影響と高市政権の経済政策
日経平均への波及経路
3連休前の2月21日時点で、日経平均株価は56,800円台で推移していました。2月に入ってからは57,000円前後を挟んだもみ合いが続いていましたが、今回の米国株急落は複数の経路を通じて日本株に下落圧力をかける構図となっています。
第一に、米国株との連動性です。グローバルな投資家のリスク回避姿勢が強まると、日本株も例外なく売り対象となります。特にダウの800ドル超の下落は、先物市場を通じて東京市場の寄り付きから強い売り圧力をもたらすと見られます。
第二に、為替リスクです。トランプの新関税発動は米ドル安要因として作用する可能性があり、円高が進行すれば輸出企業の業績見通しが悪化します。2月に入ってから既に円高傾向が続いており、これが日経平均の上値を重くする一因となっていました。
第三に、直接的な貿易への影響です。15%のグローバル関税は日本からの対米輸出にも適用されます。自動車、電子部品、機械類など日本の主力輸出品目のコスト競争力が低下することへの懸念が、関連銘柄の株価を圧迫する可能性があります。
高市政権の「責任ある積極財政」
一方で、売り一辺倒とならない可能性を示唆する材料もあります。高市早苗首相は2月20日に第221回国会で施政方針演説を行い、経済政策の基本方針を明確に示しました。
演説の中核を成すのは「責任ある積極財政」への政策転換です。高市首相は「日本の潜在成長率は主要先進国と比べて低迷しているが、技術革新力や労働の効率性は他国と遜色ない。圧倒的に足りないのは資本投入量、すなわち国内投資だ」と指摘しました。その上で、複数年度予算や長期的な基金による投資促進策を大胆に進めると宣言しています。
具体的な経済対策としては、2025年11月に閣議決定された総合経済対策(総額約21.3兆円)が既に動き始めています。ガソリン税の暫定税率廃止(2025年12月末実施、年間約1.2万円の家計負担軽減)、電気・ガス料金の支援(2026年1〜3月、1世帯あたり約7,000円の軽減)、そして税制改正による約1.2兆円規模の減税(納税者1人あたり約2〜4万円の負担軽減)が柱です。
さらに注目すべきは、2月18日の「高市内閣2.0」発足時の記者会見での発言です。高市首相は「経済成長を実現するために必要な財政出動をためらうべきではない」と述べつつ、「戦略的な財政出動によって成長率の範囲内に債務残高の伸びを抑える」と財政規律への配慮も示しました。令和8年度予算では新規国債発行額を2年連続で30兆円以下に抑える方針です。
この「積極財政だが財政規律も維持する」という姿勢は、市場から一定の評価を得ています。いわゆる「高市トレード」と呼ばれる株式市場での期待感が、下落局面での押し目買いを誘発する可能性があります。
注意点・展望
24日の東京市場は、米国株の大幅下落を織り込む形で続落スタートとなる可能性が高いと言えます。しかし、いくつかの要因が下値を支える展開も考えられます。
まず、Section 122に基づく15%関税には150日間の時限措置という制約があります。議会の延長承認が得られなければ自動的に失効するため、恒久的な措置ではありません。また、法的な有効性そのものへの疑義も呈されており、新たな司法判断が下される可能性もあります。
次に、高市政権の積極財政路線は内需関連銘柄にとっての支援材料です。公共投資の拡大やインフラ整備関連の予算増額は、建設、素材、インフラ関連セクターの業績見通しを改善させる方向に作用します。
今週は米国ではエヌビディアやセールスフォースの決算発表が予定されており、AI関連銘柄への影響も注視が必要です。為替動向と合わせて、日経平均は56,000円台前半が当面の下値メドとして意識される展開が見込まれます。
まとめ
2026年2月24日の東京株式市場は、トランプ大統領による15%グローバル関税と米国株の急落という二重の逆風に直面しています。最高裁がIEEPA関税を違憲と判断した直後にSection 122を用いた新たな関税を発動するという異例の展開は、市場の不透明感をかつてないほど高めています。一方で、高市政権の「責任ある積極財政」に基づく経済対策は中長期的な下支え材料となり得ます。投資家にとっては、短期的なリスク管理と中長期的な政策効果の見極めが求められる局面です。
参考資料
- Trump to hike global tariffs to 15% from 10%, ‘effective immediately’ - CNBC
- Supreme Court strikes down most of Trump’s tariffs in a major blow to the president - NBC News
- Supreme Court Strikes Down IEEPA Tariffs: What Importers Need to Know Now - Holland & Knight
- Trump’s new tariffs plan: How Section 122 and the 10% shift works - Axios
- Stock market today: Dow drops 800 points as S&P 500, Nasdaq slide - Yahoo Finance
- 日経平均株価 週間見通し(2月最終週) - IG証券
- 高市内閣総理大臣施政方針演説 - 首相官邸
- 高市首相、「責任ある積極財政」で決意表明 - Bloomberg
- 高市首相、施政方針演説 力強い経済、戦略を明確に - 福井新聞
- Trump tariff chaos: What does 15% levy mean for trade deals the US signed? - Al Jazeera
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