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by nicoxz

NVIDIA決算がAI相場の命運を握る――2月最終週の注目点

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はじめに

2026年2月最終週、世界の株式市場が固唾をのんで見守るイベントが控えています。2月25日(米国時間)に発表されるNVIDIAの2026会計年度第4四半期(2025年11月〜2026年1月期)決算です。時価総額で世界最大の企業となったNVIDIAの業績は、AI関連銘柄だけでなく、S&P 500を含む主要指数全体の方向性を左右する力を持っています。さらに今週は、ドイツのメルツ首相による初の訪中、米最高裁が下した関税違憲判決の余波など、地政学的にも重要なイベントが重なります。本記事では、NVIDIA決算のプレビューを中心に、2月最終週の市場を動かす要因を独自調査に基づいて整理します。

NVIDIA Q4決算プレビュー――アナリスト予想と注目の焦点

市場コンセンサスが示す高い期待値

ウォール街のアナリストは、NVIDIAの第4四半期売上高を約657億ドル(前年同期比67%増)、1株当たり利益(EPS)を1.53ドル(同約72〜80%増)と予想しています。データセンター部門の売上は600億ドル近くに達し、ゲーミング部門は約40億ドルで安定推移すると見られています。粗利益率は75%前後が見込まれ、依然として高い収益性が維持される見通しです。

予測市場のPolymarketでは、NVIDIAがアナリスト予想を上回る確率を95%と織り込んでおり、ゴールドマン・サックスも「ビート・アンド・レイズ(予想超え+ガイダンス上方修正)」を予想しています。これは、ハイパースケーラー各社の設備投資計画、AIソフトウェア企業(OpenAI、Anthropicなど)からの需要を根拠としたものです。

真の焦点はフォワードガイダンス

しかし、今回の決算で最も重要なのは、過去の数字そのものではありません。市場が注視しているのは、2027会計年度第1四半期(2026年2〜4月期)のガイダンスです。AI投資サイクルが「構造的な成長」なのか「ピークに近づいている」のかを見極めるための材料として、経営陣のコメントが決定的な意味を持ちます。

特に注目されるのは以下の3点です。

第一に、Blackwellアーキテクチャの供給・需要動向です。ジェンスン・ファンCEOは、B200およびGB200チップの需要を「チャートから外れるほど(off the charts)」「狂気的(insane)」と表現しており、2026年半ばまで実質的に完売状態だと確認しています。経営陣が2026年を通じた350億ドル規模のBlackwell・Rubinパイプラインに引き続き自信を示せるかが鍵となります。

第二に、顧客集中リスクです。NVIDIAの売上の50%超が少数の顧客に集中しており、マイクロソフトだけで約20%を占めるとされています。仮に1社でも設備投資を削減すれば、売上に直接的な影響が及ぶリスクがあります。

第三に、中国向け輸出の行方です。トランプ大統領がH200チップの中国向け輸出を認める方針を示したことで、中国市場の改善がNVIDIA株の追加的な上昇材料になる可能性が浮上しています。一方で、中国はHuaweiのAscendチップを中心に自国での半導体生産を急拡大しており、2026年に先端チップ生産量を3倍にする計画です。

ハイパースケーラーのAI投資と供給の限界

NVIDIAの業績を支えるハイパースケーラー各社は、2026年のAIインフラ投資に合計5,000億ドル超を計画しています。内訳はAmazonが約1,000億ドル、Microsoftが800億ドル、Googleが750億ドル、Metaが650億ドルと、前例のない規模です。Metaは設備投資を1,150〜1,350億ドルに拡大する計画で、OpenAIは10GW規模のデータセンター展開を計画しています。

こうした「需要の爆発」に対して、供給チェーンの物理的な制約がボトルネックになりつつあります。モルガン・スタンレーの調査では、顧客が10万ユニット単位のBlackwellチップを要求しており、企業向けバックログが深刻化しています。NVIDIAの成長を制約するのは資金ではなく、ハードウェア生産の物理的限界かもしれないという指摘は、逆説的にAI需要の強さを裏付けています。

今週の市場を動かすもう一つの要因――地政学とマクロ環境

メルツ独首相の訪中と欧中経済関係

2月25〜26日、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が就任後初めて中国を訪問します。中国の李強首相の招待によるもので、Bayer、Volkswagen、Mercedes-Benz、BMW、Adidas、Siemens、Commerzbankなど、DAX上場企業トップを含む大規模な経済使節団が同行します。

この訪問の背景には、中国が2025年にドイツの最大の貿易相手国に返り咲いたという事実があります。両国間の輸出入総額は2,518億ユーロに達しました。さらに、ドイツの対中直接投資は2025年(1〜11月)に70億ユーロ超と4年ぶりの高水準を記録し、前年比55.5%増となっています。

メルツ首相は『Foreign Affairs』誌への寄稿で「デカップリングが正しい道だと信じるのは誤りだ」と述べ、「原則的リアリズムに基づいて北京と対話する」姿勢を示しています。ただし、中国のEV台頭によるドイツ自動車メーカーへの競争圧力や、EUの対中関税問題など「かなりの摩擦」が両国間に存在しており、「協力の適切なバランス」が訪問の焦点になるとドイツ政府報道官は述べています。

市場にとっては、欧中間の新たな「戦略的パートナーシップ」がどのような形で具体化するかが注目ポイントです。特に、自動車・半導体分野での協力や規制の方向性は、欧州株だけでなくグローバルなサプライチェーンに影響を与え得ます。

米最高裁の関税違憲判決とトランプ政権の対応

2月20日、米連邦最高裁は6対3で、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課した相互関税を違憲と判断しました。ジョン・ロバーツ首席裁判官は「議会が関税賦課の権限を付与する際は、明確かつ慎重な制約をもって行う。ここではそのどちらもなされていない」と判示しました。

この判決は歴史的な意義を持つものの、市場への直接的影響は限定的と見られています。その理由は主に2つあります。

第一に、トランプ大統領は即座に通商法122条に基づく世界一律10%の「グローバル関税」を新たに発動しており、その後15%に引き上げました。日本に対しては従来の15%の相互関税が廃止される代わりに、新たな10〜15%の関税が課され、自動車や鉄鋼などの分野別関税は維持されるため、実質的な変化は限定的です。

第二に、市場はこうした展開をある程度織り込み済みでした。ただし、既に徴収済みの約1,330億ドル(約21兆円)の関税の還付問題は未解決であり、企業にとっては「情報整理」が急務となっています。

注意点・展望

今週のNVIDIA決算は、2026年前半のAI関連相場の方向性を決定づける重大なイベントです。市場はすでに好決算を織り込んでおり、予想を上回るだけでは株価の大幅上昇にはつながらない可能性があります。重要なのは、フォワードガイダンスと経営陣の「AIサイクルの持続性」に対するメッセージです。

2026年に入りNVIDIA株はほぼ横ばいで推移しており、S&P 500も同様です。DeepSeekの台頭によるAI効率化の進展は、短期的にはチップ需要への懸念を生みましたが、推論需要の拡大という新たな成長ドライバーにもつながっています。2026年にはAIコンピューティング需要の70%が推論用途になるとの予測もあり、需要構造そのものが変化しつつあります。

投資家は、決算発表翌日の2月26日(日本時間27日)の市場の反応に細心の注意を払う必要があります。

まとめ

2026年2月最終週は、NVIDIA決算を筆頭に、メルツ独首相の訪中、米関税判決の余波と、市場を動かすイベントが集中しています。NVIDIAの業績自体は好調が見込まれますが、AI投資サイクルの持続性を占う「フォワードガイダンス」が真の焦点です。ハイパースケーラーの5,000億ドル超の投資計画、Blackwellチップの供給制約、そして地政学的リスクを総合的に考慮しながら、今週の市場動向を注視していく必要があるでしょう。

参考資料

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