住宅ペアローンの落とし穴|離婚時に直面する返済問題と対処法
はじめに
住宅価格の高騰を背景に、夫婦で住宅ローンを組む「ペアローン」の利用が急増しています。住宅金融支援機構の2025年4月調査によると、ペアローンと収入合算を合わせた利用率は約4割に達し、特に20代では67.1%と3人に2人以上が夫婦で協力してローンを組んでいます。
しかし、ペアローンには見落とされがちな大きなリスクがあります。それは離婚時の問題です。離婚しても住宅ローン契約は解消されず、売却しようにも買い手がつかない、残債が売却価格を上回るオーバーローン状態に陥るなど、深刻なトラブルに発展するケースが後を絶ちません。
この記事では、ペアローンの仕組みと離婚時に直面する具体的な問題、そしてその対処法について詳しく解説します。
ペアローン利用が急増する背景
住宅価格高騰と共働き世帯の増加
ペアローンとは、夫婦がそれぞれ別々の住宅ローン契約を結び、互いに連帯保証人となる借入方法です。収入合算型と比べて借入可能額が大きくなり、住宅ローン控除も夫婦それぞれが受けられるメリットがあります。
利用が増えている最大の理由は住宅価格の上昇です。国土交通省の不動産価格指数によると、土地・戸建ての価格はここ5年間で約8〜12%上昇し、マンションに至っては約30%も上昇しています。片方の収入だけでは希望する物件を購入できないため、夫婦の収入を合わせてローンを組む選択が増えているのです。
年代別の利用状況
住宅金融支援機構の調査では、年代によって利用率に大きな差があることが分かります。20代ではペアローン利用率が44.0%と半数に迫り、30代でも29.6%が利用しています。一方、40代では14.7%まで下がります。若い世代ほど共働きが一般的であり、かつ貯蓄が少ないため、ペアローンに頼らざるを得ない状況が見て取れます。
金融機関側もペアローンの提案を積極的に行っており、審査基準を緩和する動きも見られます。しかし、借りやすさの裏には将来のリスクが潜んでいることを忘れてはなりません。
離婚時に発生する深刻な問題
ローン名義の変更ができない
離婚を機に「ローンの名義を一方に移したい」と考える夫婦は多いですが、これは簡単ではありません。不動産の所有権は移転できても、住宅ローン契約は金融機関との契約であり、契約者が完済することを前提に組まれています。金融機関の承諾なしに名義変更はできず、承諾を得るには新たな審査が必要になります。
ペアローンの場合、夫婦それぞれの収入を合算して借入可能額を算出しているため、離婚後に片方だけで審査を通過するのは困難です。残債額によっては、単独での返済能力に問題ありと判断され、一本化が認められないケースも少なくありません。
離婚後も継続する返済義務
ペアローンで購入した住宅は夫婦の共有名義となり、通常は互いが連帯保証人になっています。離婚によって婚姻関係は解消されますが、金融機関との契約は別問題です。離婚後も双方に返済義務が残り、元パートナーがローンを滞納すれば、もう一方に残債全額の一括返済を求められる可能性があります。
特に問題なのは、家を出た側の心理的負担です。自分が住まない家のローンを払い続けることへの不満から、支払いが滞るケースが多発しています。
売却したくても売れない
ペアローンで購入した住宅を売却するには、夫婦双方の合意が必要です。一方が「売りたい」と思っても、もう一方が「住み続けたい」「売りたくない」と主張すれば、売却は進みません。感情的な対立から合意形成が困難になり、問題が長期化するケースは珍しくありません。
仮に合意できたとしても、希望通りに売却できるとは限りません。市況の悪化や物件の立地条件によっては買い手がつかず、売却活動が長期化することもあります。
オーバーローン問題の深刻さ
オーバーローンとは何か
オーバーローンとは、住宅の売却価格がローン残債を下回る状態を指します。例えば、物件が3,000万円で売れても、ローン残債が3,500万円あれば500万円の不足が生じます。この不足分を補填しない限り、抵当権を抹消できず売却は完了しません。
新築から数年以内の物件は特にオーバーローンになりやすい傾向があります。購入直後は諸費用込みでローンを組むことが多く、物件価値は購入価格より低く評価されるためです。
不足分の負担をめぐる対立
オーバーローンの場合、売却代金で返済しきれない不足分をどちらがどの割合で負担するかが大きな争点になります。財産分与の話し合いで合意に至らず、調停や裁判に発展するケースも少なくありません。
この問題を曖昧にしたまま離婚すると、後々まで尾を引きます。離婚協議書や調停調書に負担割合を明記しておくことが重要です。
具体的な対処法
住宅ローンの一本化(借り換え)
片方が住宅に住み続ける場合、もう片方の持分を買い取り、ローンを単独名義に借り換える方法があります。ただし、これには新たなローン審査を通過する必要があり、単独収入で残債全額を返済できる能力が求められます。
共働きで組んだペアローンの場合、当初の借入額が大きいため、離婚後の単独収入では審査に通らないことも多いです。借り換えを検討する場合は、早めに金融機関に相談し、審査の可否を確認しておきましょう。
任意売却の活用
オーバーローンで通常の売却が困難な場合、金融機関と交渉して行う「任意売却」という選択肢があります。金融機関の承諾を得て抵当権を抹消し、一般の不動産市場で売却する方法です。
任意売却は競売より相場に近い価格で売却できるため、残債をより多く減らせるメリットがあります。売却後の不足分は分割払いで返済するケースが一般的です。専門の相談窓口や不動産会社に相談することで、スムーズに進められます。
自己資金での補填
オーバーローンの不足額が比較的小さい場合は、預貯金から補填して売却を完了させる方法が最もシンプルです。売却後のローン返済から解放され、新生活をスタートしやすくなります。
ただし、離婚後の生活資金も確保する必要があるため、無理な補填は禁物です。将来の生活設計も含めて判断しましょう。
ペアローンを組む前に考えるべきこと
十分な頭金の準備
ペアローンのリスクを軽減する最も効果的な方法は、十分な頭金を用意して借入額を抑えることです。物件価格の20%以上を頭金として用意できれば、将来オーバーローンになるリスクを大幅に下げられます。
返済期間の設定
借入期間を短く設定すると返済スピードが上がり、オーバーローン状態に陥りにくくなります。35年ローンが一般的になっていますが、可能であれば25〜30年程度に抑えることで、将来の選択肢が広がります。
万が一の想定
離婚を前提に住宅を購入する人はいませんが、万が一の事態に備えた取り決めをしておくことは重要です。どちらかが住み続ける場合の対応、売却時の手順など、事前に話し合っておくことでトラブルを最小限に抑えられます。
まとめ
住宅価格の高騰により、ペアローンは住宅購入の有力な選択肢となっています。しかし、離婚時にはローン名義の変更困難、売却の合意形成、オーバーローン問題など、深刻なトラブルに直面する可能性があります。
ペアローンを組む際は、借入額を抑える、返済期間を短くするなどの対策を講じ、万が一に備えた取り決めをしておくことが重要です。すでにペアローンを組んでいて離婚を検討している場合は、早めに専門家に相談し、売却や借り換えなどの対処法を検討しましょう。
住宅購入は人生最大の買い物の一つです。目先のメリットだけでなく、将来起こりうるリスクも含めて慎重に判断することが、後悔しない住宅購入につながります。
参考資料:
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