個人向け未公開株ファンドが日本初登場、100万円から投資可能に
はじめに
これまで機関投資家だけに限られていたプライベートエクイティ(未公開株)投資が、個人投資家にも開放されました。SBI証券と東京海上アセットマネジメントは、「東京海上・日本プライベートエクイティ戦略ファンドST」の販売を開始しました。
このファンドは、ブロックチェーン技術を活用したセキュリティトークン(ST)として発行され、1口100万円から投資が可能です。国内初となるこの商品は、個人投資家の資産運用に新たな選択肢をもたらす可能性があります。一方で、15年という長期間の資金拘束など、理解すべきリスクも存在します。
プライベートエクイティ投資とは
未公開株式への投資機会
プライベートエクイティ(PE)とは、株式市場に上場していない未公開企業の株式を指します。PE投資は、成長段階にある企業や事業再編中の企業に資金を投じ、企業価値を高めた後に売却してリターンを得る投資手法です。
PE投資には主に4つの種類があります。ベンチャーキャピタル投資は、スタートアップ企業への投資です。グロースエクイティ投資は、成長期にある企業への投資を行います。バイアウト投資は、成熟企業の買収を通じた価値創出を目指します。ディストレス投資は、経営困難に陥った企業の再建を支援する投資です。
これまで個人投資家がアクセスできなかった理由
PE投資は、長らく機関投資家の領域でした。その理由は複数あります。まず、最低投資金額が数億円規模と高額であることが挙げられます。また、投資期間が7年から10年以上と長期にわたること、投資先の評価に専門的な知識が必要なことなどが障壁となっていました。
優良なPEファンドは機関投資家からの資金だけで十分なため、個人投資家からの資金調達を必要としていませんでした。
新ファンドの仕組みと特徴
セキュリティトークンによる小口化
今回の商品の最大の特徴は、セキュリティトークン(ST)技術を活用している点です。STとは、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を用いて発行・管理されるデジタル証券のことです。この技術により、従来は億単位だった最低投資金額を100万円まで小口化することが可能になりました。
SBI証券、新生信託銀行、東京海上アセットマネジメント、BOOSTRYの4社が共同で開発したスキームで、国内初のPE投資向けセキュリティトークンの公募商品となります。
東京海上の運用実績
本ファンドでゲートキーパー(運用管理者)を務める東京海上アセットマネジメントは、PE運用において約30年の実績を持ちます。1997年に東京海上日動火災保険がPE投資を開始したことに端を発し、現在の運用資産残高は約1兆5,000億円(2025年6月末時点)に達しています。
同社の過去10年間の運用成績は、TOPIX(配当込み)を上回る実績を残しています。日本プライベート・エクイティ協会のデータによると、国内PEファンドの過去10年間(2013年から2022年)のネットIRR(内部収益率)は年率20.8%で、同期間のTOPIXを10.2%上回っています。
商品概要
募集期間は2026年1月26日までとなっています。1口100万円から投資可能で、償還期間は約15年です。この間は原則として解約できません。投資対象は、複数の国内PEファンドへの分散投資となります。
投資のメリット
高いリターンの可能性
PE投資の最大のメリットは、上場株式を上回るリターンが期待できる点です。未上場企業の成長ポテンシャルを活かし、企業価値の向上によるキャピタルゲインを狙います。
長期的な視点で企業経営に関与することで、短期的な株価変動に左右されない価値創出が可能です。
ポートフォリオの分散効果
PE投資は、オルタナティブ資産(代替資産)として、伝統的な株式・債券ポートフォリオとは異なる値動きをする傾向があります。資産全体に組み入れることで、リスク分散効果が期待できます。
上場株式市場との相関が低いため、市場全体が下落する局面でもポートフォリオ全体の安定性を高める効果があります。
専門家による運用
個人がPE投資を行う場合、投資先の評価や企業価値向上の支援は困難です。本ファンドでは、長年の実績を持つ東京海上アセットマネジメントが運用を担当するため、専門知識がなくてもPE投資に参加できます。
注意すべきリスク
15年間の資金拘束
最も重要な注意点は、15年間は原則として解約できないことです。この期間中に資金が必要になっても、引き出すことはできません。生活資金や緊急用資金とは完全に分離した、余裕資金での投資が必要です。
PE投資では、投資先企業の価値向上に時間がかかるため、短期間での換金は想定されていません。流動性の低さは、PE投資の本質的な特徴です。
元本割れのリスク
PE投資は上場株式よりもリスクが高い傾向があります。投資先の未上場企業が必ずしも成長するとは限らず、場合によっては投資資金を回収できない可能性もあります。
特にベンチャー企業への投資は、成功すれば大きなリターンが期待できる一方、失敗のリスクも高くなります。分散投資によってリスクを軽減していますが、元本保証はありません。
情報の透明性
未上場企業は上場企業と異なり、財務情報などの開示義務がありません。入手可能なデータが限定的であり、投資判断を行うための情報が制限されます。
ファンドマネージャーの判断に依存する部分が大きく、個人投資家が投資先を直接評価することは困難です。
今後の展望
デジタル証券市場の成長
国内の公募セキュリティトークン市場は急速に成長しています。2025年11月末時点で、公募発行総額は約2,700億円規模に達しました。不動産や社債など、対象資産も広がっています。
今後は二次流通市場の整備も進む見通しです。大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が運営する「START」では、すでにセキュリティトークンの取引が行われています。
個人投資家の選択肢拡大
今回のPEファンドの登場は、個人投資家の投資機会拡大の一環といえます。これまで機関投資家に限られていたオルタナティブ投資が、徐々に個人にも開放されつつあります。
ただし、PE投資は誰にでも適した投資手法ではありません。長期の資金拘束に耐えられる資金的余裕と、リスクを許容できる投資家に限定される商品です。
まとめ
SBI証券と東京海上アセットマネジメントが発売した個人向けPEファンドは、日本の個人投資家に新たな投資機会を提供します。セキュリティトークン技術により100万円から投資可能となり、これまで機関投資家だけの領域だったPE市場に参入できます。
一方で、15年間の資金拘束や元本割れリスクなど、十分に理解すべき注意点があります。投資を検討する際は、自身の投資目的やリスク許容度を慎重に評価し、余裕資金の範囲内で判断することが重要です。
参考資料:
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