楽天グループ7年連続赤字、モバイル改善も減損が重荷に
はじめに
楽天グループが2025年12月期の連結決算を発表しました。最終損益は1778億円の赤字で、7年連続の最終赤字となりました。前期の1624億円から赤字幅は154億円拡大しています。事前の市場予想(1348億円の赤字)も下回る結果でした。
モバイル事業の赤字は着実に縮小しているものの、通信インフラ構築事業や物流事業での減損損失、社債の利払い負担が最終損益を圧迫しました。本記事では、決算の内訳と黒字化への道筋を詳しく解説します。
決算の全体像
売上は過去最高も赤字拡大
2025年12月期の売上収益は前期比約9.5%増の2兆4965億円と過去最高を更新しました。EC・フィンテック・モバイルなど各セグメントが成長を続けており、トップラインの勢いは衰えていません。
本業のもうけを示す営業利益は143億円で、2年連続の黒字を確保しました。営業段階では黒字を維持できていることは明るい材料です。しかし、最終損益は減損損失と財務費用により大幅な赤字に沈みました。
減損損失305億円が直撃
最終赤字の拡大を招いた主因は、2事業での合計305億円の減損損失です。通信インフラ構築事業で約205億円、物流事業で100億円超の損失を計上しました。
通信インフラ構築事業は、複数メーカーの機器を組み合わせて通信ネットワークを構築するビジネスです。楽天モバイルで培った技術を外販する戦略でしたが、想定通りの収益化が進まず、資産の減損処理に追い込まれました。物流事業についても、事業環境の変化を踏まえた資産評価の見直しが行われました。
モバイル事業は着実に改善
契約回線数1000万突破
楽天モバイルの契約回線数は2025年12月に1000万回線を突破しました。MVNOによるサービスも含めた数字ですが、参入当初は「第4のキャリア」として厳しい見方もあった中で、着実にユーザー基盤を拡大しています。
月額料金プラン「Rakuten最強プラン」のシンプルな料金体系が支持を集めているほか、法人向け事業にも積極的に取り組んでいます。契約者の増加に伴い、ARPU(1契約あたりの平均収益)の改善も進んでいます。
EBITDA黒字化は射程圏内
楽天モバイルのEBITDA(償却前営業利益)の黒字化は「射程圏内」とされています。四半期ベースでは赤字幅が大幅に縮小しており、通期での黒字化に向けた改善トレンドは明確です。
黒字化のラインとして、契約者数800万〜1000万件、ARPU2500〜3000円という基準が設定されていました。契約者数は目標を達成しており、今後はARPUの向上が収益改善の鍵となります。
財務面の課題
重い社債償還スケジュール
楽天グループが抱える最大のリスクは財務面にあります。有利子負債は約1.6兆円に上り、今後5年間(2026年〜2030年)で1兆円を超える社債の償還が控えています。
年度別の社債償還予定額は、2026年が約1625億円、2027年が約1700億円、2028年が約1680億円、2029年が約4560億円、2030年が約2059億円です。特に2029年は4500億円超と突出しており、「2029年の壁」ともいわれる資金繰りのハードルが存在します。
利払い負担の継続
社債の利払い費用も最終損益を圧迫する大きな要因です。モバイル事業への巨額投資を社債発行で賄ってきた結果、利息負担が年間で数百億円規模に達しています。営業利益が143億円にとどまる中で、利払い費が最終損益を大きく押し下げている構図です。
モバイル事業の黒字化が進んだとしても、社債の償還と利払いという財務負担が解消されなければ、最終黒字の達成は容易ではありません。
KDDIローミング契約の転機
2026年9月の契約終了
楽天モバイルの経営にとって重要な転機が2026年9月に訪れます。KDDIとのローミング契約が終了する予定であり、これによりネットワーク費用が大幅に変化する可能性があります。
ローミング費用は楽天モバイルのコスト構造において大きな割合を占めてきました。自前のネットワーク整備が進んだことで、ローミングへの依存度は低下していますが、契約終了後のネットワーク品質の維持が課題となります。
自前回線の拡充が鍵
ローミング契約終了後は、自前回線のカバレッジ(通信エリア)の広さと品質がユーザーの満足度と解約率に直結します。特に地方部や建物内部での通信品質は、大手3社と比較してまだ課題が残る領域です。
ローミング費用の削減は収益改善に寄与しますが、品質低下による解約の増加というリスクとのバランスが求められます。
注意点・展望
楽天グループの2026年12月期の業績予想は、売上収益で一桁後半の成長率、営業利益は増益を目指すとされています。ただし、詳細な数値予想は非開示であり、不透明感が残ります。
7年連続赤字という数字は厳しいものですが、内容を見ると改善トレンドは存在します。モバイル事業の赤字縮小、EC・フィンテック事業の堅調な成長、営業利益の黒字維持と、ポジティブな材料もあります。
最大の注目点は、モバイル事業が通期でEBITDA黒字を達成できるかどうかです。黒字化が実現すれば、グループ全体の最終黒字化に向けた大きな一歩となります。ただし、社債の償還負担を考えると、最終黒字の達成にはまだ数年を要する可能性があります。
まとめ
楽天グループの2025年12月期は、売上過去最高と営業黒字を達成しつつも、減損損失と社債利払いにより7年連続の最終赤字となりました。モバイル事業は契約者1000万突破とEBITDA黒字化が視野に入るなど着実に改善しています。
今後の焦点は、2026年9月のKDDIローミング契約終了への対応と、2029年に集中する社債償還への備えです。モバイル事業の黒字化と財務体質の改善を同時に進められるかが、楽天グループの中期的な企業価値を左右することになります。
参考資料:
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