2026年半導体市場はメモリー争奪戦——サムスン最高益の裏で広がる影

by nicoxz

はじめに

2026年の半導体市場は、メモリーの奪い合いが波乱要因となっています。生成AI(人工知能)向けの需要が旺盛で、高性能メモリー「HBM」は争奪戦の様相を呈しています。

韓国サムスン電子は2025年10〜12月期決算で、営業利益が前年同期比3倍超の20兆ウォン(約2兆2000億円)を記録し、過去最高を更新しました。メモリー事業の好調が業績を牽引しています。

しかし、この好況の裏側では深刻な問題が進行しています。メーカーがAI向けHBMの増産に経営資源を集中させた結果、スマートフォンやパソコン向けの汎用メモリーが不足。2026年は消費者向け製品の価格高騰やスペックダウンが避けられない「暗黒期」に突入する可能性があります。

サムスン電子、過去最高益を更新

売上高・営業利益ともに四半期最高

サムスン電子が2026年1月8日に発表した2025年10〜12月期の連結決算速報値は、売上高93兆ウォン(前年同期比23%増)、営業利益20兆ウォン(同3.1倍)でした。いずれも四半期として過去最高を記録しています。

四半期の売上高が90兆ウォンを超えたのは同社史上初めてで、営業利益もこれまで最高だった2018年7〜9月期(17兆5700億ウォン)を上回りました。

メモリー事業が業績牽引

業績好調の主因は、全社売上高の約4割を占める半導体部門の大幅な伸びです。証券業界は、半導体事業を担うデバイスソリューション(DS)部門の営業利益が前期比約10兆ウォン増の16〜17兆ウォン台に達したと推計しています。

汎用メモリーの価格上昇が続く中、AI向け高性能メモリー「HBM」(High Bandwidth Memory、広帯域メモリー)の売り上げ拡大が業績を大きく押し上げました。

HBM争奪戦——生成AIが変えたメモリー市場

HBMとは何か

HBMは、従来型のDRAMより一度に大きなデータをやり取りできる高性能メモリーです。データ転送速度は従来型の10〜100倍に達し、GPU(画像処理半導体)やAI学習・推論で威力を発揮します。

NVIDIA製GPUを中核とするAIサーバーでは、従来型サーバーの数倍から十数倍のメモリー容量が必要とされており、HBM需要は爆発的に増加しています。

市場を寡占する3社

世界のメモリー市場は、サムスン電子、SKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーの3社が事実上寡占しています。3社ともに利益率の高いAI向けHBMの増産に経営資源を集中させており、2029年にはHBM市場が440億ドル(2023年の約8倍)に達する見通しです。

オープンAIの「スターゲート」計画では、サムスン電子およびSKハイニックスと月90万枚規模のDRAMウエハー供給について協議しているとされ、SKグループは「これは世界のHBM生産量の約2倍に相当する」と述べています。

供給逼迫は2026年も継続

米国格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは、メモリーの供給逼迫は2026年まで続く可能性が高く、正常化は2027〜2028年頃と予測しています。業界ロードマップでは、2025年末から2026年にかけて次世代の「HBM4」がリリースされる予定です。

スマホ・PC市場に「冬」到来

価格高騰の現実

HBMへの生産シフトは、消費者向け製品に深刻な影響をもたらしています。PC用メモリーの価格は2025年秋から冬にかけて2〜3倍に高騰。DRAMのスポット価格は1年前の約10倍になるケースも出ています。

主要PCベンダー(Lenovo、Dell、HP、Acer、ASUS)は、2026年後半のPC価格が15〜20%上昇すると警告しています。

IDCの市場予測下方修正

調査会社IDCは、2026年のPC市場予測を大幅に下方修正しました。11月時点では「2.4%下落」としていた予測が、わずか1カ月で「4.9%下落、悲観シナリオでは8.9%下落」へと修正されています。

スマートフォン市場でも、平均価格が8%上昇するとの「悲観的シナリオ」が示されています。

スペックダウンの可能性

メモリー価格高騰の影響は、価格上昇だけでなく製品スペックにも及ぶ可能性があります。調査会社TrendForceによると、スマホおよびノートPCブランドは、製品価格の引き上げか仕様の引き下げを余儀なくされています。

高い収益力を持つAppleでさえ、iPhone新モデルの価格戦略を再検討し、旧モデルの値下げ縮小や撤廃を検討する可能性があるとされています。

2026年は「買い控え」が正解か

新工場稼働は2027年以降

メーカー各社が建設している新しい工場が稼働し、市場に十分な量のメモリーが供給されるようになるのは、早くても2027〜2028年頃になると見られています。

2026年はPCを買うには「不適切な時期」であり、待てるなら2027年まで待つのが得策との見方があります。この問題はPCだけでなく、スマートフォンやゲーム機にも波及しそうです。

値上げしにくいメーカーも

一方で、全てのメーカーが同じように値上げするわけではありません。Apple製品は値上げ幅が限定的になるとの見方があり、また自社でメモリーを確保できる垂直統合型メーカーは比較的影響が小さい可能性があります。

注意点・展望

半導体市場の「二極化」

2026年の半導体市場は、AI向けで好況と、消費者向けで低迷という「二極化」が進む見通しです。AI投資が続く限りHBM需要は旺盛ですが、汎用メモリーの供給不足は消費者に痛みを強いることになります。

需要回復へのリスク

メモリー不足や価格高騰でスマートフォンやパソコンの生産が滞れば、これらの機器に搭載されるCPU(中央演算処理装置)や汎用半導体の需要回復にもブレーキがかかりかねません。半導体産業全体への波及効果に注意が必要です。

日本企業への影響

日本の半導体製造装置メーカーや電子部品メーカーにとっては、AI向け投資の恩恵を受ける一方、消費者向け製品の需要減退がマイナス要因となる可能性があります。市場の二極化にどう対応するかが課題となります。

まとめ

生成AI需要の爆発でHBM争奪戦が過熱し、サムスン電子は過去最高益を更新しました。しかし、メーカーがAI向けに生産を集中させた結果、PC・スマホ向けメモリーは深刻な供給不足に陥っています。

2026年は消費者向け製品の価格高騰とスペックダウンが避けられない「暗黒期」となる可能性があり、購入のタイミングには注意が必要です。供給正常化は2027〜2028年頃と見込まれており、しばらくはメモリー争奪戦が続くことになりそうです。

参考資料:

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