物言う株主、世界で攻勢強める 提案件数3年連続最多
はじめに
アクティビスト(物言う株主)が世界で攻勢を強めています。米投資銀行ラザードによると、2025年のアクティビストの提案件数は全世界で297件に達し、前年から39件(15%)増加して3年連続で過去最多を更新しました。
株高に出遅れた日米企業の経営に介入するほか、増加するM&A(合併・買収)案件にも着目。日本や韓国で進む資本市場改革も追い風となり、2026年も勢いを保つ可能性が高いとされています。日本は提案件数で米国に次ぐ世界2位に浮上し、「アクティビスト天国」と呼ばれる状況が続いています。
世界的な活動活発化の実態
3年連続で過去最多を更新
ラザードの調査によると、2025年は第1四半期と第3四半期がともに過去最高を記録し、年間でも297件という新記録を達成しました。米国とアジア太平洋地域の旺盛な活動が、欧州の減少を補って余りある結果となりました。
地域別では、米国で70件(前年同期比13%増)、カナダで7件(前年同期の4件から増加)と北米で17%の成長を記録。アジア太平洋地域は25%増と特に活発で、日本が56件の新規キャンペーンで過去最高を更新したことが牽引しました。
主要な投資対象セクター
世界的に、産業セクター(24%)とテクノロジーセクター(19%)が主要なターゲットとなっています。いずれも過去の平均水準を上回る活動が見られました。
M&Aは引き続き主要なキャンペーン目的であり、5年平均を上回る水準を維持しています。資本配分への要求も増加し、全キャンペーンの29%を占めました(5年平均は18%)。特に欧州と日本で自社株買いへの圧力が顕著でした。
「アクティビスト天国」日本の状況
第3次アクティビストブームの渦中
日本は現在、第3次アクティビストブームのさなかにあります。アイ・アール ジャパンによると、日本企業を対象にアクティビスト活動をしている国内外のファンド数は、2024年に73社と5年間で8割増加しました。日本株への投資額は9兆7,000億円に達し、同期間で2倍に膨らんでいます。
2025年上半期だけで主要アクティビストは約8,900億円を日本株に投資し、過去最高だった2024年の年間投資額(1兆円超)を上回るペースで推移しました。
株主提案も過去最多
三菱UFJ信託銀行の集計では、2025年3月期決算企業の株主総会において、アクティビストによる提案を受けた企業は50社、個人投資家などを含めた全体では114社と、いずれも過去最多となりました。
ブルームバーグによると、日本はアクティビスト活動で米国に次ぐ世界2位の地位を確立しています。日本株を投資対象とするヘッジファンドの2025年のリターンは世界平均の1.7倍に達しており、まさに「アクティビスト天国」の様相を呈しています。
東証の改革が追い風に
東証による「PBR1倍割れ銘柄の改善要請」は、アクティビスト活動を後押しする大きな要因となっています。資本効率の向上余地がある銘柄が山積みとなっている東京市場は、アクティビストにとって「宝箱」と表現されています。
キャッシュリッチで割安な株式や不動産、金利上昇、女性取締役の低比率、配当への投資家の要求、円キャリートレードの巻き戻しなど、複数の要因が2025年の日本における株主アクティビズムの活発化を後押ししています。
韓国でも活動が活発化
企業価値向上への要求
韓国でも、増配や自己株式の消却、コーポレートガバナンス改革を通じた企業価値向上を求める株主アクティビズムが勢いを増すと予想されています。
特に自己株式の消却を求める動きが続いています。実務上、経営陣は自己株式を株主還元のメカニズムとしてではなく、友好的な株主に譲渡するなど企業支配を守るために使用してきた経緯があります。こうした状況を背景に、韓国の投資家は自己株式の消却を求めて株主権を行使するケースが増えています。
M&A絡みの活動が増加
敵対的買収への関与
経済産業省が2023年8月に「企業買収における行動指針」を公表して以降、日本の上場企業に対する同意なき買収提案が増加しています。アクティビストはこうしたM&A案件に積極的に関与し、買収価格の引き上げを要求するケースが目立っています。
ヤイヅ(Yaizu)の事例では、J-STARによる買収提案後に村上氏と3Dインベストメントがそれぞれ約10%の株式を取得。両者との協議を経て、ヤイヅは新たな入札者(稲葉製作所)を選定し、J-STARの当初提案より20%高い価格での買収が実現しました。
資本配分への要求強化
アクティビストによる資本配分への要求は増加傾向にあり、全キャンペーンの29%を占めています(5年平均は18%)。特に欧州と日本で自社株買いへの圧力が強まっており、企業は株主還元の強化を迫られています。
今後の展望
2026年も活発な活動継続へ
日本や韓国で進む資本市場改革を追い風に、アクティビスト活動は2026年も活発に推移する見通しです。PBR1倍割れ銘柄への改善圧力は継続しており、企業は資本効率の向上や株主還元の強化を求められ続けます。
企業にとっては、アクティビストとの建設的な対話や、先回りした経営改革が重要になります。株主提案への対応だけでなく、自主的な企業価値向上への取り組みが求められています。
まとめ
アクティビストの提案件数が3年連続で過去最多を更新し、日本は世界2位の地位を確立しました。東証の改革やM&A活発化を背景に、日本市場への投資は過去最高ペースで推移しています。
「アクティビスト天国」と呼ばれる状況は2026年も続く見通しであり、日本企業は株主との対話強化や先手を打った経営改革が求められています。
参考資料:
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