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by nicoxz

静岡県でホテル投資が加速、観光立県へ高級化の波

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はじめに

静岡県でホテルの新規開業や大型リブランドが相次いでいます。富士山麓の御殿場・小山エリアから、熱海・伊豆の温泉地、さらには浜名湖畔に至るまで、県内全域で宿泊施設への投資が活発化しています。背景にあるのは、コロナ禍からの需要回復と、過去最高を更新した観光消費額、そして前年比80%超の伸びを見せるインバウンド宿泊客の存在です。従来の「通過型観光」からの脱却を目指す静岡県にとって、高付加価値ホテルの集積は観光立県への大きな一歩となります。本記事では、主要な開業プロジェクトやインバウンドの動向、今後の展望について詳しく解説します。

富士山麓・東部エリアで進む高級ホテル開発

強羅花壇が富士に進出、全室スイートの大型施設

静岡県のホテル投資を象徴するプロジェクトの一つが、2025年7月20日に開業した「GORA KADAN FUJI(強羅花壇 富士)」です。箱根の名旅館として知られる強羅花壇が手がける国内2軒目の施設で、駿東郡小山町須走の約4万9,700平方メートルという広大な敷地に建設されました。客室棟は地上7階・地下1階建てで、39室のホテル棟に加え3棟のヴィラを備えた全42室構成です。すべてがスイート仕様で、全室に富士山を望む温泉風呂を完備しています。

施設内にはレストラン、プール、ジム、スパに加え、36ホールのゴルフコースも併設されており、長期滞在型のリゾートとしての機能を備えています。新東名高速道路の新御殿場インターチェンジから約10分、東海道新幹線の三島駅から車で約35分というアクセスの良さも特徴です。富士山を間近に望む立地を最大限に活かした「富士見テラス」は、宙に浮かぶようなデザインで、宿泊者に唯一無二の体験を提供しています。

沼津に1泊20万円のスモールラグジュアリー「富士青藍」

沼津市の西伊豆エリアでは、株式会社ウエストクリエイティブが手がけるスモールラグジュアリーホテル「富士青藍(ふじせいらん)」が2025年5月にプレオープン、同年11月にグランドオープンしました。わずか5室のみの構成で、すべてが約150平方メートルのスイートルームです。1泊1名あたりの料金は約20万円に設定されており、富士山と駿河湾を一望する露天風呂とプライベートサウナを全室に備えています。

開業後は一休.comの箱根・熱海・伊豆エリアのクチコミランキングで上位にランクインするなど高い評価を得ています。ウエストクリエイティブは西伊豆エリアで3つの高級宿泊施設を運営しており、将来的には30施設への拡大を計画しています。少数精鋭の客室で高単価を実現するスモールラグジュアリーのビジネスモデルは、地方の観光地における新たな投資パターンとして注目されています。

熱海・浜名湖で大手が続々参入

共立メンテナンスが熱海に全239室の大型施設

2026年3月には、ドーミーインなどを展開する共立メンテナンスが「ラビスタ熱海テラス」を開業予定です。熱海駅から徒歩約8分の海沿いに位置する地上6階建ての施設で、全239室を擁する大型ホテルとなります。天然温泉の大浴場や露天風呂、混浴風呂に加え、海を望むサウナや4種の貸切風呂など、温泉リゾートとしての充実した設備が特徴です。2025年9月から予約受付が開始されており、3月5日のプレオープン、3月30日のグランドオープンが予定されています。

「ラビスタ」ブランドは共立リゾートの中でも眺望に重点を置いた上位ブランドであり、熱海の海と街並みを一望できるロケーションとの相性は抜群です。全239室という規模は、団体・個人の双方を取り込める柔軟性を持ち、熱海エリアの宿泊キャパシティを大きく引き上げることになります。

Karakami HOTELSが手がけるオーベルジュ「無為自然」

同じ熱海エリアでは、Karakami HOTELS & RESORTSが初の高級リゾートブランドとして「NIPPON RESORT 無為自然 -ATAMI-」を2025年4月にプレオープン、8月にグランドオープンしました。老子の哲学に由来する「無為自然」のコンセプトのもと、全18室(うちヴィラ3棟)の少数客室で構成されています。六本木の名店「蒼」の峯村康正シェフが監修するレストランを核としたデスティネーションオーベルジュとして、料理と宿泊の融合を打ち出しています。屋外プール、プールサイドバー、サウナも完備しています。

アコーグループが浜名湖でリブランド展開

浜名湖エリアでは、フランスのホスピタリティ大手アコーグループが「グランドメルキュール浜名湖リゾート&スパ」を2024年4月にリブランドオープンしました。日本初上陸となる「グランドメルキュール」ブランドの施設の一つで、「Proudly Local~その地に、誇りを~」をコンセプトに、舘山寺温泉の地域性を活かしたオールインクルーシブの滞在を提供しています。2025年4月には最上階13階に「エグゼクティブ レイクビューラウンジ」を新設するなど、開業後も継続的な投資が行われています。

インバウンド急増が投資を後押し

これらのホテル投資が加速する最大の要因は、インバウンド需要の急拡大です。2024年の静岡県内の宿泊者数は延べ2,255万人に達し、前年比69万人の増加を記録しました。とりわけ外国人宿泊者は193万人と前年比80%以上の大幅な伸びを見せています。国籍別では中国、台湾、韓国の順に多く、富士山や温泉を目的としたアジア圏からの旅行者が中心です。

観光消費額も好調です。2024年度の静岡県の旅行消費額は前年度比5.9%増の8,359億円となり、過去最高を更新しました。土産・買い物代が17.8%増の2,481億円と最も大きな伸びを示し、外国人の消費額は前年度比162.7%増の331億円に達しています。インバウンド消費による経済波及効果は836億円と試算されており、地域経済への貢献は無視できない規模に成長しています。

注意点・展望

一方で、課題もあります。静岡県の客室稼働率は53%前後で全国30位にとどまっており、全国平均を下回っている状況です。新規開業が相次ぐ中で供給過剰に陥るリスクも指摘されています。また、外国人宿泊者の約45%を中国人が占めているため、国際情勢や中国経済の変動による影響を受けやすいという構造的な課題も抱えています。

今後は、富士山静岡空港の国際線拡充が鍵を握ります。2024年度の空港利用者数は約63万2,000人で前年比20%以上の増加を記録しており、さらなる路線拡大が実現すれば、アクセス改善によるインバウンド増加が期待できます。また、静岡県は「通過型観光」からの脱却を長年の課題としてきましたが、高付加価値ホテルの集積と多様な体験コンテンツの整備が進めば、宿泊を伴う滞在型観光地への転換が現実味を帯びてきます。

まとめ

静岡県では、強羅花壇の富士進出やラビスタ熱海テラスの大型開業、スモールラグジュアリーの富士青藍、国際ブランドのグランドメルキュールなど、多様なタイプのホテル投資が同時進行しています。外国人宿泊者数の前年比80%増、観光消費額の過去最高更新という追い風を受け、各事業者は高付加価値路線への転換を急いでいます。客室稼働率の向上や特定国への依存リスクといった課題はあるものの、富士山・温泉・海という強力な観光資源を持つ静岡県のポテンシャルは大きく、ホテル投資の波は当面続く見通しです。

参考資料:

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