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by nicoxz

スナックをスマホで「見える化」、料金や混雑を公開

by nicoxz
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はじめに

「スナック」と聞くと、扉の向こうが見えない不透明さや、料金システムのわかりにくさから「入りづらい」と感じる人は少なくありません。しかし今、スマートフォンアプリを活用してスナックの「見える化」を進める動きが急速に広がっています。

店内の混雑状況や料金体系、ママの雰囲気までをアプリで事前に確認できるサービスが登場し、これまで常連客だけの閉じた空間だったスナックが、初めての人にも開かれた場所へと変わりつつあります。全国に約4万5,000軒あるとされるスナックは、経営者の高齢化で店舗数が減少する一方、若い世代の間では「昭和レトロ」として再注目されています。

この記事では、スナック業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)の最前線と、令和のスナックブームの背景を解説します。

スナック業界を変えるDXサービスの全貌

「スナテク」が実現するスマート入店と明朗会計

スナック業界のDXを牽引しているのが、株式会社スナックテクノロジーズが開発した「スナテク」です。2025年2月にシードラウンドで総額1億3,300万円の資金調達を実施し、東洋経済の「すごいベンチャー100」にも選出されたこのサービスは、スナックの利用体験を根本から変えようとしています。

スナテクの仕組みはシンプルです。来店時に店舗のQRコードをスキャンしてチェックインし、退店時はアプリ上で自動決済されます。現金やクレジットカードを用意する必要はなく、明細や領収書もすべてオンラインで発行されるため、「ぼったくり」の不安が解消されます。

特に注目すべきは「見える化」の機能です。アプリ上で「今、誰がいるのか」「どんなママがいるのか」が可視化されるため、初めてのお店でも雰囲気を事前に把握できます。ボトルキープの残量管理や来店履歴の確認、予約機能なども備えており、常連客同士の新たなコミュニティ形成にも一役買っています。

全国1万軒超を掲載する「スナカラ」

もう一つの主要サービスが、全国カラオケ事業者協会が運営する「スナカラ」です。2023年9月に業界初のスナック検索アプリとしてリリースされ、全国1万軒以上のスナックを掲載しています。

GPS機能を使って現在地周辺のスナックを簡単に検索でき、飲み放題の有無や料金帯、営業時間などの基本情報を確認できます。キープボトルの管理機能やプッシュ通知機能も搭載しており、スナック初心者や「スナ女」(スナック好きの女性)にも使いやすい設計です。

「スナック横丁」のオンライン展開

オンラインスナック横丁文化株式会社が運営する「スナック横丁」は、さらにユニークなアプローチを取っています。2020年5月にリリースされたオンラインスナック横丁では、自宅にいながらオンライン上でスナックに「入店」し、ママや他のユーザーとの会話を楽しむことができます。

開始当初は10軒だった参加店舗は、1年後には国内48軒、海外2軒の計50軒にまで拡大。訪日外国人向けのスナックツアーも展開するなど、スナック文化の海外発信にも取り組んでいます。

令和のスナックブームが生まれた背景

「昭和レトロ」への若者の回帰

近年、20代から30代の若者を中心に、スナックや大衆酒場といった昭和の飲食空間が再び脚光を浴びています。SNS映えする「レトロ感」や、デジタル社会では得られない対面コミュニケーションの温かさが、若い世代の心をつかんでいるのです。

特に注目されているのが、若い経営者によるスナックの事業承継です。2022年に大学卒業と同時に地域の老舗スナックを事業承継した坂根千里さんの事例では、承継後に売上が約1.8倍に拡大。かつてシニア世代が中心だった客層は、30代から50代の現役世代がボリュームゾーンへと変化し、女性客も増加しました。

経営者高齢化と店舗数の半減

一方で、スナック業界全体は深刻な課題を抱えています。2013年と比較すると店舗数は約5割減少し、2025年時点で約4万5,000店にまで縮小しました。最大の要因は経営者の高齢化です。昭和20年代から30年代の開業ラッシュ期にオープンした店舗のママは、現在80代から90代。後継者が見つからないまま閉店するケースが全国で相次いでいます。

コロナ禍は閉店をさらに加速させました。密な空間での接客が基本のスナックは、営業自粛の影響を大きく受け、体力のない個人経営店を中心に廃業が進みました。

DXがつなぐ「アナログの温かさ」と「デジタルの利便性」

スナテクなどのDXサービスが目指しているのは、スナック固有の「アナログの温かさ」を損なわずに、デジタルの力で参入障壁を下げることです。料金の不透明さ、店内の雰囲気がわからない不安、常連客だけの閉じたコミュニティといった「入りづらさ」の要因を一つずつ解消しています。

重要なのは、テクノロジーがスナック文化そのものを変えるのではなく、新しい客層がスナック文化に触れるための「入口」を作っている点です。QRコードでスマートに入店しても、店内で楽しむのはママとの会話や他の客との交流という、昔ながらのスナック体験です。

注意点・展望

デジタル対応の格差が課題に

DXの恩恵を受けられるのは、スマートフォンやアプリに対応できる店舗に限られます。経営者が高齢の個人経営店では、デジタルツールの導入自体がハードルとなるケースも少なくありません。アプリに掲載されていない店舗は若い世代の目に触れる機会を失い、さらなる集客難に陥るリスクがあります。

スナック文化の継承と進化

今後、スナック業界の鍵を握るのは「事業承継」と「新規参入」です。若い経営者が昭和レトロの雰囲気を活かしつつ、現代的なセンスやデジタルツールを取り入れることで、新たな客層の開拓が進む可能性があります。スナテクのようなプラットフォームが普及すれば、個人経営のスナックでも効率的な店舗運営が実現できるようになるでしょう。

スナックは単なる飲食店ではなく、地域のコミュニティハブとしての役割も担っています。デジタル技術によってその機能が強化されるか、それとも画一化によって個性が失われるか。スナック業界のDXは、日本の飲食文化全体の未来を占う試金石でもあります。

まとめ

かつて「入りづらい」の代名詞だったスナックが、スマホアプリによる「見える化」で大きく変わろうとしています。スナテクによるQRコード入店と明朗会計、スナカラによる全国検索、オンラインスナック横丁による遠隔体験と、多様なDXサービスが次々と登場しています。

経営者の高齢化で店舗数が半減する中、若い世代の事業承継やテクノロジーの活用が、スナック文化を新しい形で継承する道を開いています。デジタルの力で「入口」を広げながら、アナログの温かさを守る。令和のスナックは、古くて新しい大人の社交場として進化を続けています。

参考資料:

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