2026年春闘、賃上げ要求5.94%の高水準が続く背景
はじめに
連合(日本労働組合総連合会)が2026年3月5日に発表した春季労使交渉(春闘)の賃上げ要求は、加重平均で5.94%でした。前年同時期の6.09%をわずかに下回ったものの、3年連続で5%を超える高水準を維持しています。
注目すべきは、トランプ関税の影響を大きく受ける自動車業界でさえ、要求通りの満額回答がすでに相次いでいる点です。企業が関税リスクを抱えながらも賃上げに応じる背景には、深刻な人材不足と人材囲い込みへの危機感があります。本記事では、2026年春闘の要求内容と、高い賃上げが続く構造的な要因を解説します。
賃上げ要求の全体像
全体平均5.94%、中小は6.64%
連合が3月2日正午時点で集計した2,508組合の状況によると、賃上げ要求額の平均は1万9,506円(5.94%)でした。前年同期比で262円の増加です。
特に際立つのが中小企業(300人未満)の組合の動きです。中小組合1,525組合の賃上げ要求は6.64%と、前年を上回り、1994年以来の高水準を記録しました。ベースアップ(ベア)分の要求は全体で1万4,438円(4.37%)となっています。
連合の方針
連合は2026年春闘の方針として、定期昇給分を含め全体で5%以上、中小企業では6%以上の賃上げを目標に掲げました。ベースアップを「賃金交渉におけるスタンダード」と位置づけ、毎月の賃金水準そのものの底上げを目指す姿勢を明確にしています。
トランプ関税下でも満額回答が続く理由
人材確保が最優先
トランプ政権による追加関税は、特に自動車産業にとって大きな業績リスクとなっています。しかし、多くの企業が賃上げ要求に対して満額回答を出しています。その最大の理由は、人手不足が経営課題のトップに浮上しているためです。
少子高齢化による労働力人口の減少は加速しており、製造業やサービス業では人材の確保と定着が事業継続の鍵を握っています。関税による短期的な業績悪化よりも、賃上げを抑制して人材が流出するリスクのほうが、中長期的には企業にとってダメージが大きいと判断されています。
企業収益の高水準
人手不足に加えて、企業収益が全体として高水準にあることも賃上げを支えています。円安による輸出企業の利益拡大や、価格転嫁の進展により、多くの企業が賃上げ原資を確保できている状況です。
上場企業の2025年度の決算は過去最高益を更新する見通しの企業も多く、利益を従業員に還元する余力がある企業が増えています。
中小企業の賃上げと課題
過去最高水準の要求
中小企業の賃上げ要求が6.64%と過去30年で最高水準に達した背景には、大企業との賃金格差への危機感があります。中小企業は大企業と比べて賃金水準が低いため、従業員が大企業に転職するリスクが常に存在します。
人材を引き留めるには、大企業並みかそれ以上の賃上げ率が必要だという認識が広がっています。特に若手人材の獲得競争は激化しており、初任給の引き上げに踏み切る中小企業も増えています。
賃上げ原資の確保が壁
一方で、中小企業には賃上げの原資を確保するための課題があります。大企業と異なり、価格転嫁が十分にできていない企業も多く、利益率の低い中で賃上げを実施することは経営を圧迫しかねません。
政府は中小企業の賃上げを支援するため、価格転嫁の促進や助成金制度の拡充を進めています。しかし、サプライチェーンの中で弱い立場にある下請け企業ほど、コスト上昇分を取引価格に反映することが難しいのが実情です。
実質賃金の改善は進むか
物価上昇との攻防
賃上げの最終的な成果は、名目賃金の上昇率が物価上昇率を上回り、実質賃金がプラスに転じるかどうかで測られます。2025年は一部の月で実質賃金のプラス転換が見られたものの、安定的なプラス化の定着には至っていません。
2026年の春闘で5%台の賃上げが実現すれば、消費者物価指数(CPI)の上昇率を上回る可能性が高まります。第一生命経済研究所の予測では、2026年春闘の賃上げ率は厚労省ベースで5.45%、連合集計ベースで5.20%になると見通しています。
賃上げの持続性がカギ
重要なのは、高い賃上げが一過性のもので終わらず、持続的なものになるかどうかです。物価と賃金の好循環が定着するためには、企業の生産性向上と価格転嫁の仕組みが不可欠です。単なるコスト増としての賃上げではなく、人的資本への投資としての賃上げが求められています。
注意点・展望
集中回答日は3月18日
2026年春闘の集中回答日は3月18日に設定されています。大手企業の回答が出そろった後、3月23日に連合から第1回回答集計結果が公表されます。自動車や電機、鉄鋼など主要産業の回答が、今年の春闘全体の方向性を決定づけます。
今後の注目点
集中回答日以降は、中小企業の回答状況と、非正規雇用者の処遇改善がどこまで進むかが焦点となります。連合は正規・非正規間の格差是正も重点項目に掲げており、パート・アルバイトの時給引き上げにも注目が集まります。
まとめ
2026年春闘の賃上げ要求は、全体で5.94%、中小企業で6.64%と高水準を維持しています。トランプ関税による業績リスクがあっても、人材確保を優先して満額回答に踏み切る企業が相次いでいます。
3月18日の集中回答日を経て、賃上げの実態が明らかになります。実質賃金のプラス定着と、中小企業を含めた幅広い賃上げの実現が、日本経済の好循環にとって不可欠です。
参考資料:
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