高市株高が足踏み、PER過熱感と一段高の条件
はじめに
日経平均株価が最高値圏で足踏みしています。2月16日の日経平均は前週末比135円安の5万6,806円で取引を終えました。高市政権の政策期待を背景にした「高市ラリー」で株価は大きく上昇しましたが、ここにきてPER(株価収益率)の過熱感が意識され始めています。
PERはアベノミクス相場のピークを超え、小泉相場の上限として意識された20倍に近づいています。この「壁」を突破して一段高を実現するには、円高環境下でも投資マネーを呼び込むだけの企業変革が必要です。
本記事では、高市相場の現状と過熱感の実態、そして今後の株価上昇の条件を解説します。
高市相場の現状と過去の大相場との比較
高市ラリーの軌跡
高市早苗首相の経済政策「サナエノミクス」への期待を背景に、日本株は2025年秋以降、力強い上昇を続けてきました。2026年1月には日経平均株価が史上最高値を更新し、5万4,000円台を突破しました。
野村證券は2026年末の日経平均予想を5万6,000円に引き上げており、企業業績の2桁増益、成長戦略、脱デフレの定着が追い風になるとの見方を示しています。
小泉相場・アベノミクスとの比較
過去の大型相場と比較すると、海外投資家の動向に差が見られます。小泉相場では2005年8月の郵政解散から2007年夏までの2年間で海外投資家が19兆円を買い越しました。アベノミクス相場では2012年11月から2015年のピークまでに累計21兆円近い買い越しとなりました。
一方、高市政権下では2025年10月初旬から2026年1月末までの累計買越額は5兆円にとどまっています。政策期待は高いものの、海外マネーの流入ペースは過去の大相場に比べてまだ控えめです。
PERに見る過熱感の実態
アベノミクスを超えた評価水準
PER(株価収益率)は、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを示す指標です。数値が高いほど市場の成長期待が大きいことを意味しますが、同時に割高感も示します。
現在の日経平均PERはアベノミクス相場のピーク時を超えており、小泉相場で上限として意識された20倍に近づいています。2026年度の予想PERは、アナリスト予想で16.3倍、トップダウン予想では16倍程度です。
200日移動平均線からの乖離率も約26%に達しており、一般的に「買われすぎ」の目安とされる20%を大きく超えています。短期的な調整リスクが高まっている状態です。
PER20倍の壁を超えられるか
2026年3月期の日経平均の1株利益は2,690円前後と見積もられています。仮にPER20倍まで評価されれば、日経平均は6万円に乗せる計算です。しかし、この水準は過去の相場でも長く維持されたことがなく、実現には相応の理由が必要です。
PER20倍超えが正当化されるには、企業の利益成長率が加速するか、あるいはデフレ脱却の確信が深まり投資家が高い評価倍率を許容するかのどちらかが求められます。
一段高に必要な条件
企業の収益力向上が最大のカギ
期待先行の株高から実体の伴う上昇へ転換するには、企業の収益力強化が不可欠です。2026年度は多くの企業で2桁の増益が予想されていますが、課題も残っています。
特に注目されるのは、円高環境下での収益確保です。為替が円高方向に振れる中、輸出企業を中心に業績の下振れリスクが意識されています。コスト削減だけでなく、付加価値の高い製品・サービスへのシフトや、価格転嫁力の強化が求められます。
資本効率の改善と株主還元
東京証券取引所が推進するPBR1倍割れ是正の取り組みも引き続き注目されています。企業が自社株買いや増配などの株主還元策を強化し、資本効率を高めることで、PERの高い水準が正当化される可能性があります。
ROE(自己資本利益率)の継続的な改善や、事業ポートフォリオの見直しによる収益性向上を示すことが、海外投資家の本格的な資金流入につながります。
政策の実行力
高市政権の経済政策への期待は株価に織り込まれつつありますが、政策の実行段階に入ると「期待と現実のギャップ」が生まれる可能性があります。食品消費税率の引き下げ観測や成長戦略の具体化が、投資家心理を左右する要因です。
注意点・展望
外部リスクへの警戒
米国の関税政策や地政学リスクなど、外部要因による急落リスクには引き続き注意が必要です。PERが高い水準にあるときは、ネガティブなニュースに対する市場の反応が大きくなる傾向があります。
また、日銀の追加利上げの可能性も市場の不確実性を高めています。金利上昇は企業の資金調達コストを押し上げ、PERの低下要因となり得ます。
中長期的な見方
証券各社の2026年末の日経平均予想は5万3,000円から6万1,000円と幅がありますが、大きな方向性としては上昇基調が継続するとの見方が主流です。ただし、そのペースは2025年後半ほど急激ではなく、企業業績の裏付けを伴った緩やかな上昇が想定されています。
まとめ
日経平均株価は高市ラリーにより最高値圏に達しましたが、PERの過熱感から足踏みしています。PERが小泉相場の20倍という「壁」に近づく中、海外投資家の買越額は過去の大相場に比べてまだ控えめです。
一段高を実現するには、円高環境下での企業の収益力向上、資本効率の改善、政策の着実な実行が条件となります。短期的には調整局面も想定されますが、企業変革が進めば6万円到達の可能性も見えてきます。投資家は過熱感と成長期待のバランスを冷静に見極めることが重要です。
参考資料:
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