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by nicoxz

東京センチュリー傘下ACG、ボーイング737MAXを50機発注

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はじめに

東京センチュリーは2026年1月13日、米国の完全子会社アビエーションキャピタルグループ(ACG)がボーイングの新型機「737MAX」シリーズを50機発注したと発表しました。購入額はカタログ価格で約1兆2,700億円に上り、2026年ボーイングにとって最初の民間航空機受注となりました。

世界の航空機リース市場は拡大を続けており、運航される航空機の約半数がリース機材とされています。東京センチュリーは需要の高い次世代航空機への入れ替えを進めることで、グローバル市場での競争力強化を図ります。

発注の詳細と戦略的意義

50機の大型発注内容

今回発注された50機の内訳は、737-8型が25機、737-10型が25機です。納入は2032年から2033年にかけて行われる予定で、長期的な機材計画に基づいた発注となっています。

これにより、ACGが保有する737MAX全体の発注数は121機に達しました。特に737-10型については、リース会社として世界最大の発注数となり、同機種における市場での存在感を一層高めることになります。

737MAXの特徴と優位性

737MAXシリーズは、ボーイングの主力ナローボディ機の最新世代です。前世代の機体と比較して、燃料消費量とCO2排出量を約2割削減し、運航時の騒音も5割抑制できます。

環境規制が強化される中、航空会社にとって燃費性能の高い機材への更新は経営上の優先課題となっています。ACGが次世代機のポートフォリオを拡充することで、顧客航空会社のニーズに応える体制を整えます。

ACGの事業基盤と成長戦略

世界トップクラスのリース会社

ACGは1989年に創業した米国の航空機リース会社で、カリフォルニア州に本社を置いています。世界約45カ国・約95社の航空会社に向けて、ナローボディ機を中心としたリースサービスを提供しています。

2025年9月末時点で、メーカーへの発注済み分を含めて470機を保有・管理しており、その数は世界のリース会社の中でトップ10に入ります。高度なノウハウと競争力を強みに、リースからアセットマネジメントまで幅広い航空機関連サービスを展開しています。

東京センチュリーの完全子会社化

東京センチュリーは2019年にACGを完全子会社化しました。航空機リース事業を「今後も持続的な成長が見込まれる注力分野」と位置づけ、特に低燃費次世代航空機の機体数拡大を通じて競争優位性の確保を図っています。

ACGの経営には東京センチュリーの取締役専務執行役員がExecutive Chairとして就任し、駐在員4名を派遣しています。日々の経営は業界経験豊富な9名のマネジメントチームが担当し、資金調達、マーケティング、技術対応、OEM交渉などを行っています。

航空機リース市場の展望

拡大を続けるグローバル市場

世界の航空機リース市場は2023年に約1,728億ドルと評価され、2032年には4,016億ドル規模に成長すると予測されています。年平均成長率は約11%と高い伸びが見込まれています。

現在、世界で運航される航空機の約50%がリース機材であり、この割合は今後さらに増加する見通しです。航空会社にとって、巨額の初期投資を抑えながら機材を更新できるリースは、経営戦略上ますます重要な選択肢となっています。

日本の航空会社も737MAX導入

国内では、日本航空(JAL)が737-8型を計38機導入する計画を進めています。国内線で運航中の737-800の更新機材として、2026年度以降に順次導入予定です。

スカイマークも737MAXシリーズの導入準備を進めており、2026年3月に1機を受領後、2027年度末までにリースを含めて12機を導入する計画です。また、ANAホールディングスは737-8型を確定34機、オプション14機発注しています。

注意点と今後の課題

737MAXの品質管理問題

737MAXは過去に墜落事故を起こした経緯があり、品質管理体制への懸念が続いています。2024年1月には737-9型で機体後部のドアプラグが脱落する事故が発生し、米連邦航空局(FAA)はボーイングへの監視を強化しました。

この影響で、737-7型と737-10型の型式証明取得時期が不透明な状況が続いています。ACGの発注には737-10型が含まれており、納入スケジュールに影響が生じる可能性も考慮する必要があります。

競合環境と差別化

航空機リース市場には多くのプレーヤーが存在し、競争は激化しています。ACGは次世代機への投資を加速することで差別化を図っていますが、金利環境の変化や航空需要の動向によっては、収益性への影響も想定されます。

東京センチュリーは航空機地上支援機材のリースや整備事業にも進出しており、航空機のライフサイクル全体をカバーするソリューション提供で付加価値を高める戦略を進めています。

まとめ

東京センチュリー傘下のACGによる737MAX50機発注は、拡大する航空機リース市場での競争力強化を目指す戦略的な投資です。約1.2兆円という大型案件は、同社が航空機リース事業を成長の柱として位置づけていることを明確に示しています。

世界の航空需要回復と環境規制強化を背景に、燃費性能に優れた次世代機へのニーズは高まり続けています。2032年から2033年にかけての納入を見据え、ACGはグローバル市場での存在感をさらに高めていく見通しです。

参考資料:

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