ボーイングが7年ぶり黒字転換、事業売却で財務改善
はじめに
米航空機大手ボーイングが2026年1月27日に発表した2025年12月期決算は、最終損益が22億3800万ドル(約3400億円)の黒字となりました。最終黒字は2018年以来7年ぶりのことです。
この黒字転換は、航空会社向けソフトウェア事業の売却益を一時的に計上したことが主因です。一方で、主力の民間機部門と防衛部門は依然として赤字が続いており、本業の回復にはまだ道半ばの状態です。
本記事では、ボーイングの決算内容を詳しく分析し、事業売却の背景、各部門の現状、そして今後の見通しについて解説します。
2025年通期決算の概要
売上高と最終損益
ボーイングの2025年12月期の売上高は894億6300万ドルで、前年比34%増となりました。これは2018年以来最高の年間売上高です。最終損益は22億3800万ドルの黒字で、前年の118億2900万ドルの赤字から大幅に改善しました。
この黒字転換を可能にしたのは、2025年4月に発表されたデジタル航空ソリューション事業の売却です。米投資ファンドのトーマ・ブラボーに対し、「ジェプセン」や「フォアフライト」などの航空ナビゲーションソフト事業を105億5千万ドル(約1兆4800億円)で売却し、巨額の売却益を計上しました。
第4四半期の業績
2025年第4四半期の売上高は239億ドルで、前年同期比57%増と大幅に回復しました。1株当たり利益は10.23ドルとなり、アナリスト予想を上回りました。第4四半期だけで160機の民間機を納入し、四半期としては近年で最高の納入数を記録しました。
CEOのコメント
ケリー・オルトバーグCEOは「2025年は復活の年だ」と述べ、「安全性と品質への継続的な注力により、事業全体で業務実績の改善が見られ始めている」とコメントしました。
民間機部門の現状
納入機数は回復基調
民間機部門の2025年通期の納入機数は600機となり、2024年の348機から大幅に増加しました。これは7年ぶりの高水準です。受注も好調で、年間で1,173機の純受注を獲得し、受注残高は6,100機超、金額にして5,670億ドルと過去最高を更新しました。
依然として営業赤字
一方で、民間機部門の2025年通期の営業損失は71億ドルとなり、依然として赤字が続いています。第4四半期の民間機部門の売上高は114億ドルで、前年同期比約140%増となりましたが、営業利益率はマイナス5.6%でした。
納入増加にもかかわらず赤字が続く背景には、品質管理強化のためのコスト増加、サプライチェーンの混乱、そして過去の問題に対する是正措置費用があります。
737MAXの生産状況
737MAXプログラムは月産42機まで生産レートを引き上げ、連邦航空局(FAA)から737-10型の最終認証飛行試験開始の承認を受けました。2024年1月のドアプラグ脱落事故以来、生産制限が課されていましたが、品質改善の取り組みが認められ、徐々に制限が緩和されています。
787プログラムも月産8機への移行を開始し、777X-9型は2027年の初号機納入を目指して認証飛行試験を進めています。
防衛部門の課題
固定価格契約の損失
防衛・宇宙・セキュリティ部門も依然として赤字が続いています。2025年第4四半期には、KC-46空中給油機で5億6500万ドル、T-7Aレッドホーク練習機、VC-25B大統領専用機、MQ-25スティングレイ無人機など複数のプログラムで合計17億ドルの損失を計上しました。
特にKC-46プログラムは過去10年間で80億ドル以上の累積損失を出しており、オルトバーグCEOは「これは過去10年間で悪い契約だった。新たな契約更改の機会に、公正な契約でしっかり利益を出せるようにしたい」と述べました。
スターライナー宇宙船
有人宇宙船「スターライナー」も累計20億ドル以上のコスト超過を記録しています。NASAは2024年11月、ボーイングとの契約を修正し、認証後のミッション数を当初の6回から4回に削減しました。残り2回は国際宇宙ステーション(ISS)退役(2030年頃)前の運用状況に応じたオプション扱いとなりました。
ソフト事業売却の戦略的意義
非中核事業からの撤退
ボーイングがジェプセンなどのソフト事業を売却した背景には、財務体質の改善と中核事業への集中があります。ジェプセンは2000年に15億ドルで買収したサービス事業拡大の象徴でしたが、航空機製造という本業に経営資源を集中させる判断をしました。
オルトバーグCEOは「バランスシートを補完し、投資適格の信用格付けを優先させる戦略の重要な要素だ」とコメントしています。
財務健全性の回復
相次ぐ品質問題、大型ストライキ、そして受注・納入の遅延により、ボーイングの財務状況は深刻な状態にありました。今回の事業売却による一時益は、債務削減と信用格付け維持に充てられる見込みです。
今後の見通し
エアバスとの競争
2025年の納入機数ではエアバスの793機に対しボーイングは600機と、依然として差をつけられています。しかし純受注ではボーイングが1,173機、エアバスが889機と逆転しており、受注競争では盛り返しを見せています。
課題と展望
ボーイングの本格的な復活には、以下の課題を克服する必要があります。
- 民間機部門の営業黒字化
- 防衛部門の固定価格契約問題の解決
- 737MAX、787、777Xの生産安定化
- 品質管理体制の継続的な強化
オルトバーグCEOの「基本に立ち返る」戦略が功を奏し始めている兆候はありますが、持続的な収益改善にはさらなる時間が必要です。
まとめ
ボーイングの7年ぶりの黒字転換は、事業売却という一時要因によるものであり、本業の収益力は依然として課題を抱えています。しかし、納入機数の回復、受注残高の拡大、そして経営陣による「基本に立ち返る」戦略は、長期的な復活への布石となっています。
投資家や業界関係者にとっては、今後の民間機部門の営業黒字化時期、防衛部門の契約問題の解決、そして品質管理体制の継続的な改善状況が注目ポイントとなります。
参考資料:
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