トランプ氏のイラン圧力外交とデモ参加者処刑問題の行方
はじめに
2025年12月末から始まったイランの反政府デモは、2026年1月中旬までに死者2500人以上を出す深刻な事態に発展しています。この危機に対し、トランプ米大統領は強硬な姿勢でイラン政府に圧力をかけ、デモ参加者の処刑を阻止しようとする異例の外交を展開しています。
本記事では、イランの反政府デモの背景から、トランプ政権の対イラン政策、そして処刑問題をめぐる米イラン間の駆け引きについて詳しく解説します。
イラン反政府デモの発端と拡大
経済危機が引き金に
2025年12月28日、イランの首都テヘランで電子機器店や携帯電話販売店が一斉にシャッターを下ろしました。きっかけは、イラン通貨リアルの急激な下落です。2025年1月には1ドル約70万リアルだった為替レートが、同年末には140万リアル以上まで暴落しました。
インフレ率は2025年12月時点で42.2%に達し、食品価格は前年比72%上昇しています。国民生活を直撃するこの経済危機が、大規模な抗議活動の引き金となりました。
全国31州に拡大
当初は経済問題への抗議として始まったデモは、急速に反政府運動へと発展しました。12月31日には政府が「休日」を宣言して学校や官公庁を閉鎖したにもかかわらず、デモは17州に拡大しました。石油産業の労働者やトラック運転手組合もストライキに参加し、イラン全31州でデモが行われる事態となっています。
活動家団体によると、この抗議活動は1979年のイスラム革命以来最大規模の蜂起とされています。
治安部隊による弾圧と死者数
イラン政府は抗議活動に対し、最高指導者ハメネイ師の直接命令のもとで実弾による弾圧を実施しました。死者数については情報源により大きな開きがありますが、米国を拠点とする人権活動家通信社は1月初旬時点で36人の死者を報告しています。一方、活動家団体の中には1万2000人から2万人という推計を出しているところもあります。
NBCニュースによると、1月14日時点で2500人以上の死者が出ていると報じられています。
トランプ政権の対イラン圧力
処刑への強い警告
トランプ大統領は1月14日、CBSニュースのインタビューで、イランがデモ参加者を処刑した場合「非常に強力な行動を取る」と警告しました。特に注目を集めたのは、26歳の商店主エルファン・ソルタニ氏の処刑予定です。
米国務省は、イラン当局がソルタニ氏を1月14日に処刑する予定だと発表し、「1万600人以上のイラン人が基本的権利を求めただけで逮捕された」と非難しました。
イラン側の反応
この圧力に対し、イランのアラグチ外相はFoxニュースのインタビューで「処刑の計画は全くない」と否定しました。また、イラン当局はソルタニ氏について、処刑の対象ではなく有罪判決が出ても禁固刑にとどまると説明しています。
トランプ大統領は1月14日、ホワイトハウスで記者団に「非常に重要な情報源から報告を受けた。イランでの殺害は止まりつつあり、処刑の計画はないと聞いた」と述べました。翌日にはNBCニュースに対し「昨日、私たちは多くの命を救った」と語っています。
米国が検討する軍事オプション
国家安全保障会議での協議
トランプ政権は、イランへの対応として複数の軍事オプションを検討しています。1月13日には、ルビオ国務長官、ヘグセス国防長官、ラトクリフCIA長官らが参加する閣僚級会議が開催されました。
検討されている選択肢には以下のものが含まれます。
- イラン治安機関の関連施設への限定的攻撃
- イラン軍や政権を標的としたサイバー作戦
- 特定の指導者や警察インフラへの標的攻撃
米政府関係者は、地上部隊の派遣は選択肢に含まれず、長期的な軍事関与は望まないと強調しています。
制裁と関税措置
軍事行動に加え、トランプ政権は経済的圧力も強化しています。イランの制裁逃れに関与した18の個人・団体に新たな制裁を科し、国家安全保障責任者のアリ・ラリジャニ氏も制裁対象となりました。
さらにトランプ大統領は、イランと取引のある国々に対して25%の関税を課すと発表しています。対象には中国、アラブ首長国連邦、トルコ、ブラジル、ロシアなどが含まれます。
米軍の予防的退避
ワシントン・ポスト紙によると、米政府はカタールにあるアルウデイド空軍基地から一部要員の退避を開始しました。同基地には1万人以上の兵士が駐留しており、イランが報復攻撃を行った場合に備えた「予防措置」と説明されています。
周辺国の仲介努力
アラブ諸国の外交介入
カタール、オマーン、サウジアラビア、エジプトの4カ国は、過去72時間にわたる集中的な外交努力により、米イラン間の緊張緩和に取り組んでいます。これらの国々は米国に対し、イランへの攻撃を避けるよう求め、安全保障上および経済上のリスクを警告しています。
イランの軍事的準備
一方、米国の情報機関の報告によると、イランはトランプ大統領が軍事攻撃を実施した場合に備え、イラクやシリアにある米軍基地を標的とする選択肢を準備しているとされています。アラグチ外相は、イランは米国との戦争に「準備ができている」が、外交交渉にも応じる用意があると述べています。
今後の展望と注意点
不確実な情勢
現時点では、トランプ政権が軍事行動に踏み切るかどうかは不透明です。処刑問題については一定の進展が見られるものの、イラン国内でのデモ弾圧は続いており、死者数は増加を続けています。
経済制裁の効果が現れるまでには時間がかかる可能性があり、その間にも人道的状況は悪化する恐れがあります。
注目すべきポイント
今後の展開を見る上で重要なのは以下の点です。
- イラン政府が実際に処刑を停止するかどうか
- 米国の軍事行動の有無とその規模
- アラブ諸国の仲介外交の成否
- イラン国内のデモの推移と政権の安定性
まとめ
イランの反政府デモをめぐる米イラン間の緊張は、中東地域の安定に大きな影響を与えています。トランプ大統領の強硬な圧力外交により、デモ参加者の処刑が一時的に回避される動きが見られますが、根本的な解決には至っていません。
今後の米イラン関係の行方は、軍事行動の有無だけでなく、経済制裁の効果やアラブ諸国の仲介努力など、複合的な要因によって決まることになります。引き続き注視が必要な国際情勢です。
参考資料:
- Trump warns Iran against protest executions as death toll jumps past 2,500 - NBC News
- Trump says ‘we saved a lot of lives’ as Iran signals it won’t execute protesters - NBC News
- Iran’s FM says no executions of protesters, as Trump lowers rhetoric - Al Jazeera
- What we know about the protests sweeping Iran - Al Jazeera
- What are Trump’s military options for an attack on Iran? - Al Jazeera
- Trump hints at Iran decision as advisers meet to prepare strike options - Washington Post
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